脂肪注入は、医師の技量によって、しこりの発生率が大きく違う

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脂肪注入は、医師の技量によって、しこりの発生率が大きく違う

お腹や太ももなど、不要な脂肪を取って、胸に入れるというのが、脂肪注入による豊胸術です。
これは、1970年代に脂肪吸引が始まって、ほぼそれと同時期に始まったと言っても過言ではありません。確かに、異物を使用せずに可能な豊胸術は、医師にとっても、患者さんにとっても、非常に魅力的な響きを以って受け入れられました。しかし、初期のバストへの脂肪注入は、注入した脂肪のほとんどが吸収されてしまい、ほとんど豊胸効果が望めませんでした。
 
ほとんど豊胸効果が望めなかった初期の脂肪注入に対して、その対策として用いられたのは、大量注入でした。
初期の脂肪注入が、ほとんど豊胸効果が望めなかったと言っても、中には少しだけバストが大きくなった患者さんも居ました。そのような患者さんを見て、多くの美容外科医が考えたことは、「大部分が吸収されるなら、少しは残るということ。だから、大量に注入すれば、その分、吸収されずに残る量も増えるだろう。」ということでした。しかし、実は、この理論は大間違いで、少しだけ豊胸効果を獲得できたのは、脂肪を細かくバラバラに広い範囲で注入できた症例だったのです。ところが、当時の主流は、大量注入。患者さんも、単純に、たくさん注入すれば、その分、たくさんの脂肪がバストに残ると思っていましたので、医師が大量注入するのを歓迎していました。そしてしばらくの間、この大量注入が世界中で行われていきました。特に、1990年代初頭に、豊胸人口世界一にもかかわらず、シリコンバッグの豊胸手術に対する使用をFDAによって禁止されていたアメリカでは、生理食塩水バッグを使用するか、この脂肪注入をするしかない状況でしたので、比較的多くの患者さんが、この脂肪注入による豊胸術を受けました。そしてそうしているうちに、アメリカで大変な事件が発生しました。
 
アメリカで発生した、脂肪注入による豊胸術の事件とは、注入した脂肪によって発生した「しこり」が、事の発端でした。バストに大量注入された脂肪は、バストの中で大きな塊を形成していると、豊胸用のシリコンバッグのように、周囲にカプセルと言う膜ができることがあります。異物でもないのになぜ、カプセルが形成されるのかと言うと、そこで注入された脂肪組織が壊死に陥るからです。壊死に陥った脂肪組織は、既に元の脂肪組織とは違ったものに変質しているため、人体はこれを異物と認識するのです。そしてさらに悪いことに、シリコンバッグのような固形の物体ではない為、壊死に陥って異物化した脂肪組織は、周辺の乳房の皮下脂肪組織などに、外側の一部が浸潤(潜り込んでいくこと)し、そこで慢性的な炎症を起こします。このカプセルの形成と、慢性的な、注入された脂肪の周辺での炎症は、やがて「しこり」として自覚されるようになってきます。ちなみに、このような現象は、注入された脂肪が大きな塊を形成している場合に発生するのであって、手術時に細かく広い範囲で注入された場合には発生しません。
 
人体の皮下脂肪層で慢性炎症が続いた後は、そこには石灰化と言う現象が発生します。この石灰化が、大きな問題になりました。マンモグラフィーで、しっかりと映るのです。
アメリカでは日本よりも早くから、マンモグラフィーでの乳がん検診が普及していました。乳がんの罹患率も高く、また、公的健康保険のなかったアメリカでは、民間保険会社が、支払いを少なくするために、加入者に対し、乳がんの検診としてマンモグラフィーの撮影を義務付けていたことも、マンモグラフィーがアメリカで普及していた理由の一つです。そして、バストの中での「しこり+石灰化」というのは、マンモグラフィーの所見上、乳がんを強く疑わせる所見です。そういった状況で、脂肪注入で豊胸術を受けたある女性が、1990年前後に、乳がん検診を受けました。
 
その女性のバストには、内部にしこりがあり、マンモグラフィーの撮影が必要とされました。その結果、マンモグラフィーの画像所見上、石灰化を伴うmassが発見されました。そして、彼女は乳がんと診断され、乳房を手術で切除されてしまったのです。そしてそのことは、医療過誤事件へと発展し、脂肪注入を行った医師や、乳房切除を行った医師、しこりを乳がんと診断した医師は、皆、多額の賠償金を支払う羽目になりました。
当時、脂肪注入後のしこりの発生からその石灰化と言う現象は、ある程度は知られてきてはいたものの、美容外科医たちの間でも、普及していた知見とは言えませんでした。その原因に至っては、手技上の問題にあるのですが、それも無視されていた状況です。しかし、医療過誤裁判において、有責とされたことは、その後、脂肪注入による豊胸術が、しばらく日の目を見なくなってしまった大きな原因となりました。
 
なぜ、脂肪注入による豊胸術だけが、こんなにクローズアップされてしまったのかと言うことです。アメリカで大きな問題を引き起こしてしまった脂肪注入による豊胸術ですが、その他の美容整形技術でも、トラブルがないということはないのにも拘らず脂肪注入による豊胸術だけが、業界内でも大きくクローズアップされました。それは、対象臓器が女性のバストと言う、セックスシンボルだったことで、裁判所の陪審員が医師に高度の責任を認め、賠償金額が高額になったためです。それによって、医賠責保険(医療事故に対する医師側が支払う賠償金をカバーする保険)を管理する側の保険会社が、脂肪注入による豊胸術を行う医師の保険料を、大幅に増額しました。訴訟社会であるアメリカにおいては、どんな名医であっても、医賠責保険のカバーなしでは、診療を続けるのはリスクが高すぎます。そこで、アメリカにおいて、脂肪注入による豊胸術を行う医師は、絶滅危惧種となったのです。
 
マンモグラフィーの、検診項目への導入と、その普及が遅かった日本では、海外の情報に疎い美容外科医たちが、つい最近まで、大量注入に邁進していました。
現在でも、片胸につき300㏄を超える大量の脂肪を注入し、術後1か月と言う、未だ不安定な状態での写真を、自分のブログなどに自慢げに掲出している美容外科医がたくさんいます。そして、未だ、大きなしこりを残し、それがバストの変形へと繋がっている、悲惨な症例を目にすることもあります。たしかに、大きなしこりを残すということは、そのしこりの分の体積だけ豊胸効果が得られるということですが、それによってバストに石灰化を作り、変形まで残すようでは、豊胸効果以前の問題です。ちなみに、大量脂肪注入によるバストの石灰化は、マンモグラフィーでなくても、健康診断で用いられる、一般の胸部レントゲン撮影にて、肺がんの影のように映りこんでしまいます。
ただし、一般的に、大量注入に邁進せず、きちんとした手技とコンセプトのもとで行われた脂肪注入による豊胸術の場合には、しこりの発生は非常に少なく、石灰化の発生は非常に稀です。最近は、幹細胞脂肪注入やコンデンスリッチなどという、新しい方法も出てきて、それらについては注入した脂肪の生着率も向上しています。しかし、まだまだ大量注入に邁進する美容外科医も多く、石灰化やしこりの被害も、あとを絶たないのが現状です。これは、いかに幹細胞やコンデンスリッチを使用したとしても、ほんとうにペッタンコのバストを巨乳に変えようとして大量注入すれば、しこりや石灰化が発生するためです。
 
脂肪注入による豊胸術は、きちんとした技術の下で行えば、問題の多い手術法とは思えませんが、実際には、そのようなきちんとした技術でなされている脂肪注入豊胸術が少ないのも現実です。
きちんとした技術とは、幹細胞やコンデンスリッチなど、注入する脂肪の質の事ではなく、手術手技そのものの問題です。幹細胞やコンデンスリッチなどを使用しても、シコリやその石灰化などの問題は発生し続けています。それはやはり、手術手技に根本的な問題があるからです。
そもそも、脂肪注入と言う手術は、組織を移植する手術です。しかし通常の臓器移植とは異なり、臓器に出入りする血管を繋げるということがありません。移植を受ける組織に、脂肪組織を浮かべておくだけのものです。したがって、注入された脂肪組織に酸素や栄養を運ぶのは、繋がれた血管ではなく、周辺の組織です。周辺の組織から滲み出した栄養や酸素が、注入された脂肪組織を養うのです。しかしこの方式の場合、周辺の組織がそれらを細胞に運ぶのは、血液を介さない為、効率が非常に悪く、大きな組織を養うことができません。簡単に言うと、田んぼが川から灌漑されるのではなく、地中や空中の湿気から水を供給されている状況のようなものです。
このような状況におかれた脂肪組織は、その体積が、栄養と酸素の供給能力を上回ることになれば、壊死に陥ります。これがシコリとその石灰化の原因です。栄養と酸素が供給されないのは、注入された脂肪組織の内部です。まず、その部分が壊死に陥ります。そして周辺部の脂肪組織は壊死を免れます。壊死に陥った脂肪組織は、人体にとって異物になります。異物の中でも、シリコンなどは周辺の炎症反応が少ない物質として長年にわたって使用されていたのもですが、壊死に陥った脂肪組織は、周辺組織に比較的強い炎症反応を、長期に亘って惹起します。長期の慢性的な炎症は、注入された脂肪の周囲に高度の繊維化を発生させ、その後、石灰化を発生させます。これが、脂肪注入豊胸術による石灰化を伴ったシコリの原因です。
 
脂肪注入豊胸術での最も大きな問題点である、石灰化を伴ったシコリについては、その発生を防止する方法は、注入する脂肪の一塊をできるだけ小さくすることです。
つまり、酸素や栄養の供給が、注入した脂肪の塊の中心部まで行き渡るように、塊を小さくすることが大切であるということです。そのためには、注入に際して、慎重に乳腺の周囲の脂肪組織に万遍なく、そして細かく注入手技を行うことです。そして、バストに対して過度の緊張を与えるような、大量注入を行わないことです。バストに対して過度の緊張を与えることは、バストの内圧の上昇が、血管を潰してしまい、血行が悪くなる原因になるからです。また、大量注入は、その注入手技が、いかに細かい粒として脂肪隗を移植していたとしても、脂肪隗どうしが、バストの内部でお互いに接触し、再び大きな塊に変化します。
つまり、石灰化を伴ったシコリの発生を防止するには、コンデンスリッチであろうと、幹細胞併用であろうと、大量注入を行わず、細かい脂肪隗を万遍なく脂肪層に注入することに尽きます。これは、手術の技量に属するものであり、実際に手術を行う美容外科医の技量と情熱に懸かっているということができます。技量に劣る医師から手術を受けると、毎回、マンモグラフィーでの再検査や精密検査判定を出される結果となります。


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