バッグで豊胸済みの人に、高生着率脂肪注入

約7年前にシリコンバッグにて豊胸術を受け、今回、更なるボリュームアップを希望して、当院の高生着率脂肪注入術を受けたモニターさんです。

女性の体形は、年齢に応じて変化してきます。一般論としては、上半身は皮下脂肪の量が少なくなり、下半身には増加します。つまり、バストは小さくなり、ヒップや太もも・下腹部は大きくなるということです。実際、当院での高生着率脂肪注入で豊胸術を受ける患者さんは、年齢層が高くなるほど、腹部や上腕などよりも、太ももやヒップからの脂肪吸引を希望される方が増加します。つまり、年齢とともに全身に沿って下がってしまった脂肪を、上の方に戻してやると言うコンセプトでもあります。特に産後のしぼんでしまったバストが気になる方の場合、出産と言う大事業のために、太ももや腰回りの皮下脂肪が増加していますので、このコンセプトに共感を覚える方が多いように感じます。

こちらのモニターさんは、やはり上半身が痩せてきて、下半身に脂肪が増加したことを自覚していらっしゃいました。

上半身の脂肪がなくなってくるとともに、シリコンバッグの縁が外から触れるようになってきて、それがどうしても気になって、相談に訪れました。そこで、2つのオプションを提示しました。一つは、バッグを抜いて、高生着率脂肪注入を行うと言うものです。しかしその場合、既に入っているバッグの大きさが170㏄あり、高生着率脂肪注入で片方に付き200㏄の脂肪を注入したとすると、平均して90%の脂肪が残るということですから、約180㏄の脂肪がバストに残ります。すると、バストの大きさは、術前とほぼ同じになります。

しかしながら、こちらのモニターさんは、「どうせ手術を受けるなら、バッグによる豊胸術での、現在のバストの大きさよりも大きくしたい。」という希望でした。

そこで2つ目のオプションとして、現在のバッグの入った状態での脂肪注入を提示しました。この場合、片方に注入できる脂肪の量は、約150㏄が限界であると判断しました。それは、皮膚の余裕が、大量の脂肪注入に耐えることができそうになかったからです。また、注入する脂肪の量が少ないということは、脂肪吸引によって採取する脂肪の量も少なくて済み、その分、術後の生活が楽であるということもできます。当然、手術費用も節約できます。バッグによる豊胸術の術後において、拘縮などの症状がない場合には、このようにバッグを挿入したまま、高生着率脂肪注入を施行することも、一つの方法であるということができます。

このモニターさんの場合には、バッグの上からさらに、片方につき120㏄、左右合計で240㏄の脂肪を注入しています。

結果としては、120㏄の脂肪の約90%がバストに残り、ブラジャーのカップにして1カップ半ほどのバストアップが実現できました。通常の場合と比較すると、注入脂肪の量は非常に少ないのですが、当院の高生着率脂肪注入の高い生着率がモノを言い、モニター本人さんの希望通り、バッグの縁が表面から触れることもなくなり、さらにバストサイズも大きくなったということです。バッグが入っている状態での脂肪注入は、バッグを破損させないように注意が必要です。バッグがコヒーシブ・シリコンの場合には、破損しても内容が漏れださないため安心なのですが、通常のシリコンバッグや生理食塩水、またはハイドロジェルバッグの場合には、小さな針穴でも、そこから内容物が流出してしまいます。手技的には、決して先のとがった針で脂肪注入をせず、先が丸い、専用のカニューレを使用することが大切です。

拘縮が発生していても、当院の高生着率脂肪注入によって、拘縮の程度が和らぎ、症状が緩和する場合があります。

それの理由は、2つのことが考えられます。一つは、バッグ周囲の脂肪層の厚みが増加するため、バッグ自体とその周辺の拘縮したカプセルの硬さが、表面から分かりにくくなるためです。硬いボールの上に、座布団をかけると、全体として柔らかくなるのと同じことです。

2つ目は、分厚くなって縮んでしまったカプセルの成分であるコラーゲンが、幹細胞の働きで再構築されるということです。それは、幹細胞から出る成長因子がカプセルに作用し、さらに貪食細胞が成長因子の作用でカプセルの周囲に集簇します。そして貪食細胞がカプセルのコラーゲンを貪食し始め、それを無くしてしまいます。しかしながら、挿入されているバッグ自体は異物ですので、人体はカプセルを造ろうとします。そこで、カプセル自体が貪食によって消失しつつも、カプセルが造られることになり、元の拘縮したカプセルが、薄く柔らかいカプセルに入れ替わるわけです。

これらの2つのプロセスによって、バッグを挿入した後、拘縮して硬くなったバストが、高生着率脂肪注入で柔らかくなるということになります。