脂肪注入豊胸術に伴う脂肪吸引について(特に脂肪注入豊胸術に際して)

脂肪注入豊胸術を行うには、バストに注入する脂肪が必要なわけで、そのために脂肪吸引で脂肪を採取する必要があります。したがって、当然、脂肪吸引を行うことになります。

そこで近年、脂肪吸引の方法や使用する機器も、様々なものが開発され、発売されています。しかし、どんな方法でどのような機器を使った脂肪吸引でもいいかというと、そう簡単なものではありません。間違った知識で、間違った方法を使用して脂肪吸引を施行し、そのように採取してきた脂肪を使って豊胸術を行った場合、最悪の場合ほぼ0%か非常に少量の脂肪しかバストに残らず、不満足な結果になってしまいます。

では、間違った脂肪吸引とは、そのような脂肪吸引なのか、代表的な、してはいけない脂肪吸引を列挙します。

1)プラズマリポを使った後の脂肪吸引

プラズマリポは、簡単に言えば、プラズマ光を使って脂肪組織を破壊して溶かします。プラズマリポを脂肪吸引に併用すると、脂肪吸引自体の手術操作が安定的に行え、脂肪吸引後の回復過程が早く、結果の安定性が高いばかりか、内出血や腫れも少ない傾向が見られます。しかし、脂肪注入豊胸術に吸引した脂肪を使用する際には、この、脂肪組織を破壊して溶解してしまう作用が、脂肪細胞の前駆細胞や幹細胞などの、組織の再生にかかわる大切な細胞までも破壊してしまいます。つまり、この脂肪を豊胸術に使用すると、脂肪注入ではなく、脂肪の死骸注入になるわけです。そこで、プラズマリポを脂肪注入豊胸術に使用する際には、まず脂肪吸引にて注入に使用する脂肪組織を確保しておいて、術中のその後にプラズマリポを照射することをスタンダードとしています。つまり、プラズマリポを使用する利点としての、凸凹ができないことや術後の経過が楽になることなどは、脂肪吸引での施術である程度の皮下脂肪の除去が終わり、その上でのプラスアルファの部分として生かすことが、上策であるということです。

2)ベーザー(ヴェーザー・Vaser)

超音波を使って脂肪組織を破壊する代表的な器械が、ベーザー(ヴェーザー・Vaser)です。脂肪を溶かすという作用は、プラズマリポと同様です。したがって、当然、脂肪細胞や幹細胞などの再生細胞までも破壊します。メーカー側の言い分としては、「ベーザーは脂肪のみを破壊し、その他は破壊しないので、採取された脂肪組織は脂肪注入には問題なく使用でき、血液などの混入が少ないから、むしろ脂肪注入豊胸術には適切な脂肪組織が採取できる。」ということです。しかし、超音波をエネルギー源に使用している限り、脂肪組織との接触部においては高熱を発生し、破壊と同時に細胞の死滅は免れません。よって、ベーザーを使用して採取した脂肪組織をバストに注入するというのも、脂肪の死骸注入になってしまいます。当院では、豊胸用以外の、通常の脂肪吸引の際にも、ベーザーは使用していません。ところが、他院の脂肪注入豊胸術の症例で、このベーザーを用いて脂肪吸引した脂肪組織をバストに注入した患者さんをたくさん診ました。全ての患者さんが、ほとんど乳房の大きさに変化がなく、豊胸効果を獲得することができず、豊胸術としては失敗していました。またそのうち1人は、脂肪の死骸が吸収されずにコラーゲンの膜であるカプセルに取り囲まれるときにできた、多数の大きなしこりをバストに残し、乳房が変形していました。

3)ボディージェット

局所麻酔薬を細かい水滴状にしたうえで、高圧で周囲の脂肪組織に噴射する器械。メーカ側の説明としては、「脂肪を柔らかくして、局所麻酔の効果を高め、脂肪吸引の操作性を向上させる(脂肪吸引しやすくする)」ということです。実際のところ、局所麻酔での脂肪吸引には、麻酔薬の均一な拡がりを獲得でき、麻酔の効きがよくなるため、有用な器械と言えます。しかし、麻酔薬の噴射圧力が非常に高く、多くの血管や神経を切断しているようです。実際に、ある論文によると、このボディージェットによる脂肪吸引が、通常の脂肪吸引やベーザーなどの超音波脂肪吸引などと比較しても、最も多くの脂肪組織内繊維を切断していたという結果です。このような繊維を切断するような高い水圧では、やはり脂肪細胞や幹細胞・再生細胞に障害を与えます。しかも、豊胸術に使用するほどの量の脂肪組織を採取するには、局所麻酔のみで脂肪吸引を行うのは、現実的ではなく、もし行うとなると、局所麻酔薬の量が多すぎて、局所麻酔薬中毒になることも考慮しなければならないでしょう。

4)スマートリポ、クールリポなどのレーザー機器

これらは、レーザーで脂肪組織を破壊して溶かす機器です。作用としてはプラズマリポと同様です。したがって、この脂肪を破壊して溶かす作用が、脂肪前駆細胞や幹細胞などの組織の再生に関り、豊胸効果の獲得に対して重要な役割を果たす再生細胞までも破壊します。しかも、プラズマリポとは違って、皮膚の引締め作用や脂肪溶解作用も弱いため、手術には大幅な時間の延長を覚悟しないといけません。

以上から、脂肪注入豊胸術に用いる脂肪組織採取の際に行う脂肪吸引は、従来の、機器を使用しない手作業による脂肪吸引がベストであるということになります。このことは、脂肪組織を、その中の細胞をできるだけ生きたまま、できるだけ新鮮な状態で取り出すべきであるということを忠実に守ることでもあります。そのためには、脂肪吸引に関しては手間を惜しまず、器械に頼るべきではないという結論が導き出せます。