脂肪注入豊胸術に伴う、脂肪吸引の術後を楽に乗り切るために

脂肪注入豊胸術術後の痛みや腫れなどについては、豊胸術そのものは注射であって、その経過は軽度なものです。よって、脂肪吸引の術後の経過によって決まります。そこで、脂肪注入による豊胸術を受ける際には、クリニック選びの段階で、どのような脂肪吸引であれば、術後が比較的楽なのかということを、理解しておく必要があります。
ベーザーやプラズマリポなどを使用すれば、脂肪吸引の術後は比較的楽だということが、よく宣伝されています。確かにプラズマリポは、術後の圧迫固定が一晩だけで、翌日からのシャワー入浴が可能ですから、通常の脂肪吸引と比較すると、その差は大きなものと言えます。しかし、ベーザーやボディージェットの場合には、皮下脂肪層に存在する神経へのダメージが大きいことから、痛みに関しては強く出る傾向があります。またこれらは、注入した脂肪組織の生着率を向上させるために重要な働きをする、脂肪細胞や脂肪の前駆細胞・幹細胞に障害を与えますから、注入用の脂肪を採取する前には、使用してはいけません。そうなると、通常の脂肪吸引の手術で我慢するしかないのかと言うと、そういうわけでもありません。
その一つの解答としては、「丁寧な」脂肪吸引を施行することであると言えます。「丁寧な」脂肪吸引とは、「仕上がりがいい」「たくさん採る」ということではありません。それよりも重要なこととして、脂肪組織の血管や神経にできるだけダメージを加えない方法で脂肪吸引を施行するということです。血管へのダメージが少ない脂肪吸引を施行すれば、術後に現れる内出血が少なくて済みます。また、神経へのダメージが少ないことは、術後の痛みが少ないことに繋がります。そのような、血管や神経に対してダメージが少ない脂肪吸引とは、いくつかのポイントを満たしている必要があります。

術後の痛みが少なく、楽な脂肪吸引を行うためのポイントは、以下のようになります。
1)できるだけ細いカニューレを使用する。
2)手術中に、カニューレを激しく前後運動させない。
3)脂肪を採る量は、脂肪層の厚さの3分の2から4分の3にとどめる。
と、いったものです。
それぞれの項目について、説明していきます。

1)できるだけ細いカニューレを使用する。
脂肪組織は水のような完全な液体ではなく、柔らかい個体です。したがって、脂肪吸引は、「吸引」と言われていますが、実際は液体を穴からストローでズルズルと吸い出すものではありません。ちょっと怖い表現ですが、カニューレの先に開いている穴に、脂肪組織を陰圧で吸いつけ、脂肪組織の粒をもぎ取ってくるような感じです。
ブドウの粒を、掃除機の先にくっつけて、木になっているのを取ってくるような風景を想像してみてください。
掃除機の先が大きくて太いと、一度にたくさんの実や粒を収穫できますが、葉っぱや茎・太い枝などもいっしょにもぎ取ってきてしまいます。逆に、先が小さな掃除機の場合、少しづつしか収穫できませんが、太い枝などはもぎ取りません。
ブドウの木を脂肪組織、ブドウの実を脂肪の粒、茎や枝を神経や血管に置き換えて考えてみると、太いカニューレは、短時間にたくさんの脂肪を採取できますが、血管や神経へのダメージが大きく、逆に細いカニューレでは、時間はかかりますが、血管や神経へのダメージが少なく、採取できるのは、ほぼ、脂肪の粒のみと言うことになります。つまり、脂肪吸引に用いるカニューレは、細いものほど、神経や血管へのダメージが少なく、したがって、術後の内出血や痛みも少ないということができます。

2)手術中に、カニューレを激しく前後運動させない。
脂肪吸引は、カニューレの前後運動を行うから、脂肪が採れるのですが、限度と言うものがあります。やはり、激しいカニューレの前後運動は、採取する脂肪組織を傷めるばかりでなく、神経や血管にも多くのダメージを加える結果となります。1)のカニューレの太さの項目での例えを、もう一度思い出してみてください。掃除機の先端を、ブドウの房の周りで乱暴に動かせば、枝を折り、葉っぱも引きちぎってしまいます。カニューレを素早く前後運動させると、短時間に多くの脂肪組織を採取できます。しかし、神経や血管へのダメージも多いわけです。また、手術自体の安全性も、低下してしまいます。素早い前後運動は、どうしても正確な深さにカニューレを挿入するのに、大きな誤差が生じます。つまり、近隣の脂肪層以外の組織である皮膚や筋肉への、カニューレの挿入も、頻度が増加するのです。カニューレの激しい前後運動は、このように、術後の経過の面と、安全性の面で、お勧めできる手技ではないのですが、同じカニューレの前後運動でも、パワーカニューレの使用については、特に問題はないと考えます。それは、パワーカニューレ自体の前後運動は、ミリ単位と、非常に小さいからです。それとは対照的に、人の手によるカニューレの前後運動は、Youtubeの脂肪吸引のビデオから割り出すと、その振幅が平均15から20cmあります。 つまり、パワーカニューレの前後運動は、人の手によるカニューレの前後運動から比べると、振動くらいでしかないのです。血管や神経などの人体の組織には、ある程度の弾力性がありますので、パワーカニューレの前後運動はその弾力性に吸収され、細胞の破壊や、血管や神経に対する大きな損傷は招かないと言えます。ただし、パワーカニューレの使用に関しては、ある種のものについては、安全性についての注意があります。

3)脂肪を採る量は、脂肪層の厚さの3分の2から4分の3にとどめる。
脂肪層がほとんどなくなって、つまむとペラペラになるくらいの脂肪吸引を、「どうだ!すごいだろう!」と、自慢げに写真や動画をUploadしているサイトがあります。たしかに、脂肪吸引の効果としては、局所の脂肪層がなくなって、その部分は非常に細くなるでしょう。しかし、術後はたいへんです。だから、そいのような症例については、術後1週間目の写真など、掲載している場合は非常に稀だと思います。
まず痛みが強く、なかなか退きません。脂肪吸引は脂肪層に管(カニューレ)を挿入して、脂肪を採取するのですが、脂肪層の厚みの4分の3以上になると、より神経や血管の近くの脂肪を採ることになります。そうすると、比較的太い神経へのダメージの頻度も増えます。神経へのダメージが大きいと、痛みが強く、それ以上のダメージだと、感覚脱失(皮膚の感覚がなくなる)が発生します。目に見えないくらいの細かな神経に関しては、術後の経過とともに再生するのですが、肉眼で確認できる太さ以上の神経がダメージを受けて切断されると、通常は元には戻りません。そうなると、感覚脱失という症状が、一生残ることになります。
また、術後の内出血も大きなものとなります。血管に関しても、より太い血管に対してダメージを加えることになるからです。そして、このことは内出血の問題だけでなく、もっと大変な問題に発展する可能性が大きくなります。それは、静脈血栓症です。これは、早期に対処しないと、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)に陥り、生命が危険に曝されることになります。
したがって、脂肪注入豊胸術の術後を、より安全に楽に乗り切るには、 脂肪吸引の範囲を、余り少なくしないことも重要です。たとえば、同じ量の幹細胞と注入用の脂肪を採取する際に、狭い範囲で脂肪吸引を行うと、広い範囲で脂肪吸引を行うのに比べて、たくさんの厚みを採取する必要があります。そうすると、術後の痛みや内出血の問題や、リスクの発生率が上昇するわけです。

南クリニックの脂肪吸引の平均的術後経過
脂肪吸引の平均的術後経過
脂肪吸引手術当日:
厚さ約1㎝のスポンジの上から、特殊なガードルなどで圧迫固定を行います。
痛み止めを点滴から使用して、痛みを取ってから帰宅していただきます。帰宅後は、内服薬の痛み止めが効いてきます。
脂肪吸引手術翌日:
身体を動かせば、筋肉痛程度の痛みはあるが、大きな制限を受けるほどではない。
圧迫固定を解除するために再診。
脂肪を取ったときの穴を、防水フィルムで保護して、全身のシャワーが許可となる。
矯正下着など、圧迫ができる下着を準備しておき、それを着用する。
日常生活上の制限はほぼなくなる。
平均的には、腫れは目立たず、手術前と同じ太さくらいのサイズか、プラスアルファくらいに収まる。
脂肪吸引術後7日目:
抜糸後、入浴の許可となる。
脂肪吸引術後14日目:
脂肪吸引したところの治癒過程を促進するために、マッサージ指導を受けに再診する。
この頃には、腫れが全体の70から80%消滅しているので、少し効果を感じ始める。
脂肪吸引術後3ヶ月目:
ほぼ最終的な状態となる。
※経過については個人差がありますので、上記はおおよその目安と考えてください。