輪郭3点(頬骨・顎・エラ)

卵形の輪郭を求めて、頬骨と、エラから顎の骨の手術を受けた、30歳代前半のモニターさんです。術前の骨ばった輪郭は改善され、顔が一回り小さくなりました。 頬骨は頬骨弓の前方と後方の両方、エラは角とその前方、顎は短くすると同時に幅を細く整えました。

卵形の、女性らしい輪郭を求める時には、邪魔になるのはやはり頬骨とエラ・またはアゴの幅です。頬骨が突出していると、その部分に角がある状態になり、いわゆる「ごっつい」印象の輪郭で、顔の幅が大きくなってしまいます。また、エラの張り出しは、真正面から見たときには、そのほとんどが隠れていることが多いのですが、実際に他人から見た時の、少し斜めから見た時のみえかたとして、その角張った状態が見えるため、やはり男性的な印象の輪郭を作ってしまいます。また、顔の下3分の1の部分の幅が広く見えて、やはり顔が大きいという印象が出ます。さらに、顎が太いと、四角い輪郭に近くなり、現代の日本の美的感覚からすると、あまり美しい状態ではないと言えます。これら、頬骨・えら・顎の幅と言ったものは、張り出していると、男性的または原始的な輪郭を形成するばかりか、顔面が大きく見えてしまいます。これらの症状に対する手術は、一般的に、口の中の切開や髪の中の切開線からアプローチ可能なため、女性らしい卵形の輪郭を作成するのに、有効な手段であるということができます。ただし、やはり限界というものもあり、限界を超えることで、神経麻痺や咀嚼障害、骨折などの弊害もありますので、適応は、担当医と十分に話し合うことが必要です。

頬骨

頬骨については、輪郭上の弱点とされているもののほとんどが、目尻の下の部分の、斜め前方への張り出しと、横への張り出しです。

これらの頬骨の状況は、その原因として、頬骨弓の大きさが挙げられます。頬骨弓というのは、頬骨がそのほとんどを形成する、弓なりの形をした部分の事で、弓の外側が、頬骨の張り出しの部分と言うことができます。俗に言う、「頬骨削り」というのは、頬骨の張り出しを削ることなのですが、実際のところ、この頬骨弓という個所は、その中心部分から耳の近傍にかけては、その厚さが5~8㎜と非常に薄く、削りを入れても、ドラマチックな変化を出すのが難しい場所でもあります。

そこで、頬骨弓の部分に大きな変化を出したい場合には、「削る」という手術を行うのではなく、内側に移動させることになります。

頬骨弓を内側に移動させる手術には、色々な方法があります。現在の主流は、頬骨弓の前方の骨を一部切り取り、その隙間を利用して頬骨弓を内側に小さくする方法です。この方法は、2000年代の前半に、日系アメリカ人の美容外科医によって発表されたものですが、その原法が色んな形で改良され現在に至っています。手術適応としては、頬骨弓のうち、前方の部分である、目尻の下のあたりの突出をなくしたい場合に向いています。具体的には、まず、もみあげの中やその周辺に、約1.5~2㎝の切開を行い、そこから頬骨弓の後方を切断します。次に、口の中の切開から、頬骨弓の前方の骨を一部切り取ります。その切り取った骨の隙間を埋めるようにして、頬骨弓を動かし、ワイヤーやプレート、または吸収糸で骨を固定します。

頬骨弓の手術を希望される方のなかには、もみあげの前方、つまり頬骨弓の後ろの部分の張り出しが大きく、前方はむしろ張り出しが足りない場合もあります。

この場合には、頬骨弓前方の骨の切除は行わず、切れ込みを入れ、頬骨弓後方の骨を切除します。そして、頬骨弓の後方を内側に押し込むようにして移動させ、固定します。この場合にも、術後早期に、もみあげの近くを指で触れると、骨の段差を感じることがありますが、その段差は次第に滑らかになっていきます。指で触れる程度の段差があっても、外見上は、ほとんどわからない状態です。
このように、頬骨と言っても、色々なタイプがあり、それらに最も適した手術法が存在します。どの手術法が最も適しているかは、やはり診察の上でないと、はっきりとは言えないのが現実ですが、大きな効果を狙うのであれば、やはりこれまでの説明の通り、削るという手術ではなく、骨を移動させる方法になるのは、すべて共通です。

しかしながら、頬骨が出ている患者さんのほとんどの方は、頬骨弓のうち、目尻の下の部分である前方と、もみあげのすぐ前の後方の両方を気にしている方が多いのも現実です。

その場合には、前方の手術に準じて切開と骨切り・骨切除を行い、頬骨弓を完全にブラブラになるようにしてしまいます。完全にブラブラにするのは、頬骨弓を固定する位置を、後方も内側に入るように、少し内側にズラして固定するためです。その際には、やはりワイヤーやプレート、または吸収糸で骨を固定します。そしてその場合、術後の比較的早い時期には、もみあげの近くに、指で触れると骨の段差を感じることがあります。しかし、その段差は次第に吸収されると同時に、外見上は、初期のうちから、ほとんどわからない状態です。また、もみあげ内に切開線を持ってくることができれば、術後は傷が髪の中に隠れるため、外見上は手術の痕跡が分からなくなります。そして、術後のたるみの事が心配な場合には、もみあげの切開線を無くし、その代わりに耳の縁から頭髪内やこめかみの生え際までの切開で、同時に軽いフェイスリフトを加えることも可能です。ただし、術後のたるみを心配しなければならないのは、大きく頬骨弓を変化させる場合で、年齢的には30代以上の方に限られています。

エラ

エラの手術は、所謂、エラの角を取る手術と、最近では、エラの部分の幅を小さくする手術に分類できます。勿論、同時に行うことも可能です。

エラの手術は、30年以上前から行われている手術で、その方法としては、下顎角という、いわゆるエラの角の所の骨を切除する手術が一般的に行われてきました。しかし、この部分の切除だけでは、正面から見た時の輪郭の変化は、症例によっては変化があまりなく、不満足な結果になっていました。そこで、正面から見た時の効果を、できるだけ満足のいく状態にするために、多くの美容外科医たちが、それぞれ工夫を重ねてきました。例えば、エラの部分を大きく切り取ることや、エラの角の部分だけでなく、顎の横まで骨を切り取る手術が、それぞれのクリニックで行われました。しかし、エラを大きく切り取る手術は、骨の強度を大きく失う形となり、奥歯の歯科処置に際して、かなりの困難を生じる形となります。また、下顎神経という、骨の中を走る神経の損傷もあり、あまりに大きな骨片の切除は、危険とされました。また、顎の横まで骨を切り取る手術では、取り出す骨片の先端が、ちょうど、おとがい神経のすぐ下に来ます。そのため、骨片を取り出すときに、おとがい神経を引っかけて損傷したり、展開するために引っ張りすぎて切断したりするリスクが高くなります。おとがい神経というのは、下顎神経の、下顎骨から出てきた枝のことです。実際に、この方法による、おとがい神経損傷の報告も、数多くなされています。また、この方法の場合は、下顎骨の全ての層を切り取ることになるため、下顎骨の外力に対する強度が、大きく失われます。つまり、転んだりしたときには、すぐに折れるということです。そこで、エラの手術の際に、下顎骨の幅を小さくするために、横に張り出した骨の厚みを取ってやるという考え方の下、アングル・スプリッティングという手術法が、日本人美容外科医によって、1990年代に発表されました。そしてそれを元に、2000年代に入ってから、外板切除と言って、下顎神経管や歯根を避けて、下顎骨の外側の部分を、斜め方向に切り取るという方法が考案されました。外板切除の場合には、内側の骨である内板が残っているため、下顎骨の強度に対する影響は少なくなってるにもかかわらず、下顎の幅を狭くする効果があるという利点があります。

現在の外板切除法の元である、「アングル・スプリッティング法」という手術法は、発表後すぐに、多くの美容外科医に取り入れられ、1990年代の後半に流行しました。この方法は、正面から見た時のエラ削り手術の効果を出すことを目的として、開発されたためです。この事実から、多くの美容外科医が、エラの手術で、いかに正面から見た時の輪郭の改善に苦労していたかが、わかります。


アングル・スプリッティング法は、下顎骨のエラの部分の中でも、外側にある骨皮質である、外板という部分を、斜めにスライスするような形で取り除く方法です。まさに、エラの部分の外板切除です。この方法は、症例によっては正面からのエラ削り効果が非常によく出て、顔の幅が小さくなります。それまでの方法でのエラ手術では、満足のいく効果が出ないと思われる症例にも有用なものでした。また、下顎骨の裏側に大きな操作を加えずに済むため、手術自体の侵襲も、従来の手術よりも少ないものでした。さらに、切った骨の骨髄も、頬の方(外側)を向いているので、術後の圧迫止血も容易であるなど、いろいろな利点がありました。さらに、手術侵襲と止血が容易なことから、術後の腫れも少ない傾向があり、患者さんにとっては、ダウンタイムの短い楽な手術法と言えました。しかし、この方法は、エラの角の部分に対しては、かなりの習熟がないと、効果が今一つというものでした。

さらに、この「アングル・スプリッティング法」が普及するにつれ、顎の骨の形がギザギザになってしまうという問題点も、出てきました。

この手術では、骨を斜めにスライスする際、線状に並べるようにしてドリルで骨に穴を開け、そこから骨用のノミを使用して、それらの穴をつなぐように骨を割って、切除する骨を取り除きます。開発者の医師は、顎変形症手術の代表的な方法の、下顎骨矢状分割法にヒントを得たと思われます。しかし、これを輪郭の手術であるエラに行うと、切り取られた後の骨の縁は、のこぎりの歯のようにギザギザになります。 このギザギザは、外見上はほとんどわからないのですが、術後、患者さん本人が触ってみたり、顔の向きによっては、エラが凸凹します。歯科処置の際のレントゲン検査などでは、しっかりと検出されます。そこで、このギザギザを滑らかにするために、電動ドリルに付けたボール状のバーで削ります。
しかし、口の中からの手術で、しかも奥の方にあるため、高速で回転する器具を使用するのは、危険な部位で、慎重にならざるを得ないと言えます。周辺の筋肉などを十分に保護せずに、無理にバーを入れて使用すると、バーが周囲の肉を巻き込んでしまって、危険だからです。特にこの部分の近くには、手術中の頭の向きによっては、外頚静脈及びその枝があり、バーで巻き込んで傷つけると、止血が困難です。さらに、顔面神経の本幹に近い部分でもあります。 この部分の解剖がよく解っていて、危険性を予見できる医師ほど、慎重になる操作です。
さらに、このギザギザは、削って滑らかにするのが、結構難しいとされます。どういうことかと言えば、骨を斜めに切っているため、この部分は、骨の厚みが非常に薄く、削りすぎて、エラがなくなってしまう、あるいは、エラが前方に移動して、エラの角が口の横に来てしまうということです。こういったリスクを回避するには、削って滑らかにしないほうが、外見上は綺麗です。
以上のような理由から、この手術は、顎の骨の形がギザギザになるという問題を残したままとなってしまったのです。

「アングル・スプリッティング法」は、エラの幅に注目し、それを改善させるという目的を達成できる、それまでにない、画期的な方法だったと言えます。

しかし、エラの部分の骨がギザギザになってしまうという、欠点もあります。このギザギザは、外見上はわからないということで、美容的には大きなものではなかったとも言えます。しかし、この、「外見上は分からない」ということが、原著では利点とされていますが、もう一つの問題点でもあります。
それは、咬筋が萎縮しないということです。咬筋とは、奥歯をかみしめた時に力コブができる、エラの所の筋肉です。この筋肉は、エラの骨と同じく、顔の幅を構成しています。この咬筋が萎縮しないということは、手術の効果が弱くなるということです。つまり、咬筋が大きな症例では、十分な効果が得られないことです。外板(エラの外側の骨皮質)を取り除くために、手術中に外された咬筋は、術後、残った内側の骨皮質にくっつくことで、萎縮せずに保存されてしまうのです。このことは、自然でなめらかな外見上の輪郭を保つという意味ではいいことです。特に、エラの骨がギザギザになるこの術式では、ギザギザを咬筋が覆って隠してくれます。しかし、咬筋が委縮しないということは、顔の幅に関しても、その分、効果が少なくなるということです。そこで、この手術の術後に、ボトックスを注射して、咬筋を萎縮させるということが、よく行われていました。ただし、ボトックスの咬筋に対する委縮効果は一時的なもので、萎縮した状態を保とうとすれば、定期的な治療が必要です。したがって、咬筋が委縮しないと効果が少なく、咬筋が委縮すればギザギザが出てくるといったジレンマが、この術式には存在します。

アングル・スプリッティング法は、利点は、顔の幅に影響している、エラの骨の、横向きの張り出しを改善できるということと、内板を多く残すことで、下顎骨の強度を保存できるということです。そして、欠点は、骨のギザギザと、咬筋の萎縮が得られないということです。
当院では、利点を生かし、欠点をなくしていこうとしました。

当院の方法は、具体的には、これまでのエラの角に対する全層切除と、アングル・スプリッティング法を組み合わせたものです。咬筋の委縮を得るためには、エラの部分は外側の骨皮質(外板)だけでなく、内側の骨皮質(内板)も切除しないといけない。しかし骨の横への張り出しを減少させるには、外板の切除も行わなければならないということですので、エラの角に対する全層切除と、アングル・スプリッティング法を組み合わせました。まず、エラの角から顎付近まで、細長く骨を外板から内板まで全層を細長く切除(全層切除)します。その後、外板を、「アングル・スプリッティング法」に準じて、やはりエラの近くから顎付近まで取り除きます。このようにすると、エラの角の部分は、最初の全層切除による切除面が保たれ、削って滑らかにしやすい前のほうは、やはり削れます。そのことで、ギザギザにならず、骨の外側への張り出しも減少し、しかも術後は咬筋の委縮も得られるのです。勿論、全てを全層切除で行うのに比べて、下顎骨の強度も保たれます。

限定解除要件
副作用・合併症:骨の脆弱化
費用: 総額290万円