再生医療についての感想 8

「局所に成長因子を増やしてやる」ということは、細胞の分化や増殖にいいことであり、豊胸や若返りに有効であることは、これまでの話で十分に理解できると思います。では、成長因子を単純に局所に注射すればいいのかというと、そういうわけではありません。


成長因子は、ペプチド(ペプタイド)と言って、数種類のアミノ酸が結びついた小さな分子です。ちなみに、コラーゲンなどのタンパク質も、アミノ酸が手をつないだ分子なのですが、ペプチドはそれよりも、もっともっと小さな分子です。それを単純に局所に注射しても、普通の注射液のように、すぐに吸収され、全身に分散されてしまいます。それでは、局所でその効果を十分に発揮する前に、そこからなくなってしまいます。
そこで、成長因子を長時間、局所に止めておくことが必要になります。その方法の一つが、PRP(多血小板血漿)注射液との混合です。PRPそのものにも、多くの成長因子が含まれてはいますが、その量は、シワとりに利用できるくらいの量で、それだけを注射しても、豊胸などの、皮下組織の増量に利用できるほどのものではありません。シワに関しても、PRP単独の場合には、有効率は約70から80%に止まります。つまり、PRPはこの場合、成長因子を局所に長時間止めておく作用がメインとなるのです。
ちなみに、当院でシワとりで使用するWPRPFは、PRPに白血球と成長因子を加え、有効率を99.8%にした物なのですが、豊胸で使用する成長因子の混合量とは全く異なります。