非常に稀だが、バッグプロテーゼと乳がんが関係している?~Breast Implants May Be Linked to Rare Cancer, FDA Says

2011年1月26日、FDA(米国食品医薬品局)は、非常に稀なガンの一つと、豊胸用バッグプロテーゼに、関連性があるかもしれないと言う発表をした。現在、調査中である。


非常に稀なガンとは、未分化型大細胞リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma)という、リンパ腺のガンである。このガンは、ガンと言っても悪性度は非常に低く、バッグプロテーゼとカプセル、およびその中の液体を取り出すだけで、ほとんどが完治する。また、非常に稀なガンで、1年間のうち、50万人中1人しか罹患せず、乳房(バスト)に発生するのは、1年間で、1億人中3人である。日本に人口に換算すると、年に1人か2人の罹患率。
そこで、バッグプロテーゼとの関連性だが、FDAの論文調査によると、1997年から2010年までの14年間で、世界中の、バッグプロテーゼで豊胸した人の中で、34名がこのガンに罹患しているという。世界中では、500万人から1000万人がバッグでの豊胸術を受けているので、単純計算すると、200万人から400万人に1人の発生率である。このガンへの全罹患数が、この期間に、分かっているだけで60名で、重複して報告されている人数は不明。
結論としては、バッグプロテーゼとこのタイプのガンとの関連性は、未だ不明だが、バッグプロテーゼによる豊胸術を受けて、何年もの年月がたってから、変形してきたり、腫れてきたり、痛みが出てきたりした場合には、これの初発症状である場合があると言うことなので、そういった場合には、バッグプロテーゼの除去をしたほうがいいかも知れない。
http://www.medscape.com/viewarticle/736352?src=mp&spon=48
そこで、アメリカの2つの美容外科学会による、このことに対するコメントを紹介しておきたい。
2011年1月26日には、ASAPS(アメリカ美容形成外科学会)は、この件に関する見解を発表している。ASAPS(アメリカ美容形成外科学会)とは、形成外科系の美容外科医の学会で、日本においては「大森系」に相当する。
大略として、FDAの見解をなぞり、定期的な健診を勧めている。また、会長の弁として、「豊胸用のバッグは、医学史上、最もよく研究された医療用具です。医師として、我々は効果的かつ安全な治療を提供することが、一番大切なことだと考えています。今後も、FDAや形成外科学会と連携して、製品の評価に関与していきます。」
とのことであった。
良く言えば慎重な、逆に、何とも当たり障りのない、日和見的な見解表明である。
http://www.surgery.org/media/news-releases/aesthetic-society-applauds-fda%E2%80%99s-effort-to-collect-data-concerning-a-rare-condition-associated-with-breast-i
さて、アメリカにも日本と同じように、美容外科の学会がもう一つある。と、いうよりも、もうひとつ大きな学会があるといったほうがいいかも知れない。実際には、アメリカには、中小のたくさんの”美容外科学会”が群雄割拠しているのが現状だからだ。
その、もうひとつの大きな学会が、American academy of cosmetic surgeryという学会である。こちらは非形成外科系となる。しかし、形成外科医もメンバーの10から20%を占め、その他は皮膚科・耳鼻科(顔面形成外科)・婦人科・外科といった、多彩な顔ぶれとなる。
この学会の公式見解として、ASAPSとほぼ時を同じくして、以下を発表している。概略は、
「当学会は、会員向けに独自のデータベースを提供している。このデータベースには既に、この問題についての疫学的調査の文献があり、この問題に対しては、既に調査済みで、豊胸バッグと乳がんの関連性はない。」
と、なっている。そして、20年前のシリコンバッグ発がん説騒ぎを繰り返さないように、警告も行っている。