神経の再建に神経移植 成功率は驚くべきことに80%!

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最近はいろいろな臓器の移植の成功が報告されている。今回は、それらの中でも、末梢神経の移植の成功率の話。


末梢神経とは、脳や脊髄以外の神経組織のこと。つまり、体中に張り巡らされている感覚神経と運動神経のこと。これらの末梢神経は、目に見えない程度の太さのものなら、切断されてもいずれつながり、機能を回復する。しかし、直径1㎜近くの肉眼で確認できるほどのものは、そのまま切断された状態では繋がらない。そこで神経縫合という技術の登場となるのだが、外傷(けが)などの場合、感染を防止するためにデブリードマンと言って、汚く挫滅した組織を切り取る作業を行う。その際に、神経もデブリードマンしないといけないこともしばしば。さらに、外傷そのものによって神経が欠損してしまうことも多い。そうすると、神経そのものの長さが不足してしまい、神経縫合が不可能になる。そのときに、神経移植が必要になる。
Processed nerve allografts for peripheral nerve reconstruction: A multicenter study of utilization and outcomes in sensory, mixed, and motor nerve reconstructions
この論文では、そのような神経移植が必要な時に、他人の神経を移植して、その回復を調べたもの。他人の神経と言っても、生きた人間から神経を切り取ってくるのではなく、死体から部品として確保した神経である。そこから細胞成分を取り除いた製品を作成して、それを使用するというもの。結果は、神経の回復に関しては、平均約80%の患者さんに成功を収め、運動機能・感覚機能ともに回復したという。
細胞成分を取り除いた神経組織というのは、つまるところ、神経の細胞外マトリックスを移植するということ。細胞外マトリックスの助けを借りて、切断された神経が再生する過程で、神経そのものが伸びてきて、繋がって機能を回復するとされている。
それにしても、回復率80%とは、驚きの結果である。神経損傷は治らないというのが常識だった5~6年前までとは大違いである。この技術は、再生医療の神経への応用として、今後、多く用いられていくだろう。しかし、我が国日本では、臓器移植については厳しい法的縛りがあるため、今後20年は実用化しないと思われる。神経の細胞外マトリックスが、人工的に合成できるようになれば、また話が違ってくるだろうが・・・。

「神経の再建に神経移植 成功率は驚くべきことに80%!」への2件のフィードバック

  1. 一児の母 より:

    すごいことですね。
    もっと日本も柔軟に検討してもらいたいですよね・・・

  2. 匿名希望 より:

    早く実用化されるといいですね。

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