ついにアメリカで脂肪溶解注射が解禁に?

ATX-101という薬剤に、アメリカでFDAの承認が下りる見通しが出てきた。これは、脂肪溶解注射のこと。FDA承認の適応症としては、まずは二重あごということ。成分はデオキシコール酸。これは、胆汁に含まれる成分であり、脂肪を分解してグリセリンと脂肪酸にする。つまり、脂肪を水に溶ける形にする薬剤。さらにこのデオキシコール酸は、細胞を破壊して死滅させる効果もある。
現在、世界各国で用いられている脂肪溶解注射の成分は、フォスファチジル・コリンを主体としています。このフォスファチジル・コリンは、リン脂質と言って、所謂油の一種ですので、水に溶けず、そのままでは注射液として使用できません。そこで、このデオキシコール酸を添加することで、水溶性とし、注射液にしています。このデオキシコール酸に、細胞破壊性があることから、この注射液を脂肪組織に注射すると、脂肪細胞を破壊し、そこから流出した中性脂肪が、フォスファチジル・コリンによって乳化されて肝臓で分解されるという原理です。そして今回、FDAが承認しようとしているこのATX-101は、この細胞破壊成分であるデオキシコール酸が成分であり、特に目新しい薬剤ではありません。
目新しい薬剤ではないと言えば、これら脂肪溶解注射に使用される薬剤は、本当はどれも新しいものではありません。フォスファチジル・コリンも高脂血症治療薬として、EUでは点滴用の薬剤として既に50年以上使用されていますし、内服薬では日本でもEPLカプセルという商品名で、処方薬として存在します。一方、デオキシコール酸のほうは、ウルソという商品名で、国内の胆石治療薬でもあります。双方とも、30年以上の歴史ある薬剤ですので、全身的な副作用と言う面では、全く心配いらないと思われます。
では、どうして今頃になって、FDAの承認がどうこうと言われ始めたのかと言うことですが、そこは、FDAと我が国の厚労省の審査基準におけるフィロソフィーの違いです。これに関してはいろいろなことがあるのですが、簡単に言うと、FDAは有効性重視、厚労省は副作用重視といったところです。つまり、FDAは副作用が無くても、有効性の無い薬剤は承認しないということです。逆に厚労省は、有効性があっても、副作用があればそれらが確定するまでは承認しません。つまり、厚労省が新薬の承認に時間をかけてしまうのは、副作用の審査に時間が必要だからです。
しかしながらアメリカでは、前出のEPLカプセルやウルソなどは、成分的にはサプリの部類に属しますので、その注射液という部分では、有効性を重視するのは致し方ないところでしょう。ただ、ざっとこのような経緯で、やっと、アメリカで脂肪溶解注射が、クラッシックなものとはいえ、初めて承認される芽が出てきたというニュースです。
 
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