アメリカン・ジャーナル最新号に衝撃的な論文~他人の脂肪で脂肪注入!

何と!他人の脂肪で脂肪注入をして、成功している!


痩せていて、自分の脂肪が確保できない人は、脂肪注入を諦めて、ヒアルロン酸などの注入を選択せざるを得なかったのだが、他人の脂肪を注入するという選択肢が開かれた。
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しかしその道のりは、なかなか大変で、手軽にというわけにはいかない。方法は、何人もの脂肪吸引を行い、吸引した脂肪を保存しておく。その中から、感染症検査や病歴をパスし、患者さんの血液型やHLAタイプに合う脂肪をいくつか選択し、少量を患者さんの背中に注入してみる。約1カ月、注入したところを観察し、拒否反応が出ない脂肪を、さらに手の甲に注入し、約1カ月観察の後、生着率のよい物を選択して、注入するというものだ。
たしかに、内臓の移植手術、顔面移植手術、脚の移植手術など、HLAタイプの適合性で、可否を判断することになっている。特に、顔面や四肢の移植には、皮下脂肪の移植も含まれているので、HLAタイプの検査は、理にかなっている。しかし、血液型や感染症検査はいいとしても、HLA検査には、莫大な費用がかかる。また、臓器移植の術後には拒否反応のコントロールが必要となる。脂肪の場合にも、それが必要になることはないのか?また、一連の検査の結果を待って、患部への脂肪注入に至るまで、最短で約2カ月を要することになる。
そこで、筆者のDr.Kimは、血液型と同じ概念で、今後、「脂肪型」と言うものを検索していくという。血液は、一定の働きを持った、臓器の一部と捉えることができにもかかわらず、その移植は、移植ではなく、輸血という別の概念で捉えられている。つまり、HLAタイプの検査をしなくても、血液型検査と交差適合試験といった簡単な検査のみで可能な、輸血と同じ概念で脂肪注入を捉えるということだ。血液型のような、「脂肪型」と言うものが確立すれば、それを検査して、保存の際にあらかじめ分類しておく。そして、注入前には適合性検査として、少量の皮下注入を行い、それをパスした脂肪を実際に患部に注入するということを目標にしている。
このようにすれば、治療前の準備としての検査にかかる、約2カ月と言う期間が、1カ月に短縮される。また、さらに詳しい、体外で迅速にできる、脂肪のみの適合性検査の方法が確立できれば、患者さんの待機期間はもっと短縮できるだろう。最終的には、血液銀行ならず、「脂肪銀行」なども可能かもしれない。
一部で行われている、スキンバンク、幹細胞バンク、線維芽細胞バンクなどは、ただ単に、自分の細胞を預けるだけのものである。つまり、銀行で言えば、預金機能しかない。いや、単なる貸金庫である。バンクなどと名乗れる代物ではない。しかし、「脂肪型」での分類が完成すれば、預金機能だけでなく、これに、融資機能がプラスされることになる。さらに、遠隔地にいる知り合いのために、自分の脂肪を利用させることも可能(実際には、脂肪型の同じ他人の脂肪を、近隣の支店が供給して、それを利用するのだが)になるので、送金・決済機能も付加されることとなる。
これからの脂肪注入の発展に、大きな一歩と、示唆に富んだ考察が含まれた論文である。
そういえば、今から15から20年ほど前だったか。日本美容外科学会(十仁系)で、今は亡き銀座美容外科の故森川昭彦先生が、「妹の脂肪吸引をして、その脂肪を姉に注入して成功した」と発表した。当時、他人の脂肪を使って脂肪注入することはおろか、脂肪注入そのものに対しても、否定的見解を述べる医師が、かなりの人数いた時代である。当然、発表は、会場内ではほとんど無視された状態で、多分、学会誌の記録にも留められないほどの不評ぶりだった。なぜかというと、臓器移植も今より高いハードルがある時代に、「常識」的に、他人の脂肪が生着するはずがないと、皆が考えていたからである。
医学における「常識」とは、何だろうか?私は、自分の辞書には、それは「打ち破るためにあるもの」と記したい。

「アメリカン・ジャーナル最新号に衝撃的な論文~他人の脂肪で脂肪注入!」への1件の返信

  1. 一児の母 より:

    ちょっと恐ろしい気もしますね。

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