強力脂肪溶解注射の、ヒップから膝周りにかけてのフルコース、合計20か所を2回に分けて行いました。当然、同じ場所の処置は1回のみです。
強力脂肪溶解注射は、1か所1回の処置で、およそ100gの皮下脂肪が無くなるといった感じです。したがって、10か所なら1kg、20か所なら2kgの皮下脂肪がなくなるわけですから、こちらのモニターさんは、合計2kgの皮下脂肪が無くなった計算です。したがって、術前よりも2kg、体重が減少している状態が、処置を受けていない場所のサイズが術前のままで、処置を受けた場所のサイズがダウンしている状態です。
脂肪溶解注射は、脂肪吸引同様、局所の脂肪を溶かすもので、体重を減少させるものではありませんので、少なくとも、術前の体重の維持は必要です。注射したところが細くなったからと言って、あまりに気を抜いて、体重のコントロールを怠ると、処置を受けていないところが、無残に肉付きがよくなってしまうこともありますので、ご注意ください。
こちらのモニターさんは、術後の体重管理もしっかりとされていて、強力脂肪溶解注射の効果についても、非常に満足されていました。では、術後に体重が増えてしまった方は、どのような具合なのでしょう?これまで2人ほど、術後に体重を4kg程度増加させてしまった患者さんがいました。二人とも、太ももに強力脂肪溶解注射を受けた患者さんなのですが、太ももは未だ、術前よりもすっきりとしています。しかし、ウエストのサイズがUPして、今度は腹部の脂肪溶解注射を希望していました。当然、私としては、術後の体重コントロールの必要性を、再度説明しました。しかし、一つ、いいこともあったそうです。それは、胸が少し大きくなったとのこと。つまり、下半身についていた皮下脂肪の分が、バストにシフトしたと考えられるのです。
理論的には、バストを除いて、全身の脂肪溶解注射を次々と行うと、当然、バストの脂肪のみが大きくなって、バストのサイズアップにつながります。しかし、強力脂肪溶解注射は、安全性を考慮すると、1日に10か所までしかできないため、この方法のバストアップは、あまり現実的とは言えないと思われます。
「強力」脂肪溶解注射と言うと、「凸凹になってしまうことはないか?」「えぐれてしまうことはないか?」といった質問を受けることがあります。答えは「絶対にあり得ません」と言えます。
当院の脂肪溶解注射は、他の所でも書きましたが、脂肪組織によくしみ込むため、一か所の注射部位からでも、十分に周囲に拡散します。当然、注射針の先端の部分にたくさんの溶液が存在して、そこが一番、脂肪溶解作用が強いのですが、そこを中心として、その周囲には、同心円状に薬剤濃度が少しづつ低くなっていく円形の区域ができます。脂肪吸引のように、カニューレが通ったところだけ、脂肪が無くなると言うのとは全く違います。
また、脂肪吸引との違いは、神経や血管に対するダメージが、比べ物にならないほど少ないということでしょう。たしかに、針を使用する限りは、ダメージがまったくないと言えば、ウソになります。しかし、脂肪吸引のように、3mmや4mmのカニューレが、脂肪層の中を通過していくのとはわけが違います。したがって、内出血や術後の痛みも少ないのです。
太ももの後、つまり、ヒップの下の脂肪をつまんで、「ここの脂肪を取ってください」と言ってくる患者さんがいます。その場合、私がいつもアドバイスするのは、「その上の、ヒップの脂肪も取らないと、ヒップが下がりますよ」ということです。理由は、ヒップの下で「支え」になっていた脂肪がなくなることで、その上のヒップが下のほうにシフトするためです。そこで、そのシフトする部分、つまり、ヒップの下の部分の脂肪を同時に取ってやると、ヒップの重みがなくなり、支えがなくなっても下に垂れさがらないのです。したがって、太ももの後の脂肪を取る際には、ヒップの下部の脂肪もいっしょに取りましょうということです。これは、脂肪溶解注射でも、プラズマリポや脂肪吸引でも、全ての脂肪除去の方法について言えることです。
しかしながら、太ももの後と言うのは、あまり脂肪が付かないところでもあります。理由は、起立した姿勢や歩行する際には、その部分の筋肉を常に使用しているためです。逆に、太ももの前面は、走るときに、膝を高く挙げるときの筋肉です。したがって、走ることが少ない現代人にとって、脂肪がつきやすいところです。
太ももとヒップで、脂肪が付きやすい場所は、ヒップの外側から太ももの外側にかけての部分が、かなりの部分を占めています。この部分は、やはり筋肉が乏しい部分です。強いて言うなら、直立態勢で、足を外向きに挙上すると、この部分の筋肉を使用することができます。しかし、このような動きは、バレエを踊るとき以外は、空手の練習でもしない限り、日常生活上非常に稀な動きと言えます。したがって、筋肉が元々乏しい上に、鍛えられることもなく、その上には皮下脂肪がどんどんと沈着するのです。
同様に、膝の内側や太ももの内側も、同じ理由で皮下脂肪が沈着しやすく、しかも、一度付くと、努力しても、なかなか取れないところでもあります。
このような、努力にもかかわらず取れないところこそ、脂肪溶解注射・プラズマリポ・脂肪吸引などの出番と言えるでしょう。
脚が全体的に太い場合には、どのように対処するかという問題があります。脚全体と言った場合、二つのタイプに分類されます。
一つは、本当に太もも全体にしっかりと皮下脂肪がたっぷり付いていて、正味、太いタイプです。この場合は、本当に太もも全体にわたって、処置を加える必要があります。脂肪溶解注射なら、前面・両側面・後面・膝上・膝内と、全ての部分に注射をする必要があるでしょう。
二つ目は、太ももを太く見せているところがある場合です。このタイプは、その、太ももを太く見せているところを、集中的に攻めれば、全体として見ると、太ももが細く見えると言えます。その中で、一番多い個所は、やはり、太ももの外側です。この部分は、太もものシルエットを決定する部分でもあります。2番目は、太ももの前面です。太ももの内側は、患者さん自身でつまみやすいところなので、気にする方が多いのですが、水着姿以外では、他人から見るとあまり太ももの美しさには影響しないところと言えます。
脂肪吸引で凸凹になったところは、脂肪溶解注射で修正できるのか?ということですが、それは可能です。ただし、いかに強力脂肪溶解注射でも、1回では無理です。なぜかというと、脂肪吸引を行った脂肪組織は、その中に多量の繊維を含み、薬液の拡散を妨害します。通常の脂肪溶解注射では、この、繊維による妨害によって、まったくと言っていいほど凹凸の修正効果はありません。強力脂肪溶解注射の場合には、薬液の拡散を改良してありますので、ある程度、繊維を通して薬液が拡散します。しかし、脂肪吸引の後は、通常の脂肪組織とは比べ物にならないほど多量の繊維があるため、1回では効果が出にくいのです。特に、取りすぎによる凹凸は、繊維の形成の不均等が凹凸を作っている原因の一つですので、処置回数は増える傾向にあります。
「太ももを細く見せる」というのではなく、「太ももの周径を細くしたい」と言う場合の、脂肪溶解注射の優先順位というものも存在します。もちろん、一番太い高さの部分(多分、大多数の方は、太ももの付け根の部分だと思いますが)を、一周すれば、周径は細くなります。しかし、効率よく、つまり、「少ない注射個所で、より効果的に」ということを目標にすると、一周の中でも、より効果的な場所と言うものがあるのです。
そもそも、人間の太ももは、正円形ではありません。どの高さで横断面を見ても、楕円形になっています。ここで、円と楕円の性質について、少し考えてみましょう。
円の面積は、円周率X半径X半径
円周は、円周率X半径X2
楕円の面積は、円周率X長半径(a)X短半径(b)
楕円の円周は、円周率X√(2(a2+b2))-(a-b)2/2.2
です。ここで問題なのは、同じ面積の楕円の中で、最もその円周を小さくするには、どうしたらよいかということです。答えは、a=b、つまり、真円に近いほど、同じ面積でも円周が小さくなります。
このことを脂肪溶解注射に当てはめてみればいいでしょう。そうすると、断面の中で最も張り出した部分に処置を受けることが、周径のサイズダウンに最も効率がいいわけです。