ボトックスの最近の動向(2009年7月現在)

2009年7月現在の、ボトックス(Botulinum Toxyn Type A)の動向について、当院で掴んでいる情報とそれに対する当院の方針などを、紹介します。


ボトックス
アメリカのアラガン社が国際商標権を持つ医薬品。日本国内においては、現在のところ、適応症が「眼瞼痙攣」のみとして、厚生労働省の承認が得られている。また、ボトックスビスタ(BOTOX Vista)は、眉間のみ、シワ取りの承認が得られている(その他のしわに対する適応は未承認)。有効成分はBotulinumToxin TypeA。同様の製品は、今や様々な国で生産され、流通している。これらの眉間のしわに対する以外の美容目的での使用については、関係法令上、診療に使用する医師の裁量と責任において認められている。以下、日本国内においてボトックスとしてよく使用されているBotulinumToxin TypeAについて、その違いと問題点について述べる。
ボトックス~アラガン社(アメリカ合衆国製・スミスクライン社)
美容領域では、蛋白含有量の少ない(アレルギー反応が出現しにくい)「ボトックスCosmetics」が、アメリカでは主流。これが、日本国内ではボトックスビスタに相当する。アラガン社の日本法人は、「ボトックスCosmetics」と同等品の「ボトックスビスタを取り扱っており、美容目的使用については、このボトックスビスタを出荷する。しかし、他の疾患治療目的の場合と同様に、厚生労働省の指導のもと、薬事法に基づき、患者ごとの使用量や使用残の廃棄報告など、詳細なレポート提出義務がある。また、このボトックスビスタは非常に高価である(後述の、従来のボトックスの約3から4倍の価格である。したがって、これを使用しているクリニックは、日本国内においてほぼないと言っていいであろう。これを美容目的に使用しているクリニックは、当然、高額な治療費を掲げなくてはならず、患者負担が大きいからである。
ボトックス~アラガン社(アイルランド製)
アラガン社製ボトックスを使用している、国内の美容外科の大半が、これを使用している。一番の理由は、アメリカのボトックスよりも、格段に安価なためである(2009年現在、日本国内での価格はおよそ3分の一)。また、輸入代行業者や密輸業者が、クリニックに対してFAXやE-mailで営業をするため、クリニック側からすると、入手が容易であることも理由のひとつと言えよう。品質上はアメリカ製と遜色ないと思われるが、その輸送過程に問題がある場合が多い。BotulinumToxinは熱に弱く、溶解前で未開封のバイアル内でパウダーの状態であっても、冷蔵保存が必要である。それを怠ると、効力が激減し、「効かない」「効果が短期間である」といったことになる。輸入代行業者や密輸業者は、日本国内では在庫を保管することができないので、製造元のアラガン社から直接日本に輸入するのではなく、香港やシンガポール、タイなど、医薬品の輸出入規制がゆるやかな国に中継地点を構え、在庫をストックしている。アイルランドから中継国へ輸送する際や、在庫として保管する際、そこから日本に発送・密輸する際に、冷蔵がなされていない場合が多く、いわゆるヒートダメージを受け、効力が激減しているものが多い。安物のワインと同じである。冷蔵輸送をしないのは、輸入代行業者の場合は輸送費の節約、密輸業者の場合は空港の税関で目に付きにくくするため、手荷物を小さく軽くしなければならないからである。また、納品時にも、クール便ではなく普通の宅急便で送られて来ることがあることからも、保存温度管理の不徹底が容易に窺い知れる。
BTXA~中国製
成分には豚のコラーゲン(ゼラチン)が入っているため、局所のアレルギー反応が比較的高率にみられる。また、品質管理上の問題があり、1バイアルあたりの単位数にばらつきがある。つまり、知らないうちに規定量以上の注射を受けていることがある。BotulinumToxin TypeAの性質上、1回に大量の成分の注射がなされた場合、抗体産生が起こり(成分に対して免疫ができる)、その後、一生、BotulinumToxin TypeAによる治療が無効になってしまう。そうなった場合には、BotulinumToxin Type Bに切り替える必要が生じるが、これはMyoblocという商品名でアメリカでしか発売されておらず、非常に高価である。
Neuronox(ニューロノクス)~韓国製
効果が薄い。納品時にクール便ではなく普通の宅急便で送られてくるためか。また、クリニック側の通関手続きが不要であることから、韓国から手荷物に隠して密輸している可能性が高い。本国において、しっかりと保管温度管理がなされたものであれば、いいものかもしれない。
Dysport~イプセン社(イギリス製)
使用感としては、「ボトックスCosmetics」と同等またはそれ以上に強力。眼窩周辺への注入の際には、その強力な作用ゆえに、眼球症状の発生には十分に注意する必要がある。この製品も、アイルランド製ボトックス同様の流通経路を辿っている物が出回っている。尚、この製品については、2009年4月、アメリカのFDA承認が獲得でき、リロキシン(Reloxin)としてMedicis社(Restylaneのアメリカでの販社)が販売する。
韓国のBotulinum toxin TypeA製剤
最近、Botox(ボトックス)の基本特許の期限切れとともに、韓国では前述のニューロノクス(Neuronox)以外にも多くのBotulinumToxin TypeA製剤が生産されるようになった。リジェノックス(Regenox)やメディトキシン(Meditoxin)である。韓国では薬剤の承認基準がほとんどアメリカのFDAと同等であることから、品質的には同じものである。
当院では、Dysportを使用しているが、輸入に際してはメーカーからの直接仕入れをおこない、国際クール便での輸送にて、保管温度管理をしっかりと行っている。

「ボトックスの最近の動向(2009年7月現在)」への5件のフィードバック

  1. 一児の母 より:

    ボトックスといっても色々な種類の製品があるんですね。
    患者サイドとしては安くて効果が持続するのが嬉しいですが、なかなか難しいですね。

  2. k より:

    ボトックスは色々な種類があるんですね。

  3. k より:

    定期的に打たないといけないのですか?

  4. k より:

    目尻のしわが気になります。費用を教えて下さい。

  5. 目尻のしわが気になります。費用を教えて下さい。
    目尻なら¥31,500で可能です。

現在コメントは受け付けていません。