再生医療についての感想 9

前回までの説明の通り、成長因子はPRPとの混合によって組織内に長く止まり、幹細胞が脂肪細胞に分化・幹細胞自身が増殖する、といった過程で、その効果を十分に発揮できるということです。


そこで、今度は幹細胞に話を移してみたいと思います。幹細胞を脂肪から分離して、脂肪細胞に混合し、それを注射するというのが、幹細胞脂肪注入の原法です。それは、「脂肪吸引で採れた脂肪の中には、切り取った脂肪組織の半分の量の幹細胞しか入っていない」という実験結果を元に、注入用の脂肪に対して、幹細胞分離用にそれと同じ量の脂肪を吸引して、そこから分離した幹細胞を全て混合するといったものです。分かりやすく言うと、100ccの脂肪を注入する場合には、もう100ccの脂肪を別に準備して、そこから幹細胞を取り出して、混合するということです。つまり、100ccの幹細胞脂肪注入をする場合には、その倍の200ccの脂肪吸引が必要であるということなのです。また、吸引した脂肪は、麻酔薬・生理食塩・血液などが混入しています。それらを遠心分離して、脂肪組織のみを取り出さないと、脂肪注入には使用できません。実際、このように脂肪組織のみを取り出すと、脂肪吸引した脂肪のうち、注入に使用できるのはその半分くらいです。
まとめると、幹細胞脂肪注入を行うには、原法に従えば、注入したい脂肪の、最低4倍の量の脂肪吸引が必要と言うことになります。これでは、脂肪の少ない患者さんは、豊胸術の場合には、絶対的に吸引する脂肪が不足します。そこで、前回までの話にあった、成長因子の登場です。

「再生医療についての感想 9」への1件の返信

  1. k より:

    成長因子が大きな役割を担っているんですね。

現在コメントは受け付けていません。