長期経過(9か月)観察(ヒップ+太もも)

強力脂肪溶解注射を、ヒップと太ももに注射して、約9カ月経過したモニターさんです。強力脂肪溶解注射は、各箇所に付き、1回のみの注射です。
脂肪溶解注射には、大きく分けて、2つのタイプがあります。一つは文字通り、脂肪のみを溶解して、脂肪細胞を小さくする注射、そしてもう一つが、脂肪細胞の集まりである、脂肪組織ごと破壊してしまい、脂肪細胞は消滅してしまう注射です。
当院の強力脂肪溶解注射は、言うまでもなく、後者の脂肪細胞を消滅させてしまうものです。したがって、脂肪溶解注射と言うよりも、正確には脂肪破壊注射といったほうがいいかも知れません。その場合、一度破壊された脂肪は、再びそこに脂肪細胞をつくることは非常に稀で、体重を維持している限りは、処置を受けたところは、脂肪が少ない状態を永久に保つことができます。
しかし前者の、脂肪細胞を小さくするだけの注射の場合には、効果が一時的なものでしかありません。つまり、体重を維持していても、小さくなっただけの脂肪細胞が、再びその中に中性脂肪を蓄えて、元のサイズへと戻っていきます。
脂肪細胞は、余ったカロリーを中性脂肪という形でその中に貯蔵する、いわゆるカロリーのタンクの役割を担っています。通常の脂肪溶解注射は、タンクの中身を減少させるのが多いのですが、当院の強力脂肪溶解注射は、タンクごと破壊してしまって、貯蔵するところをなくしてしまいます。


余分な皮下脂肪を取り去る方法としては、当院では、脂肪吸引、プラズマリポ、脂肪溶解注射があります。それぞれ、特徴がありますが、脂肪溶解注射の利点と言えば、術後の生活制限がほとんどないことです。
注射を受けた当日は、どうしても、入浴はシャワーのみにしていただいています。しかし、翌日からは、浴槽に入っていただいても全く構いません。ただし、長湯は腫れを助長しますので、あまりお勧めできません。飲酒についてですが、やはり、長湯と同様に、腫れを助長しますので、できれば術後1週間、控えていただいたほうが得策かと思います。激しいスポーツに関しても同様です。しかし、長湯にしても、飲酒・スポーツにしても、一時的な腫れの問題のみで、それが、最終的な注射の効果を左右するものではありません。その他の生活制限については、特に制限がありませんので、この、強力脂肪溶解注射は、比較的手軽に受けていただけるものと考えています。

再び、強力脂肪溶解注射の術後の経過についてです。当院の強力脂肪溶解注射を受けた後の、実際の患部の経過ですが、以下のようになります。
まず、注射の処置直後から翌日にかけて、局所にむくみや腫れなどが出現してきます。また、多少の内出血も発生してきます。術後3日目になると、腫れやむくみは次第に退き始めます。しかし、この腫れに退きについては、ゆっくりと退いてきますので、腫れが出ると目立つ部分(顔面など)は、腫れが退いてしまったと感じるまでに、約2週間を要する場合があります。
この腫れが退いてしまってからが、破壊された脂肪細胞の吸収が、本格的に始まるのです。したがって、少し注射の効果を感じ始めるのに、術後約1カ月の期間が必要となります。そこから、約3カ月かけて、破壊された脂肪はゆっくりと吸収され、少しづつ効果が出現してきます。
以上が、当院の強力脂肪溶解注射の、平均的な術後経過となります。しかし、やはり人体の薬物に対する反応は、患者さん全員が一律と言うわけにはいきません。中には、次回の記事のように、強烈な反応を示し、効果の出現までの経過が平均的ではない方もいます。

注射に対して、強烈な反応を示してしまう方の場合には、やはり、初期の腫れや内出血などの症状が強く出ます。そして、その反応が比較的長く続き、注射した個所が硬く変化します。その間、術後約2週間から4週間。その後、3から6カ月かけて、硬く変化したところも柔らかくなり、本当の効果が表れてきます。
症例数延べ約1000人を超えた当院の強力脂肪溶解注射ですが、このような強烈な反応を起こす方は、確率的には、およそ2%弱と言ったところです。つまり、50人に一人。
このような症状に見舞われた方は、たしかに注射した初期の段階では、腫れが強いし、なかなか退かないといった、不安かつ困難な状況になります。しかし、術後の長期経過を観察すると、通常の経過を辿った方よりも、効果が強力に出現する傾向があります。考えてみればこれは当然のことで、薬剤に対する反応が強烈であるということ、即ち、脂肪が大量に溶けてなくなっているということだからです。このような、注射に対して強烈な反応を示すかどうかと言うことは、残念ながら、術前に知ることができるような検査などが、ありません。したがって、もし、このような強烈な反応に当たってしまった場合には、腫れなどの症状を抑える対症療法を行いつつ、経過を観察します。そして、効果は通常よりも強力に出現するのだということを期待して、体重維持を心がけつつ、時間とともに症状の軽快を待機していただいています。

脂肪溶解注射には、実は2種類のものがあるのをご存知でしょうか?
一つは、脂肪細胞そのものは破壊せず、脂肪細胞の一つ一つを小さくする注射です。これは、脂肪細胞から脂肪を外に出してしまったり、代謝を亢進させて、脂肪細胞のサイズを小さくします。
もうひとつは、脂肪細胞そのものを破壊し、脂肪組織全体としてサイズを小さくする注射です。脂肪細胞を死滅させて、その残骸が吸収されるのを待ちます。当院の強力脂肪溶解注射は、この、破壊系の脂肪溶解注射の強力版です。
簡単に言うと、前者は燃焼系の脂肪溶解注射、後者は破壊系の脂肪溶解注射ということができます。では、どちらのほうがいいのかということですが、効果の持続の事を考えれば、破壊系の注射のほうがいいということになります。その効果は、ほぼ永久ということができるからです。
それは、脂肪細胞の数は、成人した後には大きく変化することがないからです。一度破壊されて、なくなってしまった脂肪細胞は、それが再生するためには、一般的には体重の25%近くの増加を必要とすると言われています。体重が50kgの人は62kgに、40kgの人は50kgにならないと、再生しないのです。しかし、考えてみれば、10kgの体重増加というのは、女性にとっては悪夢に近いものではないでしょうか?普通は、その前に、ダイエットを開始することでしょう。

もともとの体重の25%近く肥満した時の脂肪の再生は、当院の強力脂肪溶解注射や脂肪吸引などで脂肪を無くした所だけではありません。全身の脂肪組織に及びます。つまり、おなかの処置を受けて、その部分の脂肪を減らしたとします。そこから体重の25%肥満し、お腹の脂肪組織の中の、脂肪細胞の数が元に戻るほど再生したとします。すると、処置を受けていない太ももや二の腕など、お腹以外のところの脂肪細胞も、増加してしまうのです。

20年くらい前までは、「脂肪細胞の数は、4歳くらいまでは増加するが、その後は増えない。」と言われてきました。そしてその後、10年くらい前から、「脂肪組織は思春期が終わると増えない。」つまり、「幼児期と思春期に、脂肪細胞の数が増加する。」というのが定説になりました。しかし、近年、再生医療の研究が進歩し、脂肪組織由来の幹細胞の研究が盛んになると、「脂肪細胞は増やそうと思えば一生、増やすことができる」ということが分かったのです。では、「どうすれば脂肪細胞の数を増やすことができるのか?」ということですが、もちろん、脂肪組織の中の幹細胞を使用して、それをある一定の環境下で培養すれば、脂肪細胞に変化して、増殖させることができます。しかし、ここで問題なのは、人体の中で脂肪細胞の数を増やすには、どうすればいいかということです。それは、やはり体重を増加させることです。

体重を増加させるといっても、ある程度までであれば、脂肪細胞の数は増加することはなく、一つ一つの細胞が、その細胞質に中性脂肪をたくさん貯留させることで大きくなって、脂肪組織の体積を増加させるに過ぎません。しかし、体重の25%といった具合の、大きな体重増加に遭遇すると、脂肪細胞の集まりである脂肪組織の中にある、脂肪組織由来幹細胞が分化と増殖を開始して、脂肪細胞の数を増加させます。脂肪細胞を、中性脂肪を蓄えるためのタンクであると考えると、もともと存在するタンクがすべて満杯になった後に、タンクが増設されるということです。
つまり、「激太り」すると、脂肪細胞の数は、どの年齢であっても、増加してしまうということです。逆に言うと、そのような高度の体重増加がなければ、一度減少させた脂肪細胞の数は、増加することはないのです。
このような、脂肪細胞の数の増加は、強力脂肪溶解注射や脂肪吸引などで脂肪を減少させた箇所だけに起こる現象ではありません。全身に対して、平等に発生します。中性脂肪貯蔵タンクは、全身に平等に配置されるというわけです。したがって、体重を元に戻せば、どんなに肥満した後であっても、脂肪を減少させる処置を受けた後の状態を取り戻すことができます。しかし、貯蔵タンクである脂肪細胞の数が増加していますので、太りやすくなっている可能性は否定できません。脂肪吸引や強力脂肪溶解注射を受けた後でも、安心して体重維持をおろそかにしないほうがいいのは、このためです。