膝周辺の強力脂肪溶解注射

強力脂肪溶解注射を膝の上と内側に行ったモニターさんです。写真は術前と術後3か月経過したものです。もちろん、強力脂肪溶解注射ですので、処置は1回のみです。

膝上やひざの内側の皮下脂肪層を少なくすることで、脚の形が全体的によくなります。全般的に、膝の上の脂肪を気にする方は多いのですが、意外と見逃されているのが、膝の内側です。ここの部分は、自分で脂肪をつまんでみることが稀だからです。しかし、足全体のシルエットを見ると、この部分が飛び出しているかどうかで、脚線の美しさに大きな影響を及ぼします。また、スカートを穿いた時には、みなさんがよく気にする太ももの内側以上に脚を太く見出てしまう部分でもあります。膝の内側は、大腿骨の膝関節部分の突起があるため、どうしても飛び出して見えやすいところではありますが、その上に皮下脂肪が乗っていると、ますますその形上の変形が目立ってしまいます。このように、膝の内側と言うのは、結構見落とされている美脚ポイントでもあるのです。


しかも悪いことに、膝の上と膝の内側のような、膝周辺の皮下脂肪は、年齢とともに多くなってくるポイントでもあります。

人間の皮下脂肪は、皮膚ほどではありませんが、たるみの原因となり、加齢とともに上のほうから下のほうに沈着しやすくなります。この現象は、顔面だけでなく首から下の体の部分にも言えることです。したがって、お腹については年齢とともに下腹が出っ張ってきます。そして太ももについては、膝の上などの膝回りの皮下脂肪が厚くなってくるのです。
これらの現象の原因としては、やはり、皮下脂肪組織内の、脂肪細胞を支えている繊維状の組織の緩みであると考えられます。脂肪組織は脂肪細胞のみでできているのではなく、脂肪細胞がいくつか集まってコラーゲンを主体とした膜によって取り囲まれ、一回り大きな粒を形成しています。そしてその粒がまたいくつか集まり、膜に囲まれるといった具合に、それを何回も繰り返していって、脂肪組織を形成しています。この、脂肪細胞とともに脂肪組織を形成しているコラーゲンの膜は、大きなものになると脂肪組織内を繊維状に走行しているように見えます。そこで、この脂肪組織内の繊維状の構造物に緩みが生じると、脂肪組織はその弾力性を失い、重力に抵抗できず、下に下がってしまうのです。

このような、脂肪組織の中の脂肪細胞以外の構造物、つまりこの場合は脂肪細胞をあつめて包んでいる膜のことなのですが、こういった、組織の中で細胞以外の構造物を、細胞外マトリックスと言います。

細胞外マトリックスは、再生医療の世界では、iPS細胞やES細胞、脂肪由来幹細胞などの組織の再生にかかわる細胞とともに、非常に注目されているものであります。この細胞外マトリックスは、「細胞の足場」と呼ばれるように、幹細胞などの再生細胞がその部分でそれぞれの種類の細胞に分化し、そしてそこで生きていくために必要な構造物です。その働きとしては、細胞がバラバラにならないように、文字通り足場としての役割なのですが、細胞に必要な酸素や栄養素を、細胞に供給する働きもあります。また、それら細胞に供給する物の量を調節したり、そのためにそれらを蓄える働きも持っています。反対に、細胞から排出された不要な物質を取り去る働きを持っているのも、この細胞外マトリックスなのです。したがって、組織を構成する細胞にとって、この細胞外マトリックスはなくてならない物であることはもちろん、その組織の細胞外マトリックスの性質に応じて、細胞も分化増殖して組織の再生を行うのです。皮下脂肪を減少させる処置は、様々な方法があるのですが、脂肪溶解注射を含め、それらの方法において、この細胞外マトリックスをどのようにとらえて方法を選択するかが、処置の効果や効果の持続性に大きく関与してくるというわけです。

これまでの脂肪溶解注射については、この脂肪組織内の細胞外マトリックスの存在を無視するかのように、脂肪細胞に対してのみ、薬効を追い求めてきたものでした。

しかし、いくら脂肪細胞に強力に作用する薬剤を使用したとしても、その効果は細胞外マトリックスに妨害され、その後は細胞外マトリックスの働きで脂肪が再生しやすく、その効果は限定的となります。現在の脂肪溶解注射は、脂肪細胞に作用する主成分としては、フォスファチヂル・コリンを含んでいるのが主流です。フォスファチヂル・コリンの薬効は、皆さんご存知の通り、脂質の集まりである細胞膜に作用して細胞膜に穴をあけ、そしてそれが脂肪細胞の場合には、細胞の中の中性脂肪を水溶性(水に溶ける)ようにして、脂肪細胞そのものにダメージを与えます。しかし、このフォスファチヂル・コリンが脂肪細胞に届くまでには、脂肪細胞を集めている膜様の袋と言う形で存在する、脂肪組織の細胞外マトリックスに妨害されます。そしてフォスファチヂル・コリンは、脂肪細胞にはほんの少ししか到達できないということになってしまいます。これが、これまでの通常の脂肪溶解注射が少なくとも3回以上の処置が必要であった大きな理由です。そこでフォスファチヂル・コリンが、この細胞外マトリックスを通過しやすくなるように、薬剤の配合を変えたのが、当院の強力脂肪溶解注射なのです。

強力脂肪溶解注射はその中の、脂肪細胞に働いて脂肪組織を溶解する作用のあるフォスファチヂル・コリンが、脂肪細胞により多く到達できるように工夫がなされています。

その、脂肪細胞により多くのフォスファチヂル・コリンが到達するように工夫を行ったのは、実は当院では、欧米人と日本人の脂肪溶解注射に対する、脂肪組織の反応の違いにいち早く気付いたことが発端でした。様々な脂肪溶解注射に関する文献(論文)を蒐集してみると、同じ薬剤の配合を行っても、日本人のほうが欧米人よりも脂肪溶解注射の効果が劣っているということが分かってきたのです。それは、初期のうちは食生活の違いによる脂肪代謝の違いが原因だと思われてきました。しかし、それであれば、脂肪の代謝を亢進させる薬剤の添加によって、日本人でも欧米人と同じように効果の増強が望めるはずです。しかし実際は、フォスファチヂル・コリンに様々な脂肪代謝に関する薬剤を添加した場合、欧米人にはフォスファチヂル・コリンの効果を増強させることができるのですが、日本人にはそのような添加薬剤は、全くと言っていいほど無効でした。これは欧米人と日本人の、フォスファチヂル・コリンを主体とした脂肪溶解注射に対する反応の違いが、脂肪組織自体の構造の違いからくるものだからです。

実際に欧米人の脂肪吸引手術を行っていると、日本人に比べて脂肪組織が柔らかく、非常に「もろい」ということが分かります。日本人の脂肪組織をコンニャクだとすると、欧米人のそれは、豆腐のような感じです。

この脂肪組織の柔らかさと「もろさ」というのは、脂肪吸引の手術操作自体は非常に行いやすいということです。そしてさらに、フォスファチヂル・コリンを脂肪溶解作用のある薬剤の主成分とした脂肪溶解注射が、より効果を発揮するということでもあります。それは、脂肪組織の「もろさ」=「弾力性のなさ」というのが、脂肪組織内の細胞外マトリックスの少なさでもあるからなのです。脂肪組織内の細胞外マトリックスは、その形としては、脂肪細胞を順番に集めて包んでいる膜です。この膜には弾力性があり、弾力性があるがゆえに、脂肪組織が外力を受けても、脂肪細胞の位置が変化せず、変化してもすぐに元に戻って、簡単に変形しないようになっているのです。また、脂肪組織が加齢や重力によって、体の下のほうに移動しないように支えているということもできます。この膜状の細胞がマトリックスが、欧米人の皮下脂肪組織には少ないのです。これが、フォスファチヂル・コリンを主成分とした脂肪溶解注射が、欧米人にはよく効果を発揮する理由であり、また、日本人には効果が少ない理由でもあるのです。そして、そこに注目し、細胞外マトリックスの膜を通して、フォスファチヂル・コリンをはじめとする脂肪溶解成分が、脂肪細胞に大量に届くのが、当院の強力脂肪溶解注射なのです。