二の腕および、背中から腋にかけで、強力脂肪溶解注射を他の症例同様1回のみ、注射を受けたモニターさんです。夏に「ノースリーブを着た時に、腕が出せるように」との希望で、処置を受けました。年齢的には30歳を過ぎているのですが、その場合、腕だけではなく、腋や背中にも脂肪が沈着している場合を多く見かけます。その場合、腕を水平に挙げたり、手を腰に当てて腋を開いた場合には、そんなに太い腕との感じはなくても、腕を下した途端、腕の幅が大きく膨れて、横から見ると太い腕に変わってしまいます。特に腕の肩に近い部分が太く膨れてしまい、長袖のブラウスを着用すれば目立たないが、長袖のスリムフィットのT-シャツや、半袖・ノースリーブを着用すると、途端にたくましく変身してしまう状態になります。これは、腋や背中の脂肪が、腕の脂肪を横向きに押し出してしまうからです。したがって、その場合には、より大きな効果を狙うとすれば、腕の脂肪と同時に、わきの下と背中の脂肪を減少させる必要があります。
また、このような現象(手を腰に当てて、腋を開いた状態では細いが、気を付けをすると、途端に太い腕になる現象)は、年齢とともに大きくなってきます。若いころにはもっと体重があった、あるいは若いころと体重は変わらないというのに、最近腕が太くなってきた気がするというのは、まさにこの理由によるものです。では、どうして加齢とともに、このような現象が強く出るようになってくるのでしょうか?それにはいくつかの理由があります。その中で主なものは、次の3つになります。一つ目は皮膚のたるみ。2つ目は脂肪の下方向への移動(下垂)。3つ目は脂肪の質の変化です。
1つ目の皮膚のたるみについてですが、これは、ジャケットやコートの袖を思い出していただくと分かりやすいでしょう。袖周りのゆったりしたジャケットやコートは、横から見ると腕の部分が太く見えます。逆に、袖周りがタイトなものは、横から見ても腕は細いままです。これらと同じことが人体にも言えます。皮膚のたるみがある状態は、袖周りのゆったりとしたジャケットやコートと同じ状態なのです。そうすると、腕を気を付けの姿勢におろしたときには、容易に脂肪が腕の前後に押し出され、腕を太く見せます。逆に、皮膚のたるみがない状態だと、脂肪が押し出される余裕があまりないため、腕の前後幅はあまり変化せず、腕を体の両側に下しても、腕は細いままなのです。当然、脂肪溶解注射では皮膚のたるみを大きく改善させることはできません。しかし、押し出される脂肪を減少させることができますので、腕の太さの改善に役立つのです。
次に2つめの脂肪の移動についてです。人間の脂肪は皮膚とともに、加齢によって下に下がってきます。これは、筋肉の上にある筋膜から真皮にかけて、脂肪組織内を網目状につながっている繊維状の組織が、年齢とともにゆるんでくるからです。この組織がゆるむと、脂肪は支えを失うのと同じ状況になり、皮膚とともに体の上から下方向へと移動してしまいます。この移動が腋や背中に発生すると、ちょうど腕の脂肪と体幹の間に入ってしまう形となり、腕の脂肪を前後に押し出してしまうのです。特に、後方へ押し出すことが多いようです。つまり、腋の脂肪は元々腋の奥深くに格納されていたのですが、それを支える繊維が緩んで伸びてしまうことによって、下の方にはみ出してきて、それが、ちょうど腋の間に挟まるような形となり、腕の脂肪を前後に押し出してしまうというわけです。
脂肪の質の変化と言うのが、第3の原因です。この「質の変化」ですが、具体的には硬さを失うということです。脂肪組織は年齢とともに柔らかくなります。柔らかくなるとは、粘凋性を増す~粘り気が多くなるということです。脂肪吸引の手術をたくさん手がけると分かるのですが、若い年代の方ほど、脂肪が「サクサク」と吸引できます。このサクサク感は、粘凋性が少なくてしっかりと脂肪が詰まっていて、ある程度の硬さがないと感じることができません。このような脂肪の状態を皮膚の表面から見ると、「プルプル」といった表現がぴったりです。それに反して年配の方の脂肪は、脂肪吸引の際には「ねっとり」といった感覚で脂肪吸引できます。これは、吸引管の先端に吸い付いた脂肪組織が、吸引管に引っ張られて伸ばされる感覚を伴っています。つまり、粘凋性があり、硬さは減少している状態です。皮膚の表面からの感覚としては、「ペタペタ」という表現でしょう。これらの脂肪組織の質の変化は、前述の「脂肪組織内を網目状につながっている繊維状の組織」が、脂肪組織が成長してから長い年月をかけて増殖した結果、もしくは、それらが肥満によって伸ばされた状態で成熟した結果なのかもしれません。どちらにしても、粘凋性を増して柔らかくなった脂肪組織は、言うまでもなく、腋に挟まれた、下垂してきた脂肪によって容易に押し出され、二の腕を太く見える形に変形させてしまうようになるのです。
当然のことながら、脂肪組織は脂肪細胞のみで構成されているわけではありません。したがって、3番目の腕が太くなってくる原因の脂肪の質の変化と言うのは、前述のように、2番目の原因である脂肪の下垂の元となる、脂肪組織内を網目状につながっている繊維状の組織が、年齢とともにゆるんでくることとは、密接に関係しています。そして、1番目の原因である皮膚のたるみが、脂肪が押し出されて移動するスペースを提供することで、より腕の太さが強調されてしまうのです。また、若い頃から皮下脂肪を多く貯めこんでおくことによって、その圧力によって皮膚が伸ばされ、年齢とともに出現する皮膚のたるみを作りやすくしてしまうといった側面もあります。つまり、これらの3つの原因は、一つ一つ独立した要素ではなく、お互いに影響し合って相乗的に働き、複雑に絡み合って腕を太くしていくのです。したがって、「私の場合はどれが原因ですか?」と言う質問に対しては、「すべてです。」とお答えするしかありません。
しかしながら診察をすれば、「私の場合には、どの要素が一番の原因ですか?」という質問にはお答えすることができます。これまでの記述から凡そお分かりかと思いますが、一般的に年齢が若いほど3番目の原因要素が強く働き、年齢が高いほど1番目の原因要素が強く働きます。強力脂肪溶解注射の場合には、1番目の原因要素の皮膚のたるみには無効ですが、2番目の原因である下垂した腋の脂肪と、それによって押し出される腕の脂肪を減少させることができます。また、一般的に脂肪溶解注射が効きにくいとされている繊維が多い脂肪組織にも十分な効果を発揮しますので、3番目の原因についても問題なくクリアできます。このように、当院の強力脂肪溶解注射は皮膚のたるみ以外の原因要素について十分な効果を発揮することで、年齢とともに太くなってきた二の腕に対しても改善が可能になったのです。
では、皮膚のたるみに対してはどのような治療を行えるのでしょうか?これについても様々な治療法があります。いくつか治療法を列挙すると、アームリフト、表層脂肪吸引、プラズマリポ、イントラセルなどがあります。
これらの中で一番強い効果があるのは、アームリフトです。アームリフトとは、簡単に言うとフェイスリフトの腕版です。余った皮膚を取り除くことが、この手術の本体です。当然ですが、切開します。
次に効果が高いのが表層脂肪吸引とプラズマリポです。しかし表層脂肪吸引は、非常にテクニック的に難しいものがあり、世界的にもこれを行う医師は南米に数名いるだけです。表層脂肪吸引に関しては、1990年代にイタリアのガスパロッチ氏が提唱した脂肪吸引の一つの方法ですが、アメリカに伝わり2000年代にたくさんのトラブルが発生しました。具体的には、皮膚の壊死(皮下血管網の障害が主原因)、修正不能な凹凸(カニューレの選択と手技が主原因)、皮膚のしわ(不均等吸引と術後の管理の不手際が主原因)などです。そして、ついにこの表層脂肪吸引を行う医師は、アメリカ本土にはほとんどいなくなり、絶滅危惧種並みに南米に少数が残るのみとなりました。そこで、当院では表層脂肪吸引よりも安全で効果が高い方法として、プラズマリポを採用しています。プラズマリポの場合には、そのプラズマ光の性質から、皮膚の直下にファイバーを進めても皮膚や皮下血管網へのダメージがなく、しかも強力に皮膚のタイトニング効果を獲得できます。
そして最後にイントラセルなのですが、これは真皮に直接高周波電流を送り込むものです。サーマクールやその他の高周波(RF)機器とは違い、真皮に直接高周波電流を送り込むため、その効果は他の機器よりも相当大きなものとなっています。顔に使用すると、半年かけてニキビ跡やしわ・たるみなどを劇的に改善してくれます。これを腕に使用した場合も、同様に皮膚を引き締める作用を強く発揮し、まったくの無切開で皮膚の余りを改善できます。
以上のように「腕を細くしたい」と言うとき、何が主原因で腕が太くなっているかを診断することが、より大きな効果を発揮させるためには重要なこととなります。しかし、どれが主原因であっても、根幹をなすところはやはり皮下脂肪の厚みですから、どうしても手術はしたくないという場合には、まず強力脂肪溶解注射を受けることは、理にかなっているわけです。その場合、30歳を超えたら腋の脂肪のことも担当医によく相談した方がいいでしょう。この腋の脂肪は運動やダイエットでは、なかなか効果が得られません。なぜなら前述のように、太ったためについた脂肪ではなく、腋の中に格納されていた脂肪が、下がってきた(移動してきた)脂肪だからです。またこの部分は、運動をするときに使用する筋肉がありません、前方には大胸筋、後方には僧帽筋がありますが、わきの下そのものの位置には筋肉がないのです。したがって、運動によってこの部分の脂肪をなくすということは、体重を維持したままであればほぼ不可能と言うことになります。一昔前までは、この部分の脂肪をとるには脂肪吸引しか方法がなく、普通の脂肪溶解注射も、ご存じのとおり効果が期待できませんでした。しかし、当院の強力脂肪溶解注射なら、しっかりと効果を出すことができます。
腕に限らず、ボディーの皮膚のたるみを運動して引き締めるといった、間違った知識が蔓延しています。はっきり言って、運動や筋トレでは皮膚は引き締まりません。これはあくまでも、「皮膚が引き締まったかのように見える」ということです。運動や筋トレをすると筋肉が太くなります。また、筋肉の近くの脂肪が燃焼して、脂肪組織のサイズが小さくなります。筋肉は脂肪組織よりも硬いので、筋肉が太くなり脂肪層が薄くなると、触った感じとしては腕が硬くなり、ぽちゃぽちゃした感じが少なくなります。これが皮膚が引き締まったように見える原因です。しかし、腕の太さそのものは変化せず、場合によっては筋肉がついた分、計測上は腕が太くなります。また、皮膚は全く縮んではいませんので、腕が太くならなかった場合には、皮膚のたるみはそのままで、まったく効果がありません。このような無駄な努力をするのではなく、腕を細くしたいという場合には、脂肪吸引やアームリフトなどの手術的な方法をとるか、強力脂肪溶解注射を受ける方が、早く確実な解決法となります。