徹底的にお腹回りを強力脂肪溶解注射

強力脂肪溶解注射を、腹部全体に1か所につき1回のみ注射したモニターさんです。具体的な個所は、上腹部・下腹部・両ウエスト・両ウエスト後面・腰と、いわゆるお腹回り全部を裏表1周しています。皮下脂肪の減少によって、へその形が少し縦長になったのと、下腹部から押し上げられて、位置が上にあったおへそが、下に移動したのがわかると思います。強力脂肪溶解注射の場合には、このように、何回も同じ個所に対して処置を行わなくても、1か所につき1回の注射で、かなりの皮下脂肪の溶解が可能です。
どうして、このように強力な脂肪溶解作用があり、他院では3回から6回の注射が必要なほどの脂肪の量が、1回の注射で十分なのか、疑問に思うかもしれません。当然のことですが、それはやはり、混合している薬剤の種類と、それらの配合量が違うからです。では、どのような理論に基づいて、薬剤の配合がなされているかと言うことです。


まず、皮下脂肪組織に注射された薬剤は、脂肪細胞などの細胞や、細胞間マトリックスと呼ばれる細胞と細胞の間を埋めている物質の隙間に入っていきます。薬剤は、そこにとどまっているときに、脂肪細胞と接触して脂肪細胞を破壊し始めます。薬剤は、接触した脂肪を破壊してしまうと、その隣の脂肪を破壊します。このようにして次々と順番に、接触した脂肪を破壊していくわけですが、それが無制限に続くわけではありません。破壊した脂肪組織の成分と、注射された薬剤成分が混ざり合い、薬剤はその濃度が薄くなっていきます。このような薬剤に関しては、その薬効を発揮するためには、ある程度の濃度が必要なので、脂肪細胞をある程度破壊した後は、薬効を失うのです。そうすると、脂肪溶解注射の脂肪溶解作用はそこでストップします。さらに、皮下脂肪に注射された薬剤は、注射された瞬間から少しづづ、リンパ管や血管の中に吸収され始めます。このこともまた、局所での脂肪溶解注射の薬剤濃度を低下させていくことになり、脂肪溶解作用をストップさせる要因となるのです。

このような、脂肪溶解注射に限らず、皮下注射の薬液の脂肪組織内での動態を、基礎医学的考察から掘り下げていくと、脂肪溶解注射の作用をより強力にするには、どうすればいいかが、見えてきます。脂肪細胞を破壊した後に希釈される薬剤については、薬剤の濃度をそれなりに高くして注射すれば、解決します。高い濃度の薬剤は希釈されても、薄い濃度の薬剤よりも効果を発揮する時間は長くなり、それだけ多くの脂肪を溶かすことができます。これは比較的簡単なことで、誰でも考えることができることだと思います。しかし、もう一つの、リンパ管や血管の中への吸収については、もう少し深い考察が必要です。

リンパ管や血管の中への吸収については、それらの構造から考える必要があります。そもそも、管状の形態をしたものの中に、物質が吸収されるということが、不思議に感じないでしょうか?たとえば、水道の蛇口をひねると、浄水場を出るときの品質の水が出ます。もし、そうならない場合には、水道管に穴が開いていて、何かが混ざっているということになります。血管の場合、心臓から出るときと帰ってくるときでは、その中の物質の構成が違います。リンパ管も同じです。つまり血管やリンパ管には、穴が開いているのです。当然のことながら、太いところに大きな穴が開いているわけではありません。もし太いところに大きな穴が開いている場合には、血管の場合は血腫、リンパ管の場合にはリンパ水腫といった状態になってしまいます。穴が開いているのは、それぞれの末端の非常に細くなった所、血管なら毛細血管で、しかも、大きな分子が通らないくらいの、非常に小さな穴です。また、血管の場合には、何らかの条件で一時的に血管が引き締まって細くなると、それらの穴も小さくなってしまいます。したがって、注射する薬剤について言えば、その中に血管を引き締めて細くする薬剤を混合しておくことが大切だということです。そうすることで、毛細血管の穴を小さくすることができ、そこからの薬剤の吸収を抑えることができます。具体的には、エピネフリンを混ぜておくことが、脂肪溶解効果を大きくするのに重要だということです。

このように、注射する薬剤の濃度を高くして、エピネフリンを混合することで、より効果を高めた強力脂肪溶解注射なのですが、さらにもう一つ、脂肪溶解効果を高める工夫がなされています。
脂肪を溶解するには、脂肪細胞が脂肪溶解注射の成分に接触していないといけません。脂肪細胞が注射の成分から離れたところにあれば、脂肪を溶かすことができません。つまり、より多くの脂肪細胞と脂肪細胞の間に、薬液がしみ込んでいかなくてはいけないのです。そこで、当院の脂肪溶解注射は、この脂肪細胞と脂肪細胞の隙間の通りを良くしてやる薬剤を添加しています。この薬剤の効果によって、脂肪溶解成分は脂肪細胞と脂肪細胞の間をスムースに拡散していき、より多くの脂肪細胞を破壊するに至るのです。

脂肪溶解注射に含まれている薬剤が脂肪を溶解する作用は、分析科学的に表現すれば、化学反応です。化学反応には必ず「反応時間」というものがあって、ある物質とある物質が化学反応を起こすときには、反応の開始から反応の終了まで、ある程度の時間を必要とします。脂肪溶解注射の場合には、この反応時間の間、十分な濃度の脂肪溶解剤が溶解したい脂肪組織に留まっていることが必要です。このためには、前述したように十分な高濃度の脂肪溶解剤を使用することや、エピネフリンを混合して毛細血管への吸収を抑えることはもちろんですが、注射の際のテクニックも重要なことになります。具体的には、一つの注射箇所に対して、十分な量の脂肪溶解薬の注入が必要であるということです。注射する箇所どうしの距離をあまり大きく開けると、注射する総量が同じでも、効果が薄くなります。これは、脂肪組織内の薬液濃度が早く下がりやすいためです。薬液濃度が早く下がってしまうと、脂肪溶解という化学反応が最後まで終了する前に、その個所から薬剤がなくなり、それ以降は脂肪溶解という化学反応が行われないようになるからです。そうすると、脂肪溶解注射の効果が十分に発揮されず、「効果がない」といった結果になってしまうわけです。