下腹部の強力脂肪溶解注射を受けたモニターさんの横からの写真です。もちろん、注射は1回のみです。
全体的にやせ型の女性なのですが、「なぜか下腹部だけが、出っ張っている」とのことで、脂肪溶解注射を希望されました。女性の場合、30歳以降になると、下腹部の希望者が多くなります。理由は定かではないのですが、やはり、出産を経験して、一度太り、ダイエットしたものの、下腹部だけ、脂肪が取れないといった方が多いです。そして、彼女たちの脂肪の性質は、繊維質が多いという特徴があります。つまり、脂肪そのものは、ダイエットによって小さくなったのですが、繊維質の部分が、十分なダイエット効果を出すのを邪魔している状態であるといえます。このような、繊維質の多い脂肪組織でも、強力脂肪溶解注射の効果は、十分に発揮できます。
どうして、下腹部は皮下脂肪がつきやすくて、ダイエットに反応しにくいんでしょうか?その謎を解くカギは、脂肪由来幹細胞にあります。
脂肪組織には、脂肪細胞のほかに、少量ですが、幹細胞が含まれています。この幹細胞を、脂肪由来幹細胞と言います。幹細胞は、幹細胞を含め、いろいろな細胞に分化する性質があります。当然、脂肪細胞にも分化し、増殖します。下腹部の皮下脂肪には、この、幹細胞が、体のほかの部分よりも多く分布しています。そして、その幹細胞は、体重がおよそ15%以上増加すると増殖し、脂肪細胞や、その他の脂肪組織を形成する細胞に分化するといわれています。つまり、思春期までに決まっていたはずの脂肪細胞の数が、激太りをすると、下腹部など、幹細胞が多数あるところに関しては、増加してしまうのです。また、脂肪細胞だけでなく、脂肪細胞を支える、脂肪組織の中の血管や繊維の細胞も、増加します。だから、幹細胞が多い、下腹部の脂肪組織は、ダイエットに反応しにくいというわけです。
そして、ダイエットをした後も、脂肪細胞はサイズダウンするにもかかわらず、血管や繊維の細胞はサイズがそのまま残るので、繊維質の多い、いわゆる「弾きのある」脂肪組織として、残ってしまうわけです。
体重が15%以上増加すると言うと、非常に、非現実的な印象を持つと思います。体重50kgの人で、7.5kgの増加です。しかし、女性の場合は、現実的に、これが起こります。
それは、妊娠・出産なのです。妊娠すると、女性の体は、ホルモン環境を総動員して、胎児を育てようとします。そして、その作用は、子宮の周辺にも及び、下腹部や腰回りの幹細胞に働き、脂肪組織を増加させます。それが、出産後の体型の変化に、大きく作用するのです。妊娠前に、脂肪吸引などで、脂肪細胞と一緒に幹細胞を減少させておくと、出産後の体型の変化も、少なくて済むのですが、現状の体型に不満がなければ、それだけの目的では、なかなか手術に踏み切れなかったりします。この強力脂肪溶解注射は、幹細胞の減少もある程度は期待できますので、一つの選択肢としてもいいかもしれません。
どちらにしても、母は、偉大です。
では、強力脂肪溶解注射は、量にしてどのくらいの脂肪組織がなくなるのでしょう?
これは、私が自分のお腹で試してみて、概算で算出した数値ですが、1か所(約10X10cm)の範囲で、約100gと推定しています。したがって、1か所の脂肪溶解注射を受けた方は、100g体重が減少しているはずです。
つまり、脂肪溶解注射の効果として、注射を受けた個所に効果を持ちつつ、しかも、注射を受けていない個所の脂肪層の厚みを現状維持するためには、1か所の脂肪溶解注射を受けた方は、100g体重が減少していないといけないのです。10か所受けた方は、術前より1kg、体重が少ない状態で、注射を受けていない場所の脂肪の厚みが、術前と同じということになります。
この強力脂肪溶解注射を受けた方は、気になっていたところの脂肪がとれるため、どうしても、体重のコントロールに対して、気が緩みがちです。注射の効果を十分に享受しつつ、その他のところが気にならないままでいたいということなら、やはり、上記を目安とした体重維持に心がけましょう。