手術・処置の内容としては、高生着率脂肪注入と、成長再生豊胸Wを3回行っています。写真は、左上が術前、その右が高生着率脂肪注入の術後1か月、その後は順に、高生着率脂肪注入の術後3か月と、成長再生豊胸Wを3回繰り返し、最後が全ての処置が終わって3か月後の状態です。
一般的に、高生着率脂肪注入を行った後に成長再生豊胸を行うと、成長再生豊胸の効果が大きく出る傾向にあります。それは、成長再生豊胸に反応して分裂と分化を始める幹細胞や、脂肪細胞の前駆細胞である前脂肪細胞の量が、何も行っていない状態よりも、バストの中で増加しているためです。このような状態は、成長再生豊胸の効果が、その治療回数に比例するのではなく、二次関数的、つまり、治療回数が増えるほど、1回の治療効果が向上するということの、理由でもあります。そしてこちらの症例では、そのことに対する更なる傍証を与えるものであると言えます。つまり、成長再生豊胸の効果をできるだけ大きく出すという目的のためには、バストの内部に、幹細胞や前駆細胞などの分裂・分化のポテンシャルを持った細胞の量を増やすことが肝要であると言うことです。
成長再生豊胸の豊胸効果は、どうしても即効性が無いことが欠点です。しかし、高生着率脂肪注入を併用すれば、即効性を持たせることができます。
勿論、高生着率脂肪注入は、そのものが即効性のある方法だからと言うことではあります。しかし、このモニターさんのように、3カップ以上の豊胸効果を希望する場合、それを脂肪注入のみで達成しようとすると、大きな無理をしなければならず、そのことが手術のリスクを増大させてしまいます。その理由は、注入用の脂肪を採取するための脂肪吸引の手術範囲を広くしないといけないことと、バストへの注入脂肪の量を増やしてやらなければいけないことです。逆に、成長再生豊胸を併用してやると、脂肪吸引の範囲を狭くでき、バストへ注入する脂肪の量も少なくて済むと言うことです。つまり、これらのことは、脂肪注入という手術の規模を少なくできると言うことでもあり、手術そのものの一般的なリスクも低くなると言うことでもあります。
脂肪注入による豊胸術の場合、一番大きなリスクは、所謂「しこり」の発生です。
この、「しこり」の発生原因ですが、いろんな間違った情報が、インターネットに乗って出回っているのが現実です。それはあたかも、脂肪注入による豊胸術は必ずしこりが発生するというかのような論調が大勢を占めています。さらに、顔面への脂肪注入も、しこりが発生するという、間違った情報もあります。しかし、脂肪注入というものが、1970年代に脂肪吸引が始まってすぐに始められ、それが今も美容整形・美容外科の主要な技術の一つであるという事実は、これらの「しこり」の発生についての情報が間違っているという一つの証拠でもあります。では、どうして、このような、脂肪注入に関しての間違った情報が蔓延してしまったのかという疑問が湧いてくると思います。それは、一言で言えば、脂肪注入を行う美容外科医たちの技術上の問題と言うことができます。そこには、患者側の過大なる要求と、それに応えようとした心優しき美容外科医という、診療現場での、日本独特の事情も含まれます。
脂肪注入による豊胸術については、しこりの発生は大きな問題となっているのが現状ですが、その原因と言うのが、当然のことながら存在します。それは、注入の方法とその量に問題があります。
まず、注入の方法ですが、脂肪の注入に際して、通常の薬剤の注射のように脂肪を注入していることが、しこりの原因になっています。つまり、注入する脂肪の一塊のサイズが大きいと言うことです。注入された脂肪の塊が大きいと、その塊の表面の細胞は、周辺のバストの組織から十分に酸素と栄養を供給され、生き残ってバストの皮下脂肪組織と一体化します。しかし、その中心部にある細胞は、酸素と栄養の十分な供給を受けることができず、壊死に陥ります。そうすると、壊死に陥ったそれらの細胞や脂肪組織は、異物として吸収されるか、吸収が追い付かない場合には、体内でそれらを排除する作用が働きます。具体的には、それらを取り囲むようにして、コラーゲンを主成分とした膜が、カプセルを形成します。つまり、それがしこりとして検出されるようになると言うことです。したがって、脂肪注入を行う際には、注入する脂肪の一塊は、できるだけ小さくするように、丁寧に注入手技を行う必要があるということです。
そして第二の、注入量の問題ですが、これがまさに、患者側の過大なる要求と、それに応えようとした美容外科医という、日本独特の関係による落とし穴と言うことができます。
つまり、患者側の大きな豊胸効果の要求によって、どうしても大量の脂肪を注入してしまうと言うことです。欧米ではこのようなことはなく、患者の要求に対して、そのリスクを伝えてきっぱりと医師側が拒絶するか、その由、書面に記載してサインを貰う形になります。したがって、このような大量注入と言うことはその症例も少なく、しかも問題になることはありません。しかし、我が国では未だその辺をはっきりとさせた契約関係の証明にまで踏み込んでの診療契約が行われることが少なく、患者側の要求に諾々と応えようとして、大量注入を行ってしまい、脂肪注入による豊胸術は、必ずしこりができてしまうかのような、間違った情報が流布される結果となってしまいました。
バストに注入できる脂肪の量は、皮膚の伸びや元々のバストの組織の大きさによって、ある程度は限界があります。また、前述のように丁寧に脂肪注入を行ったとしても、大量の脂肪を注入すれば、脂肪の一塊は、それらの近傍の脂肪と接触する形になりやすく、結果的に大きな塊となってしまいやすい傾向にあります。したがって、バストに対する脂肪注入の際には、安全に豊胸効果を獲得するためには、注入する脂肪の量には限界があり、そのことは即ち、脂肪注入のみではやはり豊胸効果にも限界があると言うことです。そこで、注入量をできるだけ少なくして、豊胸効果をできるだけ大きく出そうということになります。その目的を達成するための方法が、高生着率脂肪注入なのですが、さらに豊胸効果を望む場合や、術後の経過を楽に過ごしたい場合には、成長再生豊胸の併用を推奨しています。つまり、脂肪の注入量が少ないと言うことは、脂肪吸引箇所が少なくて済み、手術の規模が小さいということで、麻酔の規模も少なく、術後の経過が楽だからです。さらに、バストの幹細胞や前駆細胞の数が、高生着率脂肪注入で増加している状態の場合には、成長再生豊胸の効果も大きいものとなります。