ヒアルロン酸豊胸禁止?

去る2019年4月25日、日本形成外科学会・日本美容外科学会(JSAPS)・日本美容外科学会(JSAS)・日本美容医療協会の4者連名で、非吸収性充填剤による豊胸術を禁止しました。

ここで、「非吸収性充填剤」とありますが、いったい何のことかと言うと、アクアリフトとアクアフィリングのことです。両者とも、約5年で吸収されるという触れ込みがなされていたこともありますが、事実としては、非吸収性充填剤で、吸収はされません。両方ともに、ジェル状の充填剤で、注射で胸に注入されていました。

ところで、非吸収性ジェルによる豊胸術は、ある一部のクリニックでした行われていなかったのですが、このことが、意外な注目を浴びているようです。それは、注射による豊胸とのことで、ヒアルロン酸による豊胸も含まれているのではないかと、勘違いされているからです。確かに、ヒアルロン酸も、見かけ上はジェルです。しかし事実としては、ヒアルロン酸は、吸収されるものですから、報道にある、禁止された「非」吸収性ジェルではありません。

では、なぜ、ヒアルロン酸も禁止になったとの誤解が生じたのでしょうか?それは、ヒアルロン酸による豊胸術が、以前、ヨーロッパで禁止になったからです。しかし、この禁止になった原因は、あるメーカーが発売していた、特定の製品が原因でした。この製品は、効果が長持ちするように、ヒアルロン酸の架橋度を、極限にまで向上させたものです。それをやり過ぎたため、本来、異物としての認識がなされないヒアルロン酸が、体内で異物として認識され、肉芽腫を形成する症例が頻発したのです。そこで、ヒアルロン酸を注射する豊胸術が、すべて禁止になってしまったということです。

もう一つの原因は、アメリカでは、ジェルを注入する方法での豊胸術が認められていないからです。ちょっとややこしいのですが、医療材料や薬剤の使用に際して、ヨーロッパや日本と、アメリカでは、その許認可の方式が違うのです。日本やヨーロッパは、明確に禁止されていないものなら、使ってよいのです。それに対して、アメリカでは、認可されたものしか使ってはいけません。前者をネガティヴ・リスト方式、後者をポジティヴ・リスト方式と言います。つまりアメリカでは、ヒアルロン酸は元々、豊胸用の材料ではないということです。

結論として、日本では、ヒアルロン酸による豊胸術は、禁止されていません。