PMMA入りの注入材Overview of PMMA Fillers Facts, Safety, Results, Costs

どうやら、PMMA入りの注入材(Filler)が、FDAに承認され、米国形成外科学会も使用を了承したようである。承認されたのは、Artefill(アーテフィル)という注入材。旧名はArtecoll(アーテコール)という注入材で、もともとはオランダの会社が製造していた。


当院でも、10年ほど前にはこのアーテコールを使用していたことがある。しかし、吉野家から牛丼が姿を消した、狂牛病騒ぎ以来、輸入が不可能になったので、使用を中止していた。その代り、同じPMMA入りの注入材で、コラーゲンの代りにメチルセルロースが入った注入材に変更を余儀なくされた経緯がある。以下、plasticsurgery.orgという、アメリカ形成外科学会の、アーテフィルのついての記事の要約である。
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アーテフィルは、20%のPMMAと80%のコラーゲンを混合したもの。注入後、2~3カ月で、コラーゲンは吸収され、代わりに自分のコラーゲンができる。このタイプの皮膚注入材は、ホウレイ線などの、中等度から深いシワに対して使用される。永久的な効果がほしい場合に、ヒアルロン酸やコラーゲンの代りに使用する。PMMAは、永久的な埋入材として、長年使用されてきた歴史がある。
欠点としては、
1)できるだけ良い結果を得たいなら、数回に分けて注射が必要なこと。
2)最終結果までに3ヶ月間の待機期間が必要なこと。
3)塊として、皮下に透けて見えることがある。
ということだ。
美容整形・美容外科の医師が、この注入材の注入法に精通していることが、このような副作用を防ぐために、何よりも大切なことである。PMMAは、正しい使用法で注射すれば、長期間に及ぶ(一生物の)効果がある。
つまり、一度に入れすぎないことと、皮膚の中に注射するのではなく、きちんと皮下の深いところに注射することが、副作用防止のキーポイント。注入材としては、かなり信頼のおけるもので、しかも永久的に効果を発揮できるものなのだが、いかんせん、牛のコラーゲンを含む製剤であるため、本邦への輸入は困難であろう。
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一方、顔面形成外科・美容皮膚科・顎顔面外科のDr.たちが主体の学会である、アメリカ美容外科学会American Academy(AACS)の見解としては、
参考文献は、Surge:Issue3 volume3 Sep.2010 P26~27
Atrefillの製品説明としては、直径30~50μmのPMMA粒子が体積的に20%、残りを3.5%の牛コラーゲンで、0.2%のリドカイン(局所麻酔薬)が入っている。コラーゲンが入っているので、アレルギーテストが必要であるが、アレルギーの発生は0.2%と、ヒアルロン酸の2倍ではあるが、これまでのコラーゲンの15分の一程度であるとのこと。
歴史的背景としては、3つの段階に分けられる。
第一段階は、1989年から1994年の間で、肉芽腫(グラニューローマ)の発生が2.5%あった頃である。この頃のArtefillは、Artecoll(アーテコール)と呼ばれていて、PMMAの粒子のサイズに問題があった。表向き、直径30から40μmのPMMAということであったが、実は、直径1から5μmといった粒子がそれに付着していた。これが、肉芽腫発生の原因だった。
第二段階は、1994年から2005年の間で、製造工程が見直された後のものである。前述のような小さな粒子の大部分が取り除かれた製品で、肉芽腫の発生は0.01%まで低下した。しかし、直径20ミクロン代の粒子がほんの少しだけ混ざっており、粒子の表面も粗いものだった。
第3段階は、2005年にカナダでArtecollが承認された時以降のもの。これは、直径20ミクロン代の粒子をほとんど含まず、粒子の表面も、非常に滑らかなものである。アメリカでこの度承認されたのはこのバージョンで、商標をこの度、Artefillと変更して発売された。
安全性について
アメリカでの臨床治験は、1997年から2001年にかけて行われ、251人の患者の中で、123人はコラーゲンを注射し、残りの128人はアーテフィルを注射した。
アーテフィルの注射を受けた患者は、6カ月後でも12カ月後でも、効果が持続していた。
それに対して、コラーゲンを注射したグループは、6カ月後には全員、元の状態に戻っていた。
アーテフィルの利点
・適応は、コラーゲンやヒアルロン酸とほぼ同様である。
・何年もの間、効果が持続する。
・生体適合性、安全性、物質としての安定性に優れている。
・コラーゲンの再構築が促される。
・注入手技が簡単である。
・他のところに移動しないし、皮膚を突き破って出てくることもない。
・異物反応は微小である。
作用機序について
他の注入物(Filler)とは違い、アーテフィルは、ただ単に膨らませるものではなく、体のコラーゲンを作る作用があります。 30から50μmのPMMAの粒は、白血球から貪食されることなく、体の他の部分に運ばれることもありません。
注入後1カ月から3カ月経つと、アーテフィルの中の牛コラーゲンは、完全に自己コラーゲンに置き換えられます。だから、アーテフィルは「生きたプロテーゼ」と呼ばれます。
適応症状
深いシワに対して、有効です。皮膚が比較的厚い人には、非常にいいのですが、皮膚が薄い人は、盛り上がったり、シコリになりやすい傾向にあります。
合併症・副作用
注射が深すぎると、効果がありません。反対に、浅すぎると、皮膚の赤みや痒みが出ます。その場合には、ステロイドの塗り薬や注射を受けなければなりません。
ここまでの結論として、注入する深さが、一番のキーポイントのようです。そして、大抵の東洋人には、皮膚が白人に比べて分厚いため、うまく適合する印象があります。
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