乳がん術後の再建に新知見

current.gif
乳がん部分切除後に、乳房に陥没を伴う変形を残すことは、通常は避けることができない。しかし、術中に腹部から皮膚と脂肪を採取して、がんの摘出部位に入れておくことで、変形を防止できるという論文が、「Surgery」という医学ジャーナルに掲載された。
Breast repair with fat grafts gives lasting results – – ModernMedicine


論文の著者は、日本の鹿児島大学医学部一般外科学の乳がんチーム。再建の方法は、腹部から採取した真皮付きの脂肪組織を、乳がんを切除した部分に移植する。その後、5年間にわたって患者をフォローアップした結果、乳房のボリュームや形、乳頭乳輪部分のサイズや色などを評価し、90%以上の良い結果を得たというもの。もちろん、彼らは形成外科医ではないため、マイクロサージェリーは使用していない。つまり、血管を縫合したりしていないということだ。
これまで、乳がん術後の変形治療は、主にマッスル・フラップ法(筋皮弁法)と言って、お腹や背中から、筋肉を茎とし、脂肪組織や皮膚を移動してくる方法か、もしくはフリー・フラップ法(遊離皮弁法)と言って、血管をつけた組織を、治療部位の血管に血管同志を縫合して繋ぎ合わせる手術法が主流だった。そしてこれらの方法は、一般外科医ではなくて形成外科医の独壇場でもあったわけである。しかし今回のこの論文は、一般外科医のグループが発表している。このことは、形成外科への受診と再建手術を行うことなく、乳がんの切除とともに、すぐにその場で乳房の再建が可能であるということでもある。
現在、日本国内には約1000人以上の形成外科学会認定医がいるが、乳房再建はその中の大きな収益源でもある。この乳房再建マーケットは、このまま一般外科医のものに移行してしまうのだろうか?

「乳がん術後の再建に新知見」への2件のフィードバック

  1. 一児の母 より:

    患者さんにとっては、ありがたい発表です。
    でも、傷あととか・・・形成外科のほうがきれいですよね?

  2. >傷あととか・・・形成外科のほうがきれいですよね?
    癌の摘出との同時再建ですから、傷痕については変わりないでしょう。

現在コメントは受け付けていません。