Vaser(ベーザー、ヴェーザー)とPALシステム~脂肪吸引(死亡吸引)への道のり

Vaser(ベーザー、ヴェーザー)とPALシステムの共通点なのだが、それは、どちらも「先端が高速で振動する」という点である。 Vaserは36 kHz (1秒間に36000回)、PALは1分間に4000回(調節可能)、先端が高速で振動するのである。


Vaser(ベーザー、ヴェーザー)は超音波を利用して脂肪組織を破壊するのだが、この、「超音波」とは「耳に聞こえない音」、つまり空気の高速振動である。これを作成するために先端を高速で振動させ、この振動によって脂肪組織を破壊する。振動の幅は、肉眼では認識できないほど小さいのだが、何せこの高速振動、気をつけないと色んなものを切ってしまう。超音波は、金属加工やプラスチックの圧着などの工程で、工業的にも使用されている。取り扱い作業の従事者には、半年に一度の特殊検診の受診が、労働安全衛生法によって義務付けられている。医療用としては、歯科の根管治療や歯石落とし、耳鼻科の頸部郭清手術、最近は骨切りにも使用されている。
PALシステムは、Vaser(ベーザー、ヴェーザー)と比較して、振動がはるかにゆっくりとしている。しかし、振幅が、前回の記事のごとく2mmである。実は、私も約10年前にはこのPALシステムを使用していた。当時は現在のような電動式ではなく気動式で、圧縮空気のボンベが必要だった。手術の時、機械台の上で動かしてみると、機械台は「カンカンカン・・・」とケタタマシイ音を発していたのを今でも覚えている。結局、この機械の、激しさの割に脂肪が取れる効果の少なさから、1年ちょっとで使用を中止してしまった。大枚はたいて買ったのに、少しもったいない思いはあったが、ライポマチック(Lipomatic)という、1分間に600回振動といった、振動数の少ないものに買い替えた。つまり、Vaser(ベーザー、ヴェーザー)は鋭く先が尖った鉄パイプ、PALシステムはやはり削岩機のようなものといった印象である。
結局、何が言いたいのかと言うと、先端が振動する器械は、腹腔内に損傷を加えるリスクが比較的高いということである。だからといって、私はこれらの機器を全面的に否定するつもりはない。例えて言うなら、日本刀は、振り回せば危険極まりない武器だが、居合道の修練をしっかりと積んだ人物が、その流儀に従って使用すれば、精神修養の糧となるのと同じことなのである。要は、機器の特性を理解したうえで、いかに頭を使いながら使用するかということに尽きる。
以上は後付けの理論に過ぎないことは、重々承知ではあるが、Vaser(ベーザー、ヴェーザー)やPALシステムを使用して脂肪吸引を行う際には、手術が早くて時間の短縮になるといった、メリットの部分のみではなく、これらの危険性にも十分に配慮したいものである。そしてまた、このようなリスクを低減できる機器の開発にも、期待を込めている。