ふくらはぎ+足首の強力脂肪溶解注射 2

ふくらはぎから足首にかけて、強力脂肪溶解注射を行ったモニターさんです。片足に付き、ふくらはぎの一番太くなっているところに2か所、足首に1か所分を注射しています。

ふくらはぎについては、全体のバランスを考慮して、一番太くなっているところのみでなく、足首を加えるかどうかを、担当医と話し合って決定する方がいいと思われます。それは、季節的にふくらはぎを露出するようになると、どうしても足首の部分が気になり始める患者さんが多くなるためです。ふくらはぎの太さが気になるのは、1年のうち、大きく分けて2つの時期にピークが集中しています。一つはブーツを履きはじめる中秋の頃です。この頃に新しいブーツを新調しようとしたり、前年のブーツをクローゼットから出してきて履いてみた時に、ふくらはぎの太さに愕然とする方が多いようです。もう一つの時期は、やはり春先です。ブーツの時期も過ぎ、ハイヒールに履き替えるこの時期には、ふくらはぎから足首にかけての露出が増加するため、どうしてもふくらはぎに目が行く時期でもあります。そこで、足首が問題になるのは、2番目の時期である春先です。冬の間は、足首はブーツの中に隠れて全く露出されません。また、細身のブーツでも、足首のところがタイトで装用が困難と言うことがありません。しかし、春先では、この足首がハイヒールやパンプスなどの装用によって、一気に露出されてしまうのです。


当院の強力脂肪溶解注射は、脂肪組織を強力に破壊し、しかも脂肪細胞を死滅させる作用があります。そのことで強力な皮下脂肪減少作用があるのですが、それに伴う術後の経過と言うものもあります。

強力脂肪溶解注射の術後の経過は、やはり腫れや一部の内出血を伴う形となります。とはいっても、腫れの程度としては洋服が入らなくなるほどの腫れはありません。また、内出血に関しても、脂肪溶解した部分全体が真っ黒になるということではありません。そして、注射の効果が出始めるのは、術後1か月後になります。その後、約3か月でほぼ最終的な効果が観察されます。このように、脂肪溶解注射の場合には、たとえ強力脂肪溶解注射であっても、効果の出現には術後約1か月の期間を必要とします。それと比較して、脂肪吸引の場合には術後2週間で何らかの効果を感じる方が大多数を占めます。その理由は、脂肪吸引の場合には、手術の時に脂肪組織そのものを取り出してしまうのに対して、脂肪溶解注射の場合には、溶かして破壊した脂肪組織の残骸が、処置を行ったところに残っているからです。したがって、脂肪溶解注射の効果が出現するには、破壊された脂肪組織の残骸が、白血球による貪食作用やリンパ流・血流などで、処置を行われたところから除去される必要があります。この、残骸の除去作用が働いて、それなりの効果が出てくるのに、術後約1か月を要し、さらにそれが終息するのに、術後3か月間かかるということです。

しかし、足首の強力脂肪溶解注射に関しては、術後の経過を長めに見ておく必要があります。それは、足首の解剖学的特徴と、それに伴う生理学的特徴によるものです。

足首は、夕刻になると人間の体の中で一番むくみやすい場所であると言えます。それは、日中の活動時に常に体の下方にあるため、水分が貯留しやすいからです。水が高い所から低い所に流れるというのと同じです。逆に朝の起床時には、顔面がむくみやすいということです。午前中は顔が若くなるのはそのためです。水分が貯留しやすいということは、静脈系を通じて心臓へ血液が返っていく流れが悪いということです。すなわち、強力脂肪溶解注射で破壊された脂肪組織の残骸も、そこから取り去られる作用が、他の部分の比べて遅いということです。したがって、足首に関しては、強力脂肪溶解注射による効果としてのサイズダウンも遅く、その分は他の部分よりも術後経過を長く見積もっておく必要があります。

これらのことから、足首に関しては、効果が出るのに時間がかかるということを考えておかなければなりません。したがって、ふくらはぎの脂肪溶解注射を受ける場合には、秋口のブーツを履きはじめる時から、足首も含めて処置を受けておくことをお勧めします。

また、術後3か月と言う期間を十分に取れるという観点では、夏に向けての美脚を目指すということであれば、5月くらいまでには足首の処置を受けておいた方がいいでしょう。このように考えると、全身的なプロポーションづくりと言うものは、本格的に夏を目指すのであれば、やはり秋から冬にかけての過ごし方が大きくものをいうことになります。また、当院の強力脂肪溶解注射は、思わぬおまけが付いてくることも、特記すべきかもしれません。それは、処置を受けたところだけではなく、全身的に美肌効果が付いてくるということです。その理由については、今のところ推測にすぎませんが、確かに乾燥が少なくなったり、肌の色調が改善したりすることが、多くの患者さんで観察されています。これは、溶解された脂肪組織に関係することや、脂肪溶解注射の成分によるものが考えられています。
脂肪組織の溶解と美肌効果については、脂肪溶解注射によって溶け出た脂肪が、皮膚から分泌され、皮膚の表面を覆ってクリームの役割を果たすのだろうと思っているかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。

現在考えられている美肌効果の理由は、脂肪組織に含まれている数多くの幹細胞によるものと、脂肪溶解注射の成分であるフォスファチヂルコリンの、肝臓保護作用によるものです。
脂肪組織の中には、人体組織の修復と再生に欠かせない幹細胞が多く含まれています。これを脂肪由来幹細胞と言います。強力脂肪溶解注射によって脂肪組織が破壊されると、この脂肪由来幹細胞が一部遊離し、脂肪組織の残骸が吸収される過程を通して、全身に散布されるのです。そうすると、幹細胞の性質として、ダメージを受けた臓器や組織に留まりやすく、その部分で臓器と組織の修復を開始するわけです。つまり、肌荒れなどを起こしている皮膚にも脂肪由来幹細胞が留まり、それを修復します。また、幹細胞はいろんな種類の成長因子(細胞増殖因子)を分泌し、周辺の細胞にも、修復の指令を出します。皮膚の場合だと、皮膚に存在する幹細胞や線維芽細胞などです。このようにして、脂肪由来幹細胞が皮膚に作用することで、強力脂肪溶解注射が美肌効果を持つものと考えられています。

脂肪溶解注射で脂肪溶解作用の中心となる成分は、フォスファチヂィルコリンです。この薬は元来、高脂血症や脂肪肝などの治療薬として、静脈内に点滴されてきたものです。

フォスファチヂルコリンの高脂血症や脂肪肝などの治療薬としての作用は、主に肝臓での中性脂肪の代謝を助ける薬剤としての作用です。フォスファチヂルコリンが中性脂肪やコレステロールなどの油脂と混合されると、本来水に溶けずに分離してしまう油脂を、水に溶ける形に変化させます。そうすることで、血管内の脂肪分が、血管の内腔にくっつきにくくすると同時に、肝臓で分解されやすくします。当然、中性脂肪が多すぎて肝臓の細胞の中に溜まってしまったという病態である脂肪肝にも、肝臓の細胞内の中性脂肪の代謝を助けるという意味で、治療薬として働きます。そしてそれまで、自分自身の細胞の中や血中の中性脂肪やコレステロールなどの脂肪分を持て余していた肝臓が、余力を獲得することになり、それまで滞っていた老廃物の代謝もスムースに行うことができるようになるのです。このようにして、肝臓の働きをスムースに行わせる作用が、フォスファチヂルコリンには存在します。脂肪溶解注射の場合には、点滴ではなく皮下注射と言う投与経路となっていますが、フォスファチヂルコリンは血中にも、皮下脂肪組織を通して入っていくため、このような肝臓に対する治療薬的作用も発揮します。そのことはまた、皮膚の代謝に関してもそれをスムースにし、より健康な皮膚を保つために、よりよい全身状態を作ることに関与します。これが、強力脂肪溶解注射の美肌作用と言うおまけの、2つめの理由と考えられています。