豊胸用バッグを、メーカーが自主回収と販売停止

アラガンが、豊胸用バッグの自主回収を開始する模様。米国FDAの調査結果を受けての措置です。

人工乳房が原因で33人死亡 メーカーが自主回収

 【ワシントン共同】米食品医薬品局(FDA)は24日、がんで切除した乳房の再建や豊胸手術などで使われる人工乳房が原因とみられるリンパ腫により世界で33人が亡くなったと発表した。死者以外に573人の患者を確認。大半がアイルランド製薬大手アラガンの製品を使用していた。同社は世界的に対象製品を自主回収し、販売停止すると同日発表した。


https://this.kiji.is/526916697342641249?c=39546741839462401

ここで、「リンパ腫」と言われているものは、 未分化大細胞型リンパ腫(ALCL) のことで、元々、稀な癌で、 豊胸術を受けた患者さんの間でも、非常に稀な発生率でしかありません。バッグとの関連性は、表面のザラザラした、テクスチャード・タイプとの関連性が確定したということで、自主回収は、このテクスチャード・タイプかと思われます。日本でも、この製品が承認されています。

そして今回の、アラガンの自主回収措置ですが、因果関係にかかわらず、企業防衛上、経営陣が早期に判断を下したということでしょう。それは、アメリカが陪審制審理の訴訟大国だからです。法律の専門家でもなく、医学の専門家でもない陪審員が、判決の主体なのです。多分に感情に支配される判決を下した例が、数多くあることが、知られています。1990年代の、シリコンバッグ発がん疑惑事件も、陪審員裁判により評決され、メーカーの一つであるダウ・コーニング社が倒産に追い込まれました。このような訴訟に敗訴して、莫大な賠償金の支払い義務を負うことになれば、経営陣も、株主代表訴訟の標的になります。

因みに、記事中、「 アイルランド製薬大手アラガン 」とありますが、アラガンは米国系の会社なのですが、法人税の安いアイルランドに本社を置いています。したがって、企業の国籍は、アイルランドということです。

では、この自主回収を受けて、既にこのタイプでのバッグで手術を受けた患者さんは、どうしたらいいのかということですが、今は、メーカーの対応を待つべきでしょう。実際、一足先に、テクスチャードタイプのバッグを禁止したフランスでも、予防的にバッグの入れ替えは推奨していません。未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)の発症に伴う症状である、バストの腫れあがりには、要注意とのことです。したがって、術後何年も経ってから、片方のバストだけが腫れあがってきたら、検査・治療を受けるべきだと思われます。

日本でも、アラガン社は自主回収に乗り出し、テクスチャードタイプの、ナトレルという製品は、今後、使用できなくなりました。スムースタイプのバッグは、今後も使用できます。