(症例写真)成長再生豊胸Wを5回 その21

20歳代後半の女性で、出産・授乳の経験はありません。
今回、何年も前に受けたヒアルロン酸での豊胸で、周辺にカプセルが形成されて、嚢胞状に残ってしまったヒアルロン酸による、不自然なバストの形を改善したいとのことで、成長再生豊胸Wを5回、受けました。

術前の状態は、段こそついていないものの、乳頭からアンダーバストにかけてのボリュームが、年齢の割に不自然な盛り上がりを見せ、バストの上部にボリュームがないのが、観察されます。この、乳頭からアンダーバストにかけてのボリュームは、ベッドに横になった時に、さらに不自然な状態となり、乳輪の下に、大きな盛り上がりを作っていました。また、元々の胸郭が、軽度の漏斗胸で、特に右側に胸郭の凹みが強いため、横になっても、バストの右内側の盛り上がりが動かず、かなり不自然な形が見られました。

周辺にカプセルが形成され、嚢胞状にヒアルロン酸が残っていた箇所。残っているヒアルロン酸は動かないので、横になると、バスト全体の動きに追い付かず、不自然な盛り上がりができる。

治療方針としては、まず、ヒアルロン酸をなくしてから、成長再生豊胸を行うのが、学問的には王道です。しかし、こちらのモニターさんは、ヒアルロン酸を抜くことで、バストがその分小さくなることを、かなり嫌がっていたため、ヒアルロン酸が入ったままの処置となりました。術後は、乳輪・乳頭の位置が、バストの輪郭に対して適正な位置に近づき、人工的な外見がかなり改善されました。さらに、バストの皮下組織や乳腺の増大により、表面からヒアルロン酸の塊が触れにくくなり、手触りの改善も見られています。

ヒアルロン酸にしろバッグにしろ、何かを豊胸目的でバストに入れる際には、基本的に乳腺の下の層に入れます。そして、その挿入物・注入物の周辺には、コラーゲンでできた膜としての、カプセルが形成されます。もし、ヒアルロン酸の周辺にカプセルが形成された場合、そのカプセルが、胸壁(大胸筋)から遠いところにあれば、姿勢によって変化する乳腺の動きと連続性を保てるので、検査で単なる嚢胞と診断されるくらいで、あまり問題になりません。しかし、胸壁(大胸筋)に近い場合、乳腺の動きに対して、「動かない」ということが発生し、特に横になったときの、天然のバストではありえない、不自然な形が形成されます。

では、吸収されてしまうはずのヒアルロン酸の周辺に、なぜ、カプセルができて、吸収されないのかという疑問が生じるかもしれません。理由は、いくつか考えられますが、この注入されたものが、本当にヒアルロン酸だった場合には、以前に流通していた、クロスリンケージ(架橋度)の大きいものなのでしょう。クロスリンケージとは、簡単に言うと、ヒアルロン酸の粒の大きさ・硬さということで、これが大きいほど、吸収がゆっくりになるという特性を持っています。つまり、吸収が遅すぎることによって、本来異物ではないヒアルロン酸が、異物として認識されてしまい、周辺にカプセルができてしまったということです。以前に、ヨーロッパで、肉芽腫発生の報告から、ヒアルロン酸による豊胸が禁止された元凶の製品です。現在は、このようなクロスリンケージの大きなヒアルロン酸は、製造されていないようです。
もう一つの大きな理由は、患者さんがヒアルロン酸と思い込んでいたものが、実はアクアフィリングやアクアリフト(アクティヴジェル)だったということです。ヒアルロン酸も、これらの材料も、ハイドロジェルと言って、中に水分を多く含むジェル状の物質です。その吸水性のために、どちらも、超音波検査では内部が黒く映る嚢胞の形態で検出され、見分けがつきません。これらを摘出せずに見分けるためには、核磁気共鳴分光法という、研究施設にしかない方法で検出するしかありません。アクアフィリングやアクアリフトは、既にその使用については、厚労省が事実上の禁止をしています。しかし、未だにそれを売り物にして、ネット上で広告しているクリニックもありますので、注意が必要です。