第98回 日本美容外科学会 2010.09.28

先日、東京ドームホテルで、第98回日本美容外科学会が開催されました。多数の参加者と、興味深い最近の日本での美容外科の潮流を見て取ることのできる学会でした。


学会場では、私を韓国の学会に呼んでくださり、講演をさせてくださった、大韓美容外科学会会長のDr.Jung Kwang-seupと前会長のDr.Lim Jong-hakと、約半年ぶりの再会ができました。今年の10月には、彼らが主催する東方美容外科学会がソウルで開催されます。再び講演の依頼を受けました。義理を大切にする私としては、新しい演題を準備して駆けつけようかと思います。
今回、私は2つ、発表をしました。
一つは、プラズマリポのパイオニアである、うちで開発したプラズマリポ・ドレナージ。
手術のビデオを演題中に供覧したのですが、ゆっくりとした術者の動きにも拘らず、次々と溶解された脂肪が排出されていく様子に、会場内は息を飲んでいました。プラズマリポ・ドレナージが普及して、従来の、スポーツのような危険な脂肪吸引が絶滅することを願っています。
もう一つは、エンドプラスト。鼻のセッションに組み込まれていましたので、症例は隆鼻術について発表しました。やはり、未だに注入物としての認識を持っている先生方も多く、その誤解を解くのに腐心する次第です。しかし、前出のDr.Lim Jong-hakは、非常に強い興味を持ってくださりました。
他の演題で興味深かったのは、イントラセルです。なんとイントラセルだけで6演題。セッションが一つ丸々イントラセルでした。当然、セッションの名前も「イントラセル」。さまざまな皮膚の美容についての適応(ニキビ跡・赤ら顔・老化など)と、さらに基礎医学(病理学)的な検討にいたるまで、これらの発表を聞けば、ほぼ、イントラセルを使いこなせると思われる状態でした。
シンポジウムは、今、一番ホットな、脂肪由来幹細胞を利用した美容整形。
で、その脂肪由来幹細胞を利用した美容整形についてのシンポジウムですが、こう言うとわかりやすいかもしれません。つまり、「幹細胞を混ぜると、脂肪注入がよく残るょ」ということです。ほんとにその通りです。脂肪吸引で取り出した脂肪には、切り取った脂肪と比べて、幹細胞が半分しかないのです。つまり、その分を補ってやれば、注入してもよく残るといった具合です。 シンポジストの発表の中で、混合する幹細胞の量については、特に触れられていませんでしたが、私の経験からすると、幹細胞は、少ない分の半分を、まるまる全て脂肪に混合する必要はないと思われます。と、いうのは、幹細胞はいろいろな細胞に分化するのですが、幹細胞それ自身にも変化するからです。ここでは、一番効率のよい混合比には触れませんが、私はその比率を経験上、既に知っています。また、そのような混合比率を使用した場合には、1か月から3カ月目に、注入した脂肪のボリュームが劇的に減少し、それから約3ケ月後には、再び増量が始まり、最終的には注入した脂肪の約80から90%が生着します。その辺の経験を披露して、パネリストの先生方の意見を伺いたかったのですが、今、旬なトピックスだけあって、フロアーからの発言も多く、発言のチャンスがありませんでした。 ところで、ある先生の発言なのですが、たしかに、Tumescent法での脂肪吸引では、幹細胞が半分になり、Dryメソッドのほうが幹細胞の回収率は、理論的にはいいのです。しかし、Tumescent法は、「脂肪を洗う」方法ではありません。脂肪以外の組織を回避して、効率よく脂肪組織を吸引するために、大量の薬液を皮下注入する方法です。この方法で回避された部分に、幹細胞が比較的たくさん存在するのです。Jeffrey Kleinは、このTumescent法のパイオニアではあります。しかし、注入前に脂肪を洗うというのは、KleinではなくColemannの提唱した方法なのです。この方法は、これまで、脂肪注入のゴールドスタンダードとされてきたのですが、今後は、幹細胞の混合がスタンダードになってくるでしょう。