成長再生豊胸は、どうやってできたのか

当院において、バストを成長させる豊胸術を、成長再生豊胸としてウェブサイトに記載し、本格的に患者さんに提供し始めたのは、2010年のことですから、既に9年前のことになります。そして現在(2019年6月30日時点)で、延べ2000例を超える症例が、実績として存在しています。

成長再生豊胸のきっかけ

では、当院の成長再生豊胸は、どうやって開発されたものなのでしょう?成長再生豊胸開発経緯などと、大それたものではなく、日々の臨床経験と学会参加・論文閲覧で、一つ一つ前進させて、提供に至ったものです。

血漿を使う治療

血漿を使用して、組織の回復と再生を図るという方法は、既に1980年代より以前に、形成外科や美容外科以外の診療科において、文献において報告がありました。これらの報告は、主に手術や外傷の際の止血作用に重きを置かれたもので、フィブリン糊が多用される素地にもなりました。美容外科の分野では、1980年代の終わり頃から、主としてフェイスリフト手術の際に、血種発生の防止と、腫れの減少を目的として、フィブリン糊が多用されました。実際、フィブリン糊を使用したフェイスリフトの症例は、血種の発生や大きな腫れも防げ、傷の治りも良いという結果を得られました。しかしながら、それらフィブリン糊製剤は、他人の血液から調整されたもので、HIVやプリオンの問題が注目されました。ちょうどその頃、2000年代に入ると、スレッドリフトが、切らないフェイスリフトとして注目を集め始め、フィブリン糊のほうは、自家血から調整する方法が、普及したにもかかわらず、切開を伴うフェイスリフトの需要が減少してしまいました。

成長因子の添加

しかし、他科では、自家血から作成したフィブリン糊は使われ続け、その過程で、組織の修復作用に関して、研究が進められていました。そして2000年代の後半に、細胞成分や成長因子の働きが再生医療という形で注目され始め、血小板を多く含む血漿が、組織の修復作用を促進することが、ほぼ確定的になり、2000年代の中頃からは、美容外科の分野でもそれが応用されるようになりました。しかしながら、血漿内の血小板の数には個人差があります。血小板数だけが影響しているということはないのですが、当然のことながら、血小板数の個人差は、その効果の個人差の、大きな要素と考えられました。そこで登場したのが、血漿に成長因子を添加するという方法です。

自分の体で人体実験

この、血漿に成長因子を添加するという方法は、今でも非常に効果のある方法として、広く行われているわけですが、2008年には、血漿に成長因子を添加すると、添加しない場合よりも、組織が盛り上がることが確認されていました。そこで、「これは組織の陥凹変形の再建に使えるのではないか?」ということで、文献を読み漁り、さらに自分自身の体を使って、実験を始めました。実験のテーマとしては、大きく3つ。一つは、「どれくらいの間、組織を盛り上げる効果が持続するのか」。2つ目は、添加する成長因子の組み合わせ。3つ目は、「どれくらいの組織増量に、それぞれどれくらいの量の成長因子の量が必要か。」ということです。これらのテーマを解決すべく、自分自身の体で実験していきました。そして、2009年の終わり頃には、血漿の量と添加する成長因子の割合の検討を終了しました。

皮下脂肪の増量確認

この方法による組織の盛り上がりは、脂肪組織の増殖によるものだということを、自分の組織を針で採取して、病理検査を行って、確認しました。さらに、2010年10月7日~8日、京都で開催された、第33回日本美容外科学会(JSAPS)総会にて、他の医師によって、「血漿+成長因子による皮下組織の増量が、正常な皮下脂肪組織である」という証明がMRI画像を以ってなされました。これらを参考に、成長再生豊胸を完成させ、さらに改良を加えて、現在に至っています。

乳腺の発育

ところで、バスト(乳房)は、皮下脂肪組織が大半の割合を占めています。しかし、バスト独特の形は、乳腺と、それを支えている靭帯が存在するためです。したがって、単純な皮下脂肪の増量では、良い形の乳房は造れず、出っ張ったおなかのような形になってしまいます。そこで、当院の成長再生豊胸は、乳腺の発育にも配慮した調剤を行っています。

成長再生豊胸は特許なのか

成長再生豊胸は、医療行為ですので、特許ではありません。と、言うよりも、特許の要件に該当しません。医療行為は、調剤も含みます。このことは、特許法 第六十九条3 に、次のように規定されています。

二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない

したがって、成長再生豊胸は、薬剤の配合で特許を取得しても、その実効性がないということです。また、当院の成長再生豊胸は、常に改良が加えられていきますので、特許の審査に時間と手間を取られているうちに、新しい配合が生まれるため、配合の特許であっても、取得はしない方針です。