ボトックス

ボトックスでシワをとる

適応

特定の表情や癖によってできた、或いは、深くなったりする皺(溝)。特に、眉間や目尻・額など、いわゆる表情じわに対して特に有効。

原理
皺を寄せる筋肉を麻痺させることによって、皺を作れなくする。シワが作れないために、皮膚の折れ曲がりも生じないため、浅いしわの場合には、皮膚が回復してシワそのものが消失する。

効果
個人差があるが、著しい効果は3?4ヶ月間。中には1年間効果が持続する人もいる。

術後経過
通常、注射して2?3日後から効果を感じることができる。中には1週間後から効果が出現する人もいる。

プチたるみとり・ボトックスで眉を上げる

適応

眉が下がっていることによって、目元が、暗い印象や老けた印象になっている場合。
二重の目尻側の幅を、ほんの少し広くしたい場合。

特定の表情や癖によってできた、或いは、深くなったりする皺(溝)。特に、眉間や目尻・額など、いわゆる表情じわに対して特に有効。

原理
眉を下げる筋肉を麻痺させることによって、眉を上げる筋肉の力が、相対的に強く働くようにする。

効果
個人差があるが、著しい効果は3から4ヶ月間。中には1年間効果が持続する人もいる。

術後経過
通常、注射して2、3日後から効果を感じることができる。中には1週間後から効果が出現する人もいる。

ボトックスでエラをとる

適応 えらの筋肉が大きいため、顔が大きく見える人。  原理 えらの筋肉の1部を麻痺させることによって、筋肉を痩せさせる。  効果 個人差があるが、効果は1?2ヵ月後に出現してくる。持続期間には個人差があるが、2年たっても完全には元に戻すことができない。長期の効果を望む場合、最初の注射の後、約4ヵ月後に2回目を行うとよい。  術後経過 入浴は当日から可能。腫れはない。生活上の制限はほとんど無い。ただし、術後1週間目くらいから2~3週間、硬いものを噛むことが困難となることがある。

ふくらはぎをボトックスでほっそりと

脂肪ではなく、筋肉によってふくらはぎが太い方(俗に言う、ししゃも足)に有効です。術後の生活制限はありません。

手順:まず、医師の診察を受け、説明を受けます。記録用の写真を撮影したあと、注射する筋肉の部分に、ペンで印をつけ、注射を開始します。処置後は、印を落としたら、すぐに帰宅できます。(処置後の生活制限は一切ありません。)

ふくらはぎを細くする

筋肉でふくらはぎが太い方は、ボトックスの注射が有効です。外側の筋肉に注射すると、歩行に困難をきたす場合があるため、 ふくらはぎの筋肉にボトックスを注射する際には、内側の筋肉に注射します。 注射後約2か月かけて徐々に筋肉が退縮します。持続期間は、人それぞれです。と、いうのは、以前のライフスタイルによって筋肉が鍛えられて太くなったが、すでにそのライフルタイルが変化している場合(スポーツで太くなったが、すでにそのスポーツをやめている場合など)には、半永久的な効果が期待できますが、ライフスタイルに変化がない場合には、状態を保持するためには約1年ごとに注射が必要です。

ボトックスの最近の動向(2012年6月現在) 

ボトックス

アメリカのアラガン社が国際商標権を持つ医薬品。したがって、ボトックスと言えば、正確にはこのアラガン社の物を指すことになる。日本国内においては、現在のところ、適応症が「眼瞼痙攣」や「筋性斜頸」などの治療領域で厚生労働省の承認が得られている。 また、ボトックスビスタ(BOTOX Vista)は、眉間のしわに対してのみ、美容的使用の承認が得られている(その他の部分のしわに対する適応は未承認)。有効成分はBotulinumToxin TypeA。クリニックや病院などの医療機関への供給については、フリーズドライした粉末がバイアルに封入された状態で、冷蔵された形となる。冷蔵が必要なのは、有効成分はBotulinumToxin TypeAが、熱に対して弱いためである。また、一旦生理食塩水で粉末のボトックスを注射液の形として溶解してしまうと、その力価が次第に減少を始めるため、溶解後24時間以内に使用してしまわないと、正確な力価を注入することにならない。
同じ成分を含む製品は、今や様々な国で生産され、流通している。これらのボトックス™以外の製品については、眉間のしわに対する美容目的での使用も、関係法令上、診療に使用する医師の裁量と責任において認められている。以下、日本国内においてボトックスとしてよく使用されているBotulinumToxin TypeAについて、その違いと問題点について述べる。

ボトックス~アラガン社(アメリカ合衆国製・スミスクライン社)

美容領域では、蛋白含有量の少ない「ボトックスCosmetics」が、アメリカでは主流。これが、日本国内ではボトックス・ビスタに相当する。アラガン社の日本法人は、「ボトックスCosmetics」と同等品の「ボトックス・ビスタを取り扱っており、美容目的使用の中で、眉間のしわ取りについては、このボトックスビスタを出荷する。しかし、他の疾患治療目的の場合と同様に、厚生労働省の指導のもと、薬事法に基づき、患者ごとの使用量や使用残の廃棄報告など、詳細なレポート提出と保管義務がある。また、このボトックスビスタは非常に高価である。具体的には、後述の従来のボトックスの約3から4倍の価格となる。したがって、これを使用する場合には、処置費用も高額とならざるを得ない。さらに、提出と保管を義務付けられているレポートについては、一人の患者に対して1バイアルのボトックス・ビスタを使用することが前提となっているため、これを日本人の眉間のしわのみに使用すると、ロスが大きく、やはり処置費用に跳ね返らざるを得ない現状である。

ボトックス~アラガン社(アイルランド製)

アラガン社製ボトックスを使用している、国内の美容外科・美容整形・美容皮膚科クリニックの大半が、これを使用している。一番の理由は、ボトックス・ビスタよりも、格段に安価なためである(2012年6月現在、日本国内での価格はおよそ4分の一)。また、輸入代行業者や密輸業者が、クリニックに対してFAXやE-mailで営業をするため、クリニック側からすると、入手が容易、かつ、並行輸入品であれば、薬事法の義務付けた、患者ごとの使用量や使用残の廃棄報告など、詳細なレポート提出と保管義務がないことも理由のひとつ。

品質上はボトックス・ビスタと遜色ないと思われるが、その輸送過程に問題がある場合が多い。先述のとおり、BotulinumToxinは熱に弱く、溶解前で未開封のバイアル内でパウダーの状態であっても、冷蔵保存が必要である。それを怠ると、効力が激減し、「効かない」「すぐに効果がなくなる」といったことになる。輸入代行業者や密輸業者は、日本国内では在庫を保管することができず、しかも製造元のアラガン社は海外から直接クリニックや輸入業者には出荷しないため、香港やシンガポール、タイなど、医薬品の輸出入規制がゆるやかな国に中継地点を構え、在庫をストックしている。アイルランドから中継国へ輸送する際や、中継国で在庫として保管する際、またはそこから日本に発送・密輸する際に、冷蔵がなされていない場合が多く、いわゆるヒートダメージを受け、効力が激減しているものが散見される。冷蔵輸送をしないのは、輸入代行業者の場合は輸送費の節約、密輸業者の場合は空港の税関で目に付きにくくするため、手荷物を小さく軽くしなければならないからである。またクリニックへの納品時にも、クール便ではなく、普通の宅急便で送られて来ることがある。そのことからも、保存温度管理の不徹底が容易に窺い知れる。

BTXA~中国製

成分には豚のコラーゲン(ゼラチン)が入っているため、局所のアレルギー反応が比較的高率にみられる。また、品質管理上の問題があり、1バイアルあたりの単位数にばらつきがある。つまり、医師も患者も、知らないうちに規定量以上の注射をしていることがある。BotulinumToxin TypeAの性質上、1回に大量の成分の注射がなされた場合、体内に抗体産生が起こり(成分に対して免疫ができる)、その後、一生、BotulinumToxin TypeAによる治療が無効になってしまうことがある。そうなった場合には、BotulinumToxin Type Bに切り替える必要が生じるが、これはMyoblocという商品名でアメリカでしか発売されておらず、非常に高価かつ作用期間が短い。

Neuronox(ニューロノクス)・Meditoxin(メディトキシン)・Regenox(リジェノックス)~韓国製・いわゆるコリアン・ボトックス

アラガン社のボトックスに対する基本特許が公開されたのを機に、韓国ではいくつかの会社がBotulinumToxin TypeA製剤の製造を開始した。それらの中でも、この3つの製品はKFDA(韓国のFDA)の承認を得ている。KFDAに関しては、その薬品や医療器具に関しての審査基準はアメリカのFDAと同等であるとされ、製品としての信頼性はアラガン社のボトックスと遜色ないと思われる。これらの他にも、韓国製のBotulinumToxin TypeA製剤は存在し、KFDAの承認がない製品も多い。

Dysport(ディスポート)~イプセン社(イギリス製)

ボトックスとほぼ同時期に発売されたBotulinumToxin TypeA製剤。この製品はイギリスで製造されている。そして、アイルランド製ボトックス同様の流通経路を辿っている物が出回っているため、注意が必要である。この製品は、2009年4月にアメリカのFDA承認が承認し、リロキシン(Reloxin)としてMedicis社(Restylaneのアメリカでの販社)が販売している。

作用としてはアラガン社のボトックスよりも強力。Archives of Facial Plastic Surgery(顔面形成外科)の2012年1月・2月号によれば、目尻のしわ(いわゆるカラスの足跡)に対して、片方づつアラガン社のボトックスとディスポートを注射して経過を観察すると、ディスポートの方が強力にしわ取り効果を発揮したという結果を紹介している。
この論文中の根拠となる実験は、目尻のしわ(カラスの足跡)に、片方はBotox、反対側にDysportをそれぞれ10単位と30単位を注射している。ディスポートはボトックスの3倍の単位数を注射しているが、これは製剤の単位数の計測基準が違うため。ディスポートの単位をボトックス換算するときには、およそ3~4倍の数値を利用する。ちなみに、ディスポート1ビンには、ボトックスの5倍数値の単位数が入っているのが規格となっている。つまり、(ディスポート30単位)<(ボトックス10単位)ということになる。そうすると、理論的には、ディスポートを注射した側の方が、ボトックスを注射した側よりも効果が弱いという結果が予想されるのだが、実験の結果はその反対で、ディスポートのほうが強力な効果を発揮している。つまり、ディスポートはボトックスよりも効果が強いということである。
Split-Face Double-blind Study Comparing the Onset of Action of OnabotulinumtoxinA and AbobotulinumtoxinA

Xeomin(ゼオミン)~Merz社(ドイツ製) 2005年にドイツのメルツ社で開発されたBotulinumToxin TypeA製剤。

2010年にはアメリカのFDAの承認を得ている。この製品の特長は、含有タンパクがほとんど入っていないことである。そのことで、先述の抗体産生がないとされている。つまり、どれだけ注射しても、効かなくなるということがないということ。論文を検索してみると、2010年前後以降の論文に関しては、特に臨床商業医学誌に発表された論文に関しては、ボトックスと同等の効果であるというものが多数みられる。これは、Merz社のゼオミン・アメリカ上陸販売戦略の一環であることが疑われる。しかし、効果が約70%程度であるという論文も出ている。

真相は、先述のボトックスとディスポートの効果の差のように、発売されてから何年も経ってから分かるだろう。現時点では、日本国内において、ゼオミンの方がボトックスよりも高価であり、また、ボトックスによる抗体産生は、美容領域での使用量については報告されていないことから、導入するクリニックも少数派である。

当院では主に、厚労省の承認のある、ボトックス・ビスタを使用し、保管温度管理をしっかりと行っている。