脂肪増殖注射

脂肪増殖注射の概要

脂肪溶解注射とは反対に、脂肪を増やす注射が「脂肪増殖注射」です。この脂肪増殖注射ですが、内容は何かと言うと、PRPと成長因子です。
PRPは、血液から血小板を取り出して濃縮したものです。血小板の中には、大量の成長因子が含まれていますので、脂肪を増殖させるために添加する成長因子を補助する役割を担います。
添加する成長因子(最近は細胞増殖因子と呼ばれている)は、細胞を増殖させる効果のあるものを選んで添加します。成長因子(細胞増殖因子)は、どんな物質かと言うと、ペプチドと言われるものです。ペプチドとは、アミノ酸がいくつかお互いに結合して、一本の鎖のようになったもので、同じようにアミノ酸が結合してできているタンパク質よりも、結合したアミノ酸の数が少ないものです。つまり、タンパク質が長い鎖なら、ペプチドは短い鎖と言うことができます。このようなペプチドである成長因子(細胞増殖因子)には、たくさんの種類が存在します。そしてそれらは、体の中のそれぞれの細胞に対して、それぞれ違った働きを行います。たとえば、皮膚の真皮の細胞に働く物、皮膚の表皮に働く物、血管を作る細胞に働く物、肝臓の再生細胞に働く物、などなど、といった具合です。そして、それらの組み合わせと、それぞれの量によって、人体のどの組織の、そしてその組織の中のどの種類の細胞を増殖させることができるかが、全く違ってきます。
脂肪増殖注射は、脂肪組織の増殖に適した成長因子の量と組み合わせを考慮して、PRPに添加したものです。PRPに含まれている成長因子と、添加する成長因子の種類は、それぞれ異なった働きがあります。この脂肪増殖注射は、添加する成長因子(細胞増殖因子)の量も、PRPの中にある成長因子(細胞増殖因子)とのトータルとして、脂肪の増殖に適した分量と種類で構成されています。

脂肪増殖注射の利点

脂肪注入と違って、脂肪増殖注射を行う際には、注入用の脂肪採取のための脂肪吸引がいらない(不要な)ことが最も大きな利点です。
当院の脂肪吸引は、術後の痛みや負担が少なく、非常に体に優しい脂肪吸引に改良されています。しかしそんな当院の改良型の脂肪吸引でも、脂肪注入を受けた患者さんは、「注入を受けた所よりも、脂肪を取ってきたところのほうが、術後の痛みやケアが大変であった」と言う方が大半です。つまり脂肪注入そのものは注射だけですから、本当に軽い処置なのです。しかし、やはり脂肪吸引をしたところは、手術を行った箇所であることには変わりありません。
しかし、脂肪増殖注射の場合には、その、手術であるところの脂肪吸引が不要です。したがって、脂肪増殖注射の術後は、注射を受けた所が少しツッパリ感を感じる程度で、術後の痛みとは無縁の処置が可能です。

20歳代女性。
目の下から頬前にかけて、脂肪増殖注射を2セット施行。
50歳代女性。
手の甲に、脂肪増殖注射を、片手につきそれぞれ1セット施行。

脂肪増殖注射の欠点

脂肪増殖注射は基本的に、ヒアルロン酸注射のような即効性のある処置ではありません。注射処置直後は、脂肪が増量したように見えますが、これは注射液による、所謂、腫れが出ている状態です。この状態は、10日から2週間後に、一度元に戻っていきます。そして、その後、約2~3ヶ月かけて、脂肪の増殖が発生し、効果を発揮してくるものです。また、一度に多くの脂肪を増殖させようとして、同じ個所に、短期間に多数回、または、一度に大量の注射を行うと、希望の状態よりも脂肪が多く増殖してしまいます。一度増殖させた脂肪は、初期にはステロイド薬の注射、その後は脂肪溶解注射で減量させることはできますが、治療には長期間を要し、その間、多数回の通院が必要になります。

脂肪増殖注射の適応

脂肪増殖注射の一番いい適応は、「若返り」です。
加齢・老化とともに、顔面の上の方からは皮下脂肪が失われ、下の方には皮下脂肪が沈着してきます。そのことによって、こめかみや目の下には凹みが生じ、口の横から顎のラインにかけてはふくらみが生じます。また、口の周りからも脂肪が失われ、ホウレイ線やマリオネットラインが深くなったり、唇は薄くなり、鼻の下は長くなります。

これまでは、これらの症状を改善するためには、ヒアルロン酸や脂肪注入で皮下脂肪を膨らませるか、フェイスリフトなどの手術を行う必要がありました。たしかに、皮膚の余りは手術的に切除する必要があるのですが、しぼんでしまった中身については、体積を増加させることが必要です。そのためにも、ヒアルロン酸や脂肪注入を行ってきたわけです。しかし、ヒアルロン酸はその効果が約半年と短く、しかも、脂肪の代りになるほど大量に使用すると、処置費用は非常に高価になります。脂肪注入は、初期の大きな腫れがあり、また、注入用の脂肪を採取するために脂肪吸引が必要なため、敬遠されがちな状態でした。

脂肪増殖注射は、従来の方法である脂肪注入のような、注入用脂肪の確保のための脂肪吸引も不要です。また、ヒアルロン酸注射よりも効果が長持ちします。脂肪増殖注射の主な適応部位は、脂肪注入やヒアルロン酸注射と同じく、頬、目の下のクマ、こめかみ、ホウレイ線、唇、眉間、額、首などです。また、脂肪増殖注射は手の若返りにも非常に有効で、手の甲に注射すると、ふっくらとした、若々しい手に若返らせることができます。

脂肪増殖注射のQ&A

脂肪増殖注射は腫れないのですか?

Q:2年ほど前に、頬に脂肪注入をしたのですが、めちゃめちゃ腫れたあと、腫れがなくなると、少ししか脂肪が残りませんでした。脂肪増殖注射は、腫れないですか?

A:脂肪増殖注射は、「腫れない」と言っていいほどです。最初、処置の直後は、注射したところが盛り上がっていますが、この、盛り上がった状態が、脂肪を増殖させた後の完成形にほぼ近い状態です。

脂肪増殖注射で唇を厚くできますか?

Q:ヒアルロン酸を唇に注射していたのですが、すぐになくなってしまいます。脂肪増殖注射で唇を厚くできますか?

A:可能です。脂肪増殖注射は、自分の脂肪が増加しますので、ヒアルロン酸のように、すぐになくなることはありません。唇も、加齢に伴って薄くなりますので、加齢性の変化として、再び唇が薄くなることはありますが、基本的に、増加した脂肪はそのままですので、効果は永久と考えていいかと思います。

40歳代女性。
上唇とマリオネットラインに、脂肪増殖注射施行。

脂肪増殖注射は凸凹になりませんか?

Q:私は以前、額に脂肪注入を受けたのですが、額が凸凹になってしまいました。こんどはこめかみに脂肪増殖注射を受けたいのですが、額のように凸凹になったりしませんか?

A:脂肪増殖注射は、凸凹にはなりません。それは、脂肪を注入するわけではないからです。注射は、脂肪そのものとは違い、成長因子の注射です。したがって、ドロドロしたものではなく、サラサラの液体ですので、注射した組織(この場合には脂肪組織)に、まんべんなく拡がります。ドロドロした脂肪のように、1か所に固まったりするものではありません。凸凹については、起こり得ないことです。

老化に伴って出てきた唇の周りのシワ?

Q:現在52歳ですが、唇のまわり、とくに上唇の上に、縦にたくさんのシワが入っていて、年寄りのように見えていやです。何かいい方法はありませんか?

A:上唇のたてじわは、鼻の下と唇の間の脂肪が、年齢とともに少なくなり、そして、皮膚も薄くなってしまったためにできてきます。それに伴って、唇も薄くなります。また、歯茎のやせも関係しています。歯茎については、歯周病をしっかりと治すことが先決で、その上でご相談ください。皮膚と脂肪については、脂肪増殖注射が非常に有効です。
これまでの、上唇のたてじわの治療は、ボトックスやヒアルロン酸を使用していました。しかし、これらの効果は一時的で、4カ月から6カ月程度と短いことが欠点の一つでした。また、ボトックスに関しては、唇の動きが変化したり、口をしっかりと閉じられなくなったりといった、「しわはとれたものの・・・」という、不満足な結果も散見されました。しかし、脂肪増殖注射の場合には、原因である皮膚と、皮下脂肪の委縮に対する根本的な治療ですので、このような不満足な症状もなく、さらに、再び老化が進行するまでは、効果は永久的です。また、脂肪注入のような大きな腫れがないので、気軽に治療を受けていただけます。

頬に注射すると、顔が大きくなりませんか?

Q:頬の前のところ、目の下の、鼻の横なのですが、ここに、ゴルゴ線が目立ってきました。以前、ヒアルロン酸で治療したところ、真ん中が盛り上がって、ゴルゴ線が2本できてしまいましたので、諦めていました。脂肪増殖注射がいいと聞いたのですが、ゴルゴ線が2本になったり、顔が大きくなったりしないですか?

A:ヒアルロン酸は、基本的に、皮膚の中の真皮に注射するものです。しかしゴルゴ線は、皮膚の下の、脂肪組織が老化とともに変形してきたのが原因です。それに対してヒアルロン酸を用いれば、このようにゴルゴ線が2つになることは、よくあることです。脂肪増殖注射は、ゴルゴ線の原因である、頬の脂肪の委縮を、元の状態に戻してやることで、ゴルゴ線をなくす方法ですので、2本に増えてしまうことはありません。また、ゴルゴ線の原因は、頬の横の脂肪ではなく、頬の前方の脂肪です。この部分に脂肪増殖を行っても、輪郭には影響しませんので、顔が大きくなることはありません。むしろ、顔が立体的になりますので、引き締まった印象になる方が多いようです。

40歳代女性。
頬前・ほうれい線・口横に、脂肪増殖注射を、合計2セット施行。

脂肪が増えすぎませんか?

Q:脂肪増殖注射に興味があります。そこで、一つだけ、心配なことがあるのですが、脂肪が増えすぎてしまって、アンパンマンみたいな顔になることはありませんか?

A:いくら脂肪が増殖しても、この注射でアンパンマンみたいな顔になることはありません。しかし、予定よりも脂肪が少しだけ増えすぎることはあり得ます。その場合には、当院の強力脂肪溶解注射で治療することもできますし、また、早い時期なら、脂肪の増殖をストップさせる注射もあります。このように脂肪が増えすぎる方は、非常に稀で、しかもその対処法がきちんとありますので、安心して治療を受けてください。

ホウレイ線には注射できますか?

Q:私は、他のクリニックでホウレイ線にヒアルロン酸を注射してきました。効果は半年くらいで、その度に追加注射をするのですが、毎回2ccづつ注射しなければならず、注射をするたびに10万円ほどかかっています。担当医いわく、「脂肪が少なくなってるから、たくさん注射しないといけない」ということですが、もっと経済的にいい方法がないでしょうか?

A:ホウレイ線は、いくつかの要素が複雑に絡み合ってできています。そして、その人によってそれらの要素の占める割合も違っています。具体的には、タルミ、ホウレイ線の内側の脂肪の減少、表情による皮膚の折りたたみの固定化、皮膚自体の線状の溝、などなどです。その担当医の診断が正しければ、貴女のホウレイ線が深いのは、「ホウレイ線の内側の脂肪の減少」が主な原因でしょう。そうすると、その部分に脂肪を増やしてやる必要があります。従来だと、脂肪注入ということになりますが、これは、吸収する分を見込んで、たくさんの脂肪を注入する関係上、大きな腫れが出ます。脂肪増殖注射の場合は、即効性はありませんが、大きな腫れを作ることなく、注射した脂肪を増殖させることができますので、こちらのほうがいいかも知れません。ヒアルロン酸を大量に注射した時と同じような効果が、術後1カ月から2カ月で出現してきます。

40歳代女性。
頬前・ほうれい線・口横に、脂肪増殖注射を、合計2セット施行。

ほほをふっくらさせたいのですが、脂肪が増えたために垂れさがったりしないですか?

A:心配には及びません。たしかに、脂肪が増えた分、重みが増して垂れ下がろうとするのは事実です。しかし、皮下に注射した脂肪増殖注射は、同時に皮膚を引き締める作用もあります。そして、加齢に伴って弱ってしまった、脂肪を支える靭帯も強化します。したがって、頬に脂肪増殖注射をしても、垂れ下がるよりもむしろ引き上がった印象に仕上がります。

50歳代女性。
脂肪増殖注射を、両頬で2セット施行。
術前と、術後3か月目の状態。