エラの角から前方まで4

「アングル・スプリッティング法」は、エラの幅に注目し、それを改善させるという目的を達成させることができます。そういった面において、エラの手術としては、それまでにない、画期的な方法だったと言えます。

しかし、前述したように、顎の骨の形がギザギザになってしまうという、欠点もありました。その欠点は、触れてみないとわからない、つまり、外見上はわからないということで、美容的には大きなものではなかったとも言えます。しかし、この、「外見上は分からない」ということが、もう一つの問題点によるものなのです。いや、問題点というよりも、原著では利点とされていますが、手術の効果を考えると、問題点としていいかと思われます。
それは、咬筋が萎縮しないということです。咬筋とは、奥歯をかみしめた時に力コブができる、エラの所の筋肉です。もうお気づきと思いますが、この筋肉は、エラの骨と同じく、顔の幅を構成しています。これが萎縮しないということは、手術の効果が弱くなるということです。つまり、咬筋が大きな症例では、十分な効果が得られないことです。外板(エラの外側の骨皮質)を取り除くために、手術中に外された咬筋は、術後、残った内側の骨皮質にくっつくことで、萎縮せずに保存されてしまうのです。このことは、自然でなめらかな外見上の輪郭を保つという意味ではいいことです。特に、エラの骨がギザギザになるこの術式では、ギザギザを咬筋が覆って隠してくれます。しかし、咬筋が委縮しないということは、顔の幅に関しても、その分、効果が少なくなるということです。咬筋が委縮しないと効果が少なく、咬筋が委縮すればギザギザが出てくるといったジレンマが、この術式には存在します。