頬・ホウレイ線・こめかみ

頬・ホウレイ線・こめかみの3か所に脂肪増殖注射を受けた、50歳代半ばのモニターさんです。全ての部分に、自然な効果を発揮し、さらに全顔面的効果として、タルミの改善も観察されます。術後は、顔面の自然なふっくら感が出て、若返り効果が十分に発揮されています。

年齢とともに、人間の顔面は、全体として少しずつ皮下脂肪を失っていき、筋肉の体積が少なくなるのと相まって、骨格が明瞭になっていきます。また、骨格が明瞭になると同時に、風船の中身を抜いたのと同様な現象として、皮膚が余ってしまい、たるみの原因ともなります。
骨格が明瞭になるということは、具体的には、こめかみが凹み、頬がこけ、ホウレイ線が深くなってくるということです。したがって、この部分に脂肪を戻してやることで、骨格を隠すことになり、若々しい顔つきを創造することができます。さらに、風船の中身を戻すようにふっくらさせることによって、皮膚の余りによってできてしまったタルミに関しても、軽度から中等度のものであれば、改善させることができます。

脂肪を増加させるには、従来の方法の場合には、脂肪を採取してきて、それを増加させたいところに注射する、脂肪注入と言う手術が一般的です。 

この場合、脂肪を採取するためには脂肪吸引を行う必要がありました。つまり、脂肪を採ってくるところと、脂肪を注射するところと言った、2か所の手術が必要だったわけです。この脂肪増殖注射は、注射液内の成長因子(細胞増殖因子)の働きにより、注射をしたところの脂肪細胞を増加させ、脂肪層の厚みを厚くするため、脂肪を採取する必要がありません。これは、脂肪吸引が不要と言うことです。したがって、脂肪増殖注射は、手術は全く必要なく、純粋に注射処置だけで、希望するところの皮下脂肪を厚くすることができる方法なのです。純粋に注射処置だけですので、術後には手術のような痛みや腫れもなく、3時間も経過すれば普通にお化粧も可能です。

脂肪増殖注射についてですが、この方法は、成長因子(細胞増殖因子)を使用する方法ですので、まず、成長因子(細胞増殖因子)を集めることが必要になります。 

成長因子(細胞増殖因子)は非常にたくさんの種類があり、その配合(種類やそれぞれの量)に応じて、いろんな働きがあります。たとえば、皮膚に作用してシワをとる働きをさせるときには、WPRPFと言う配合を行います。また、Harg療法では、髪の毛を生やして成長させるための成長因子(細胞増殖因子)の配合を行っているわけです。したがって、脂肪増殖注射の場合には、脂肪を成長させるための成長因子(細胞増殖因子)の配合をしなければなりません。
成長因子(細胞増殖因子)は、ペプチド(ペプタイド)と呼ばれる、アミノ酸の集まりです。タンパク質は、ペプチド(ペプタイド)と同じくアミノ酸の集まりなのですが、ペプチド(ペプタイド)はタンパク質よりもずっと小さな分子です。そして、その構造の少しの違いが、成長因子(細胞増殖因子)としての働きを持つか持たないかを決めています。また、成長因子(細胞増殖因子)は非常に保存しにくい物質で、微妙な温度や湿度で容易に変性してしまいます。簡単に言うと、「生もの」であると言えます。したがって、製造からクリニックで使用するまでの流通や輸送過程で、厳しい温度管理や輸送上の注意が必要です。さらに成長因子(細胞増殖因子)は、そういった理由で薬として購入すると非常に高価なものとなります。そこで、WPRPFや脂肪増殖注射、バストグロウなどの場合には、患者さん自身の血液から成長因子(細胞増殖因子)を集め、それに対して不足している種類と量の成長因子(細胞増殖因子)は薬剤として添加することで、コストをダウンさせるのです。しかし、それでも成長因子(細胞増殖因子)は高価な薬ですので、費用としてはヒアルロン酸などのようなわけにはいきません。

高価な成長因子(細胞増殖因子)を使用する脂肪増殖注射ですが、脂肪吸引が不要なこと以外にも、次のような利点があります。 

まず、脂肪注入とは違って、凸凹になることがありません。脂肪注入の場合には、注入する脂肪そのものの流動性が低く、ドロドロとしています。したがって、注入時の手技によっては、不均等に注入されてしまうことも多く、そうなると凸凹の原因になってしまいます。また、脂肪注入は注入した脂肪の100%が生着するというわけではなく、顔面なら平均的50%から30%くらいが目安です。当院の高生着率脂肪注入でも90%です。生着しなかった脂肪は吸収されてしまうわけですが、その吸収が微妙に不均等を生じることがあり、これもまた凸凹の原因となります。当院の高生着率脂肪注入を行えば、10%の吸収しか起こりませんので、非常に微妙な吸収の不均等しか生じません。これがバストなどのボディーに対する脂肪注入であれば、まったく問題にならないのですが、顔面の場合だと、箇所によっては(たとえば瞼や額・こめかみなど)、このような微妙な不均等吸収が凸凹として認知されることがあります。脂肪増殖注射の場合には、注射する薬液が脂肪組織の中に一様に拡散するようになっていますので、不均等な脂肪組織の成長がなく、凸凹ができることはありません。
次に利点としては、皮膚に対しても若返り効果を発揮することです。これは、脂肪増殖注射に含まれている成長因子のうち、皮膚に対して作用するものが含まれているためです。その作用はあくまでもおまけ的なもので、本来の「脂肪を増殖させる」と言ったものとは違って、効果に個人差があるのですが、ほぼ全員の患者さんが感じていることでもあります。具体的には、シミやくすみが薄くなったり、たるんだ皮膚が引き締まったり、あるいはシワが浅くなったりと言ったものです。したがって、増殖した脂肪の重みでたるんだりすることはありませんので、ご安心ください。