首輪のような首の横じわに対して、WPRPFを注射して治療したモニターさんです。
WPRPFは、自分の血液を主原料にした、皮膚の再生治療です。採血の後、その血液から成長因子を取り出し、そこに成長因子をさらに強化するという、非常に強い皮膚の再生能力を持った注射液を使用します。その注射液をシワそのものに注射することによって、シワの部分の皮膚を再生させ、シワの治療へと繋げるのが、その本態です。
採血の量は、使用する薬液の量、つまりシワの数やその長さによって違ってきます。しかし、ワンユニットでおよそ20ml。首のシワなら、前の方だけなら、ほとんどの方がワンユニットで十分な量です。注射の前には、必ず麻酔クリームで皮膚の表面を麻酔します。また、注射の時の針は、注射針の規格で一番細いものを使用しますので、注射の痛みが少ない状態で処置を行います。
術後の経過は、注射後約30分で、注射の薬液による皮膚の盛り上がりがほぼなくなります。そして約1週間後には、一度、元の状態に戻ってしまって、シワが再び現れます。その後、徐々にシワの部分の皮膚の再生が始まり、約2か月かけて、最終結果に到達します。その後の効果の持続は、現在約5年間の追跡観察を行っていますが、その5年間において未だに効果の持続が観察されています。しかしながら、しわなどの加齢・老化現象については、日々積み重なってくるものですから、術後2か月目の状態がそのまま5年間持続するというわけではありません。「もし、処置を受けなければどうだったか?」という仮定のもと、その効果の持続を検討した結果と言うことです。その仮定を実際のものとして比較対象するために、顔面の片方にのみ、WPRPFの処置を施して、しわの左右差の存在について、5年間の観察を行い、この結論を導き出しました。
従来、このような首輪状の首の横しわに対しては、シワ自体を溝と考えて、それを盛り上げるためにヒアルロン酸を注射していました。このヒアルロン酸の注射は、溝としてのしわについては、即効性とその組織増量効果で、それなりの成績を確保していました。しかし、その手技は非常に難しく、往々にして、盛り上がりすぎて、ヒアルロン酸を注射したところがそのまま線状に盛り上がり、両側に新しくシワができてしまうということになっていました。後年、ヒアルロン酸自体の粘凋度(硬さ)が、様々なものが発売され、この首のしわ用に柔らかいものも発売されたのですが、このヒアルロン酸は効果の持続性が悪く、約半年で完全に元の状態に戻ってしまっていました。さらに、首のしわには、ホウレイ線などと違って、縦・横・斜めと、いろいろな方向の動きと言うものがあり、それが一つの特徴となっています。これは、ある位置にある時にシワを盛り上げたときに、別の位置では効果が不十分だったり、逆に盛り上がりすぎていたりと言うことです。このように、複雑な動きのある首の場合、ヒアルロン酸の注射で盛り上げてシワを取るということは、簡単なようで難しいことであり、現在は実際の診療上は相対的に禁忌であると思われます。そしてこれらヒアルロン酸による首のしわの治療に関する問題点を解決したのが、WPRPFであるということができます。
前述のような、ヒアルロン酸による首の横シワ取りの問題点は、皮膚の正常な構造ではなく、しわに対してヒアルロン酸と言う注入物を注射することであると言えます。そこでWPRPFなのですが、WPRPFは注入物ではなく、皮膚を再生させる注射薬です。シワがとれる原理としては、シワを物理的に盛り上げるのではなく、皮膚の再生を通して皮膚自体を若返らせ、その結果、シワが取れるというものです。つまり、シワがあったところには、ヒアルロン酸などの注入物ではなく、正常な皮膚の組織が存在するということです。そして、皮膚自体の再生、つまりは若返りを図っていますので、WPRPFを受けたところの「肌年齢」とも言うべきものが、時計の針を逆回転させた形になっているのです。すべからく、シワというものは、若い時には気にならなかったものが、年齢とともに気になり始めるという症状です。そこで、皮膚自体を若返らせることで、そのシワが取れるということも、このWPRPFのシワ取りの原理でもあります。
首の横シワの発生病理は、少し複雑です。そして、WPRPFがどうしてそれに対して最も有効な治療であるかというのも、本当に原理を全て説明するとなると、本が一冊著せるほどになるでしょう。ここで、簡単に、首の横シワの発生病理について記すとするならば、首の皮下構造について理解してもらわなければなりません。首の皮膚は、顔面の筋肉同様、皮下の筋肉に繋がっています。その繋がり方は、皮下から筋膜に向って、繊維状のコラーゲンの繊維が、皮下脂肪層の中を通る形です。そしてその繋がりの部分が、ちょうど首の横シワの部分に相当します。つまり、しわに沿って皮膚と筋肉が、皮下脂肪を通して連続性を持っているということができます。その皮膚と筋肉の繋がりは、やはり皮膚を筋肉と同じ動きにし、皮膚のその他の部分とは違った形で動かします。具体的には、皮膚と筋肉の層が、皮下脂肪層を挟んで別々に大きくずれるようなときにも、この皮膚と筋肉の繋がりの部分は、筋肉に引っ張られた状態になり、引っ込むということです。
首の横シワというのは、このように皮膚が首の動きとともに筋肉に引っ張られる動きを何回も繰り返すことで、皮膚の同じところが何回も折りたたまれ、線状に皮膚が薄くなってしまった状態です。また、皮膚自体は老化とともに全体的に薄くなることも、この病因を促進してしまいます。さらに皮下脂肪層もまた、老化とともに皮膚と同様にハリと弾力を失います。そうなると、その皮下脂肪層は皮膚と筋肉の間にあるため、皮膚と筋肉がコラーゲンの繊維で繋がっていないところの皮膚と筋肉の動きは、ますますバラバラになってきます。すると、皮膚と筋肉が繋がっているところは筋肉と同じ動きをしますので、そこは首の動きによって、より深く引っ込むようになります。
このようにして次第に深くなってくる首の横シワは、何回も折れ曲がって線状に薄くなってしまった皮膚を、元のように戻してやることと、皮下脂肪層の弾力を戻してやることです。比較的若い、こちらのモニターさんは、首の横シワに関してもあまり深さがないこともあり、今回は皮膚のみの問題の解決として、WPRPFでの解決で十分であったということができます。
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