頬に脂肪吸引を行って、フェイスリフトのような効果

表層脂肪吸引でフェイスリフトのような効果を出したモニターさんです。

本来は、本格的なフェイスリフトを受けた方が、もっともっとよくなる状態です。しかし、本格的なフェイスリフトとなると、腫れや内出血など、術後のダウンタイムの問題があります。しかも、本格的なフェイスリフトとなると、切開を伴う手術ということになりますので、術後一定期間は洗顔や洗髪の制限があります。そこで、こちらのモニターさんは、効果の大きさよりもダインタイムを重視して、表層脂肪吸引を選択しました。表層脂肪吸引の場合には、翌日からの生活制限はほとんどなく、翌朝の洗顔や洗髪も可能です。また、フェイスリフトのように耳の前や髪の中に傷を残すこともありませんので、術後3日ほどの腫れが収まれば、手術したことは、外見上は分かりにくいものとなります。

表層脂肪吸引は元々、皮下脂肪を少なくするとともに、皮膚のタルミを生じさせないように開発されたものです。それまでの脂肪吸引が、皮膚から遠くの深い皮下脂肪層のみを吸引していたのに対して、細くて先端が特殊な形状をしたカニューレで皮膚の直下の脂肪を吸引することで、皮膚の引き締め作用を出すことができるようにしたのが、表層脂肪吸引です。それは、サイズダウンだけでなく、治癒過程での皮膚に対する影響が現れるためです。特に真皮への作用によって、皮膚のタイトニング効果へとつながります。また、皮膚の直下についている皮下脂肪の量を減少させることで、重力によって皮膚を引っ張り下げる要素を軽減することが、皮膚のタイトニング効果を高めています。したがって、中等度から軽度のたるみに関しては、皮膚を切開して切除しなくても、皮膚のタイトニング効果から来る皮膚の縮みによって、リフティング効果も得られるのです。

このような表層脂肪吸引のフェイスリフト効果を利用して若返りを図るのが、こちらのモニターさんが受けた表層脂肪吸引の治療原理です。顔面の表層脂肪吸引の実際の手順は、次のようになります。
1) 顔面を消毒した後、局所麻酔の注射を行う。
やはり、表層脂肪吸引は切開を伴わない(切開しない・メスを使わない)とはいっても、脂肪組織を吸引する手術ですから、麻酔は必要になります。
2) 皮膚に注射針でカニューレを挿入する穴を開ける。
顔面の表層脂肪吸引の場合、使用するカニューレは非常に細いものですので、それらを脂肪組織に挿入するための穴は、注射針で作成するだけで十分です。したがって、最終的にはそれらの穴は全く残らないと思っていただいて結構です。
3) まず、脂肪を減らしたいところの脂肪を吸引する。
具体的には、口の横の膨らんだ部分と、ホウレイ線の上の方の部分の脂肪組織です。この部分の脂肪組織を溶解(融解)してボリュームを減少させておくことで、重みをなくし、皮膚を下に引っ張る力を弱くしておきます。
4) スキンタイトニングが必要な部分に表層脂肪吸引を行う。
スキンタイトニングが必要だが、ボリュームを減らしたくない部分については、吸引を行わずにカニューレを通すだけの処置を行う場合があります。また、顔面の形のバランスを考慮したり、リテーニングリガメントの位置の関係から、むしろボリュームを増やしたほうが良い箇所には、吸引した脂肪を注入する場合もあります。
5) 圧迫用のマスクを着用して終了。
圧迫用のマスクは、翌日、患者さん自身で外していただきます。マスクを外した後は、洗顔や洗髪・お化粧の制限がなくなり、通常の生活に戻っていただけます。

表層脂肪吸引・フェイスリフトの術後の経過ですが、フェイスリフトと比較すると、かなり軽度の負担しかありません。まず、表面に切開創がなく、小さな針穴だけですので、翌日から洗顔や洗髪とともにお化粧が可能なことです。それがフェイスリフトとなれば、どんなに手抜きをした安物のフェイスリフトであっても、術後3日間はこれらの行為に関しては何らかの制限があります。しかも、そのようなフェイスリフトはすぐに元通りとなり、しかも傷の幅が広くなってきます。場合によっては耳たぶが仏像のように伸びてしまうこともあるのです。このような、すぐに戻ってしまうフェイスリフトを、私たちのような本格的なしっかりとしたフェイスリフトを行う美容外科医は、陰で「フェイクリフト」と呼んでいます。

本格的なしっかりとしたフェイスリフトは、表層脂肪吸引よりも大きな効果が望めます。しかし、前述のように洗顔や洗髪の制限や、術後1週間は大きな腫れに見舞われます。これは、やはりしっかりと大きな範囲での剥離を行い、筋膜や靭帯を移動させるがゆえに、どうしても避けられないことです。しかし、表層脂肪吸引の場合には、このような制限は翌日からなくなり、腫れについてもおよそ術後3日間の我慢でほぼクリアできます。つまり、表層脂肪吸引は、大きなタルミに対しての効果は本格的なフェイスリフトには及びませんが、軽度のたるみから、こちらのモニターさんのような中等度のたるみに対しては、術後のダウンタイムのことを考えると、非常に有効であると考えられます。つまり、総合的に考えると、たるみに対しては、重症の場合は本格的なフェイスリフトを行わざるを得ませんが、その他の場合には表層脂肪吸引で十分に対応できるということです。つまり、幅の広い傷を残し、全くと言っていいほどたるみに対して効果のない安物のいわゆる「フェイクリフト」は、まったく出番がないということになります。