ひざの内側・ふくらはぎ・足首

ふくらはぎ・足首・膝の内側に、脂肪吸引を行った、20歳代後半のモニターさんです。
ふくらはぎについては、脂肪層・筋肉層・骨格と、3つの要素が複合的に関与して、その太さが成立しています。脂肪吸引は、脂肪をカニューレと言う管を使って除去する技術ですので、当然のことながら、その効果は脂肪層に対してのみのものとなります。したがって、脂肪層が分厚い方に関しては、その効果が大きく出る傾向にあり、そうでない方は、効果も小さいと考えていただくと正解です。そして、その場合には、ふくらはぎにボトックスを注射するのが、脂肪吸引や脂肪溶解注射といった治療を受けるよりも、より効果的でもあります。

ふくらはぎと足首は、年齢とともに太くなってくる方が、多く見受けられます。ふくらはぎと足首の解剖学的特徴として、女性の場合、やはりむくみやすいと言うことができます。この、むくみと言うのが、ふくらはぎを太くしてしまう、一つの大きな原因ではないかと思われます。むくみというのは、医学用語では「浮腫」と言います。浮腫が発生するのは、血液中の水分が、血管から滲み出して、周囲の組織に貯留するためです。貯留すると言っても、水たまりのように、水分が固まって存在するのではなく、高野豆腐が出汁の中で煮付けられると、だし汁を含んで膨れる現象を想像していただいた方が、状態を良く表していると思います。つまり、血管の周辺にスペースが存在するのではなく、スポンジ状の組織が水分を含んで体積を増大させるということです。そのような現象がふくらはぎに発生すれば、ふくらはぎは太くなります。 むくみが、なぜ、ふくらはぎに発生することが多いのでしょうか?

それは、むくみの発生機序と、ふくらはぎの解剖学的特徴によります。体の末梢に血液を送るのは動脈、末梢から血液を心臓に帰すのが静脈です。動脈は、次々と枝分かれして毛細血管になり、その毛細血管は、今度は次々と合流して、静脈になります。これらの血管の構造は、心臓を中心として、人体の奥から表面に向って、くまなく張り巡らされています。つまり、胴体から手足に向って、また、骨に近いところから皮膚に向って、張り巡らされています。そして、皮下組織としての脂肪層では、たくさんの毛細血管が、網目のように存在します。 動脈は、心臓で発生する脈拍に伴う血圧を支えるために、その壁は比較的分厚く、弾力性に富んでいて、血液中の水分が滲みだすということは、非常に稀です。また静脈は、通常であれば内部の血圧が低いため、健康な状態であれば、その低い血圧を支えるくらいの強度を持っています。前述の、血管から血液の中の水分が滲み出すという現象は、動脈と静脈の間に存在する、毛細血管で発生します。毛細血管は、血管を構成している細胞が、薄いところでは1層のみで、それらの細胞間には、水分や栄養分を、周辺の組織に渡すために、小さな隙間が存在します。この隙間から、過剰に水分が滲み出してしまい、それを回収するリンパ管の許容量をオーバーすると、浮腫(むくみ)が発生します。

むくみが発生する直接的な原因である、毛細血管からの過剰な水分の漏出ですが、フィラリアや甲状腺機能低下症などの、病的な状態を除けば、そのほとんどが、単純な静脈圧の上昇によります。静脈圧の上昇を、簡単に自分で実験してみるには、腕をゴムで軽く10分ほど縛ってみることです。加圧トレーニングのように強く縛ると、動脈まで圧がかかり、うまく「むくみ」を再現できません。あくまでも軽く縛ることです。そうすると、手の甲が少しずつ膨らんでくるのがわかります。分かりにくいようでしたら、縛っていないほうの手と比較するといいでしょう。これが、いわゆる「むくみ」を人工的に作った状態です。このように静脈圧が上昇すると、その圧力は毛細血管まで波及し、毛細血管内の血圧も上昇し、細胞と細胞の間の隙間からの水分の滲みだしも、増量します。また、毛細血管内の血圧上昇は、毛細血管の直径を太くします。毛細血管は、前述のとおり、細胞と細胞の間に隙間がありますので、直径が大きくなると、その隙間も大きくなります。血圧と隙間の拡がりが、毛細血管周囲への水分の漏出を増やし、リンパ管の処理量を超えて、むくみが発生して、手の甲を膨らませます。

これと同じ現象が、ふくらはぎには発生しやすいということです。ふくらはぎは、立位や座位の際、人体の下部に存在し、元々静脈圧が高くなる傾向にあります。それは、心臓よりも下に位置することにより、重力の関係上、血液が心臓に戻りにくく、静脈内に血液が貯留する傾向にあるためです。しかし心臓は、上半身、特に脳への血流を保つために必要な血圧を供給しますので、動脈から入ってくる血液は、上半身と変わりありません。すると、静脈圧の上昇により、毛細血管の方に血液が溢れるような形となり、前述の機序で、むくみが発生するのです。

しかし、なぜ、一晩寝ている間に退いてしまう「むくみ」が、「ふくらはぎ」を太くしてしまうのか、ということを疑問に感じられるかもしれません。たしかに、むくみのせいで、一晩にしてふくらはぎが太くなってしまうことはありません。しかし、人間が眠っている時間は、起きて立っていたり座っていたりする時間に比べれば、2分の一か3分の一に過ぎません。つまり、毎日毎日、多くの時間が「むくみ」を作る時間として作用しているわけです。また、むくみが発生すると、その原因である水分は、動脈血が溢れたものではなく、酸素濃度が低い水分ですから、むくんだ組織(この場合は脂肪組織)に対する酸素供給量が減少します。すると、簡単に言えば、脂肪組織内の脂肪幹細胞の、増殖スイッチがONになります。つまり、むくみによる酸素供給量の減少を、怪我などの組織障害による酸素供給量の減少と取り違えて、脂肪幹細胞が、増殖を始めるのです。

このように脂肪組織内の脂肪幹細胞の、増殖スイッチがONになると、脂肪組織は増量を始めます。幹細胞の増殖スイッチがONになる作用は、筋肉トレーニングの一つである加圧トレーニングで応用されています。この場合には、動脈を狭くして酸素の供給量を減少させることで、筋肉の幹細胞の増殖スイッチをONにします。加圧トレーニングは短時間であり、むくみを発生させる元になる血液の、組織への流入量を減少させていることも相まって、脂肪組織には慢性的なむくみは発生せず、筋肉のみの増量に留まります。しかし、ふくらはぎのむくみによる脂肪幹細胞の反応については、長時間にわたることや、血液の組織への流入量が増加していることから、増殖スイッチがONになっている時間も長く、しかもそれがOFFになるのにも時間がかかります。さらに、それらが毎日の事として断続的に発生するため、脂肪組織の増殖が発生してきて、ふくらはぎを太くしてしまいます。

では、この脂肪組織の増殖と言う現象を予防するには、どうしたらいいかということになってきます。まず、根本的な原因である、「むくみ」を発生させないようにすることです。そのためには、まず、適正な体重のコントロールが必要です。体重で脚に負担をかけることは、静脈血の酸素濃度の低下を招きます。また、長時間の立ったままの姿勢や、座ったままの姿勢も、避けるべきです。仕事などで、どうしても仕方のない時には、軽く足踏みをしたり、歩くことです。脚を動かすことで、筋肉が動き、その中を走行している血管に対してマッサージを行う作用が発生します。そうなることで、静脈を通した、血液の心臓側への還流が助けられ、静脈圧の慢性的な上昇を回避できます。さらに、脂肪層の中を走行している静脈に対しては、その静脈圧に負けないように、脂肪組織内の圧力を高めることです。具体的には、足首から膝にかけて、ふくらはぎを圧迫するようなストッキングなどで、締め付けておくことです。こうすることで、静脈圧の上昇によって、毛細血管から水分が滲み出そうとしても、外側の組織の圧力がそれに対抗し、滲み出しを防止してくれます。以上をまとめると、体重のコントロール・運動・圧迫ストッキングの3つが、重要であるということができます。

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