脂肪増殖注射を、こめかみと頬の前面(目の下からゴルゴ線)に行った、50歳代前半のモニターさんです。この範囲に、処置範囲合計で、約12㏄の増殖を行っています。術後には、ふっくらとした若々しい風貌と同時に、シミが薄くなったことも、観察されています。シミが薄くなった理由としては、配合した成長因子のうち、皮膚の正常化に働くものも、含まれているためだと思われます。
この処置は、脂肪増殖注射ですから、脂肪吸引で脂肪を採取する必要がありません。つまり、手術ではなく、注射処置です。脂肪を増殖させるのは、注射液の中の成長因子です。この成長因子には、たくさんの種類があり、その組み合わせと量によって、いろいろな働きがあります。まちがった配合を行えば、逆に脂肪が萎縮してしまったり、皮膚にたるみやシミを作ってしまうことも、ありえます。当院では、そのようなことがないような成長因子の組み合わせと量を研究し、脂肪増殖注射を完成させました。また、成長因子の名称は、発見された当初の働きを、そのまま名前にしています。例えば、繊維芽細胞成長因子(増殖因子)は、繊維芽細胞を増殖させる成長因子として発見されましたが、実際には、神経細胞の増殖も促進します。名前と働きが必ずしも一致しないというのは、混乱の元かもしれませんが、これはそのうち、再生医療の学会などで、整理されていくことでしょう。
成長因子には、たくさんの種類があります。そして、その一つ一つが有効に働く濃度も違います。
さらに、ある成長因子が、一つだけの働きをするというわけではなく、一つの成長因子にたくさんの働きがある場合も多いといった具合です。ある種の成長因子は、濃度によってその働きが異なっています。ある成長因子と、ある成長因子を混合すると、単独で使用する場合とは異なった働きをすることもあります。
このように、成長因子の働きは非常に複雑で、それらの配合と濃度は、それぞれの作用目的に合わせて、慎重に行わなければなりません。当然、脂肪増殖注射の場合には、脂肪組織内の幹細胞が、脂肪細胞に増殖・分化するのに最適な成長因子の配合を、おこなっています。
脂肪増殖注射でシミがうすくなったり、シワが浅くなったりする理由については、はっきりとした理由は分かっていません。
しかし、脂肪増殖に使用する、いくつかの成長因子(細胞増殖因子)の中には、表皮の成長を促す働きのあるものや、真皮の細胞を成長させる働きのある物もあります。つまり、表皮のシミを、新しい細胞に置き換えることにより、シミを薄くすることができ、また、真皮の厚みや弾力性を増加させることによって、シワを浅くすることができるのだと、推測されるわけです。シワやたるみについては、脂肪の増殖に伴って、風船を膨らませたような状態になることで、シワは浅く、たるみは引き上げられるというのも、一つの理由でしょう。
どちらにしても、脂肪増殖注射は、皮下脂肪が増えて、ふっくらとした自然な若返りになるばかりでなく、シワやタルミ、シミの改善まで、多方面にわたってのおまけがついてくることがあるという、非常に有用な方法であるということができます。
脂肪増殖注射の効果の一つに、タルミの改善があります。
皮下を広く剥離して、筋膜や靭帯まで、しっかりと処理をする、本格的なフェイスリフトのような、完璧な効果までは望めませんが、中等度のたるみであれば、改善することができます。
そもそもタルミと言うのは、皮膚の余りと、皮下脂肪の下がり・筋肉の緩みの、3つの要素が組み合わさって発生します。これら3つの要素は、お互いに影響し合っています。皮下脂肪が少なくなると、いわゆる顔面のふくらみが減少し、その分、皮膚が余ります。筋肉がゆるむと、その上にある皮下脂肪は、垂れ下がりやすくなります。皮膚の余りは、皮下脂肪が垂れ下がる余地を作ってしまいます。
脂肪増殖注射は、皮膚の余りに対しても、皮膚を引き締める効果を発揮して、シワやたるみを改善します。筋肉については、靭帯や筋膜に作用して、緩みを改善します。また、メインの効果である脂肪を増殖させることで、萎縮した脂肪を復活させ、皮膚の余りを減少させます。
「青筋」と言うものをご存じだと思います。怒った時に、主に、こめかみに出る、青筋のことです。
これの本体は、血管、特に静脈なのですが、これは、加齢・老化とともに目立つようになります。周囲の人々を見渡しても、年配の人ほど、これが目立つ傾向にあることが分かると思います。この青筋は、見えてしまうと非常に神経質な印象を与え、本人は気付いていないことが多いのですが、美容的には非常にマイナスな現象です。さらに、この青筋は、皮膚が白い人ほど目立ちます。つまり、美白にいそしむほど、目立ってくるわけです。そして、加齢によって皮下脂肪が薄くなれば、皮膚の表面と静脈が近くなり、さらに目立つことになります。
脂肪増殖注射は、皮下脂肪を増やす注射ですから、この青筋に関しても、目立たせなくする効果があります。また、配合している成長因子の一部は、真皮の厚さを増加させるため、青筋が透けて見えるのを防止します。したがって、脂肪増殖注射で皮膚の色が白くなっても、青筋については、逆に目立たなくなるといった減少が発生します。
限定解除要件
副作用・合併症:成分に対するアレルギー(非常に稀)
費用:45万円