バッグ挿入による豊胸術

バッグ挿入による豊胸術は、1960年代半ばより始まったとされます。その後約50年間にわたって、材質や内容物の改良・変遷、さらに形の改良と変遷を経て、今日に至っています。

40歳代半ばのモニターさんです。腋の下の切開線から、200㏄のバッグを使用して、豊胸しています。

 

40歳代後半のモニターさんです。腋の下の切開線から、240㏄のバッグを挿入して、豊胸しています。写真は順に、術前・術後1カ月・術後3ヶ月となります。

 

20歳代前半のモニターさんです。骨格的にはしっかりとした方で、スポーツをしている関係上、筋肉も十分についています。手術は、腋の下をシワに合わせて切開し、大胸筋上・乳腺下にポケットを作成して、バッグを挿入しています。

術中は、乳腺を支えているクーパー靭帯がしっかりとしていて、それらを引き延ばして、十分な大きさのポケットを作成するのに手間取りましたが、手術時間は約50分で無事に終了できました。こちらのモニターさんは、 元々、少し猫背なのが残念ですが、これから努力して猫背を治すということです。

 

20代女性のモニターさんです。 

脇の下からのアプローチで手術しています。
使用したバッグは、170ccです。

30代女性、授乳後のモニターさんです。 

脇からのアプローチで、使用したバッグは230ccです。

20代のモニターさんです。 

使用バッグは230ccです。
ブラサイズはAAからDへと変化したそうです。
ブラサイズについては、メーカーやモデルごとにその基準が異なりますので、あくまでも目安としたほうがベターです。実際のバッグサイズの決定には、診察時にサイザーを使用して決定します。

20代前半のモニターさんです。 

かなり痩せています。腋から170ccのバッグを挿入しました。
痩せている方は、日本人で200cc以上のバッグを挿入した場合、硬さや違和感を感じる方が多い傾向にあります。特にアンダーバストが70cm以下の場合には、注意が必要です。

30代半ば授乳後の女性のモニターさんです。

腋からのアプローチで、使用した豊胸バッグは230ccです。
授乳後の場合、一度乳腺の発達によって皮膚が伸ばされているため、大きめのバッグを使用しても自然な形になりやすい傾向にあります。

 

使用するバッグの形について

バッグの形は、「ラウンド」「アナトミカル」「ハイブリッド」の3種類があります。患者さんの希望や胸郭の形などを参考にして、提案・選択します。

ラウンド型

丸い・円形
一番よく使用されている形。

  • 利点:痩せていて、バストが小さい方でも、しっかりボリュームが出せる。
  • 欠点:上側の輪郭が強調されて、丸みが目立ちやすい場合もある 。

 

アナトミカル型

涙型で、上下方向に縦長

  • 利点:バストの下半分の部分を大きくしたい場合に向いている。立っているときは自然な形状である。
  • 欠点: 横になると不自然になりやすい。
    マッサージが煩雑。基本的には、テクスチャード・タイプなので、リンパ腫発生を考慮して、定期的な検診が必要。
  • 拘縮を起こしたときには、バッグの表面にシワができ、折れ曲がりやすい。

 

ハイブリッド型

上から見ると丸い。横から見ると涙型に近い 。

  • 利点:
    立っていても、横になっても自然な形状 。
  • 欠点:
    中のシリコンジェルが、シェルの面積に比して少ないので、リップリングの発生率が高くなる可能性あり。また、アナトミカル型同様に、基本的にはテクスチャード・タイプなので、リンパ腫発生を考慮して、定期的な検診が必要。

 

バッグを挿入する層について

バッグを挿入する層については、大胸筋と言う、胸板の筋肉を中心に、分けられています。これも、患者さんの希望や胸郭を含めたバストの状態によって、提案・協議します。

 

術前の様子

バストの表面から順に、皮下脂肪・乳腺・乳腺下脂肪層・大胸筋となります。

 

乳腺下法

大胸筋の上にバッグを挿入する方法

利点

  • 術後の痛みが、大胸筋の下に入れるよりも楽。
  • マッサージの痛みも少ない。

欠点

  • 拘縮を起こしたときには、変形しやすい。
  • リップリングの発生率が高い。

 

大胸筋下法

大胸筋の下にバッグを挿入する方法

利点

  • 表面から筋肉を隔てて、バッグが遠くにあるので、バッグの質感が触れにくい。
  • 同様な理由で、バストの上のほうに、バッグの縁が見えにくい。
  • 3度以上のカプセル拘縮の発生率は乳腺下に比べると低い。

欠点

  • 術後の痛みが、強く長い。
  • マッサージの痛みも強い。

 

二層法

バストの上のほうは大胸筋下
下のほうは乳腺下

利点

  • バストの上のほうに、バッグの縁が見えにくい。
  • 術後のマッサージの痛みは、大胸筋下よりも、やや楽。

欠点

  • 大胸筋下法同様、術後の痛みが、強く長い。
  • 乳腺下法同様、リップリングの発生率が高い。

カプセル拘縮

バッグ挿入による豊胸術の、最大の副作用・合併症は、乳房が硬くなることです。これを、カプセル拘縮と呼びます。人体は、異物が挿入されると、それを排除しようとします。しかし、豊胸術のように人体の奥深くにそれらが挿入された場合には、排除できないため、隔離しようとします。その過程で、コラーゲン繊維を主体とする膜を、挿入された異物の周辺に造ります。この膜のことを、カプセルと呼んでいます。体質的なものも大きく関与するのですが、このカプセルが分厚く形成され、それが縮んでしまうことを、カプセル拘縮と呼びます。このカプセル拘縮が発生すると、中のバッグが締め付けられて、バストが硬くなります。さらに進行すると、ボールのように丸く球体状に変形します。そしてさらに進行すると、痛みが出てきます。このような、バストのカプセル拘縮については、Backer分類というのが有名です。Backer分類は、カプセル拘縮の程度を4つに分類し、以下のようにランクをつけています。

カプセル拘縮のBacker分類

  • 一度:拘縮なし
  • 二度:医師・患者の、どちらかが拘縮を感じる
  • 三度:医師・患者の双方が、拘縮を感じる
  • 四度:変形

通常、2度までは、特に治療はせず、経過観察となることが多いようです。三度の場合には、カプセルを切って拘縮を解除する手術や、同時に小さめのバッグに入れ替える手術になります。四度の場合には、基本的な方針は三度と同じなのですが、拘縮の再発率も高いため、脂肪注入など、他の手術に切り替える方が多いようです。

では、このカプセル拘縮の発生率は、どれくらいあるのかということが、問題です。3度以上のカプセル拘縮の発生率は、一般的に、年間1%づつ増加していくようです。つまり、術後一年以内の発症率は1%。2年目になると2%。3年目になると3%といった具合です。すると、3年以内にカプセル拘縮が発症するのは、1+2+3=6%ということになります。4年目で4%ですから合計10%。4年以内にカプセル拘縮が発生するのは、10人に一人程度と言えます。5年目で5%ですので合計15%。10年経つと55%ですから、約半数の患者さんが、10年以内にカプセル拘縮を発症するということになります。

バッグでの豊胸術の術後は、このようなカプセル拘縮をできるだけ防止するために、乳房のマッサージが必要になります。マッサージの方法は、手術で挿入されたバッグを、力を入れて上下左右に動かして、手術時に作成されたポケットを広く保つことが基本になります。このマッサージを開始するのは、術後できるだけ早期がいいのですが、一般的には術後1週間目からの開始が推奨されます。しかし、この時期はまだ、術後の痛みがあり、マッサージをするにも、痛みに耐えていただく必要があります。マッサージの頻度はできるだけ高頻度が良いのですが、少なくとも朝晩、施行することが必要です。このような強いマッサージを、術後、最低3か月間は毎日、行っていただきます。その後も、1日に1回は、マッサージが必要となります。

医療広告限定解除要件
副作用・合併症:カプセル拘縮
費用:80万円