表層脂肪吸引(お腹)

あまり大きなお腹ではないのですが、上腹部・下腹部・ウエストから背中・腰まで、ぐるりと一周する形で表層脂肪吸引を施行したモニターさんです。

正面からの写真は、順番に術前・術後1週間目・術後1か月目・術後約3か月目となっています。内出血や腫れ、あるいは効果が出てくるまでの期間などを知るのに参考にしてください。他の方向の写真については、術前と、術後約3ヶ月目のものです。

ただし、大量の脂肪を脂肪吸引で処置した場合には、術後の経過はもっとゆっくりになりますし、内出血も多い傾向にあります。さらに、術後の幹部の圧迫についても、きちんとフィットした矯正下着のような、圧迫力の強いものを着用している場合と、そうでない場合には、やはり差が出ます。また、手術を受ける部位によっても、経過に多少の差が生じるというのが、現実です。この症例写真については、ある程度の参考になりますが、手術を受けた方全員が、全く同じ経過を辿るということではありませんので、ご注意ください。しかし、術後およそ1週間で、よく見れば少し効果があるという程度になることは、お分かりになるかもしれません。

表層脂肪吸引の術後経過を決定づける要素としては、まず、その処理する脂肪組織の量と言う要素があります。脂肪組織の中には、皮膚やその他の組織と同じように、たくさんの毛細血管があります。毛細血管は人体のあちらこちらにくまなく分布していて、従って、どこに怪我をしても、必ず出血するわけです。当然のことながら、脂肪組織にも毛細血管は分布しており、その中の血流によって、脂肪組織を構成している脂肪細胞も酸素や栄養を受け取り、壊死に陥らず、そこに存在することができるのです。表層脂肪吸引は脂肪組織を吸引するわけですが、そこには毛細血管も存在し、脂肪細胞を吸引すれば当然、毛細血管の断端が露出します。そこで、多少の脂肪組織内の出血がみられるわけです。勿論、通常の脂肪吸引とは違って、毛細血管の断端の存在が少ない分、出血そのものはかなり少ないといえます。しかし、それが大量の脂肪組織に及ぶ場合には、やはり、それらの出血の合計は、少ない脂肪組織に対する処理の場合と比べれば多くなり、それに伴って内出血も多くなります。つまり、表層脂肪吸引で処理する脂肪組織の量が多いほど、内出血も多いということです。表層脂肪吸引ではなく通常の脂肪吸引の場合には、その現象がもっと深いところにも存在すると考えるといいでしょう。

表層脂肪吸引の術後経過を決定するもう一つの要素は、手術した部分に対する術後の圧迫です。表層脂肪吸引の場合には、通常の脂肪吸引よりも、術後の圧迫固定の期間やその厳重性については、かなり軽度のものであると言えます。しかし、きっちりとフィットした、圧迫の効く下着を準備しておくことは、大切なことです。通常、脂肪吸引の場合には、脂肪吸引を行った箇所に、厚さ約1㎝のスポンジを載せ、その上から専用の圧迫ガードルなどで押さえつけて圧迫固定を施します。この圧迫固定は術後約24時間の間、そのまま外さずに継続します。その後はスポンジを取り去り、全身のシャワーが可能になります。そして圧迫も、専用のガードルなどではなく、通常の矯正下着的な圧迫の効いた下着にて行うことになります。

しかし表層脂肪吸引の場合には、術後の圧迫は、最初から圧迫の効いた通常の下着で行います。実際には手術が終了したら、あらかじめ準備していただいていた、そのような圧迫の効く下着をすぐに着用していただく形になります。このように、通常の脂肪吸引と比較して、表層脂肪吸引の場合には、その術後に要する圧迫が軽度のもので済み、そのことが、手術翌日からの社会復帰を可能にしています。しかしながら、表層脂肪吸引の場合でも、圧迫が全く不要であるということではありません。圧迫は軽くていいだけで、圧迫を行わないと、それなりに良くないことが発生します。それらの中で一般的なことなのが、術後の腫れと内出血です。そして、下着での圧迫が弱すぎたり、不均等であったりすれば、圧迫の弱いところは術後の腫れも大きく、内出血も高度に発生します。

以上より、表層脂肪吸引術後の腫れや内出血を、できる限り軽度で早く消失させたいということなら、どのようなことが必要なのかとが、既に明らかであると言えます。

まずは、術後における適切な手術部位の圧迫。適切な時期に適切な強さで、きちんと手術部位をカバーした圧迫は、内出血や腫れを最小限に防ぐことができます。そして、手術の結果を欲張らないことです。前述のように、一か所から大量の脂肪を取ろうとすれば、それだけ内出血が増加します。脂肪層の約半分の厚みと言ったところが、脂肪をとるおおよその目安と考えれば、長期にわたる大きな内出血の跡も、防止できます。

また、これら2つのことを守ることで、術後の痛みも少なく、表層脂肪吸引の術後経過を通じて、比較的快適な日常生活を送ることができるでしょう。

基本的に、表層脂肪吸引にしろ、通常の脂肪吸引にしろ、さらに脂肪溶解注射であっても、脂肪組織を取り去るということは、その後は、脂肪組織の中には瘢痕(傷の組織)ができます。この瘢痕ですが、術後の経過や手術自体の効果について、微妙な影響を与えるものであることが常識とされています。

瘢痕とは、一般的に傷として認識されるものです。特に皮膚の表面にあるものは、傷痕といった形で言われていますが、これは皮膚だけにできるものではなく、手術などで処置を加えた内臓や筋肉・脂肪など、切開などの障害を加えた人体の組織には全て、発生するものです。例えば、胃がんで胃を切除したとすると、術後も食べ物を食べ、水が飲めるように、その残りの胃と腸を縫合します。縫合して胃と腸を接触させておくことで、その間が癒着し、水や食べ物がそこから漏れずに消化管を通っていくことになります。この、胃と腸を癒着させるのが瘢痕です。また皮膚に関しても、傷はいくらきれいに縫い合わせても、ある程度の幅が残ります。その幅の中に存在するのが、瘢痕です。このように、瘢痕というものは、組織と組織を繋げてくっつけるものです。簡単に言うと、人体が作り出す接着剤であるということができます。そしてこの瘢痕が、表層脂肪吸引や脂肪吸引・脂肪溶解注射の術後の経過にも、微妙に影響を及ぼすのです。

表層脂肪吸引や脂肪吸引は、カニューレと言う管が皮下脂肪層に通っていくため、皮下脂肪にはたくさんのトンネルが作成されます。脂肪溶解注射の場合には、物理的にトンネルができるわけではありませんが、顕微鏡単位での話になると、溶解されて死んでしまった脂肪細胞が存在していたところは空洞が作成されるということになります。つまり、表層脂肪吸引や脂肪吸引の場合には、術後は、皮下脂肪層が比較的目の粗いスポンジ、脂肪溶解注射の場合には目の細かいスポンジのような状態になると考えていただければ、分かりやすいと思います。そして術後には、このようにして作成されたトンネルが潰されて、皮下脂肪層の厚みが減少します。その、トンネルが潰されるときに、トンネルの床と天井をくっつけておくのが、瘢痕です。つまり、瘢痕は生体の接着剤なのです。

そこで、術後の圧迫によってこのトンネルを上下方向に潰しておくことは、この瘢痕の量をできるだけ少なくして、術後の治癒過程を経過することができることになります。

瘢痕を発生させる人体の仕組みは、通常の接着剤同様、くっつける者同士の間に瘢痕を作っていくといったものです。そこで、くっつけるもの同士に隙間があると、大きな瘢痕を残す形になるのと、治癒が遅れます。それは、くっつけるものがお互いに遠くにあれば、大量の接着剤が必要になるのと、大量の接着剤が乾くのには時間がかかるというのとに似ています。皮膚などの傷を縫合するのは、この、「組織の接着剤」とも言うべき瘢痕の量を減少させ、治癒を早くするためです。縫合するべき傷を縫合せずにそのままにしておけば、そこには肉芽が増生し、ほんの一部の組織の再生とともに、それら肉芽が瘢痕へと変化し、幅の広い傷痕として残ります。またその間、出血や感染のリスクが長期にわたり持続することになり、治癒過程に関するリスクも増大します。そこで表層脂肪吸引や脂肪吸引に目を転じていくと、感染のリスクこそ、皮膚の傷ほどの上昇はないのですが、トンネルが開いている状態では、この瘢痕の量が多くなり、その分、施術の効果が低下するということになります。また、治癒過程も遅くなり、内出血や腫れなどの不快な症状がなくなるのも遅い傾向となります。

このように、表層脂肪吸引や脂肪吸引の術後には、適切な期間に適切な圧迫が大切です。

それは、それらの術後に発生する皮下脂肪組織内の出血や腫れのコントロールのみならず、皮下脂肪層の中にできる瘢痕のコントロールのためにも、大切なことです。術後にできた皮下脂肪層内のトンネルを、圧迫によって正しい方向に潰しておくことで、内部への肉芽の増生に続く瘢痕の増生を防ぎ、治癒過程も早くなり、手術の効果も適切に出すことができるようになるからです。また、術後の痛みも軽い傾向にあります。これは、やはり治癒過程の速さによるところが多いと思われます。このように、術後の圧迫は、表層脂肪吸引であれ脂肪吸引であれ、術後早期だけでなく、術後の手術からの回復過程をすべて勘案した時、全く無駄なものではなく、むしろ積極的に推進するべきものであるということができます。

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副作用・合併症:皮膚表面の一時的痺れ
費用・料金:70万円