目の下と頬の前面(ゴルゴ線)

症例その1(30歳代前半)

症例その2(40歳代後半)

年齢とともに、割と早くから気になり始める部分として、目の下と、それに連なる頬の前面の部分の変形があります。脂肪増殖注射を希望する患者さんの中でも、特に多くの患者さんが希望するのが、この、目の下と、いわゆるゴルゴ線の部分です。






症例その1

何となく、顔のたるみとやつれが気になり始めたということで、脂肪増殖注射を頬の前面と目の下にかけて受けたモニターさんです。年齢は30歳代前半です。術後は、目的の部分の皮下脂肪の増量とともに、顔面のタルミにも効果を発揮しています。

一般的に、顔の上半分は、年齢とともに脂肪組織が減少してくるところです。その中でも、こめかみや眉間とともに、脂肪が減少してくるのがよくわかるのが、頬の前面と目の下です。そして、顔に下半分には、脂肪が沈着してきます。特に、ホウレイ線の上や、口角の横の部分には、年齢とともに脂肪が沈着してくるのが顕著にわかります。脂肪が減少してくるところに関しては、この、脂肪増殖注射が有効で、脂肪が沈着してきたところには、皮膚の引き締め効果のあるプラズマリポが、たるみを増やすことなく、有効に働きます。頬の前面と目の下のような部分は、顔面の中心付近に位置するため、脂肪が減少してくると、その症状が非常に目立ち、老けた疲れた印象を与えてしまいます。さらに、この部分の脂肪の減少によって、目の下の内側から頬の中心にかけての凹みが発生してきます。これが、俗に言われる「ゴルゴ線」の原因の一つです。つまり、年齢とともに発生したゴルゴ線は、皮膚のたるみ(余り)とともに、頬の前面の脂肪が減少したことに起因する場合が多くみられるのです。

脂肪増殖注射は、注射したところの脂肪組織を増殖させる働きがあります。 

したがって、加齢とともに脂肪が減少した部分に、この脂肪増殖注射を行うと、以前の脂肪組織の厚さを取り戻すことができ、顔面全体の若々しさを取り戻すことができます。たとえば、前述の「ゴルゴ線」ですが、頬の前面や下瞼の凹みにこの注射をすると、ゴルゴ線の解消になります。また、こめかみに脂肪増殖注射をすることで、加齢とともに目立ってきたこめかみの凹みを改善することができ、張りのある輪郭を再生することができるのです。加齢とともに脂肪が失われるところに、脂肪を増やすために脂肪増殖注射を行うことで、年齢以上に若々しい外見を整えることが可能になるのです。

「脂肪増殖注射」と言うと、よく「脂肪注入」の手術と間違えられます。 

そして患者さんに、「では、脂肪はどこから採ってくるのですか?」と質問を受けることがよくあります。脂肪増殖注射は、脂肪注入とは全く異なり、脂肪を付け加える処置ではありません。脂肪を増殖させ、脂肪組織が成長するような成長因子を、脂肪層に注射することで、脂肪を増殖させる方法です。したがって、脂肪注入とは違い、脂肪を採ってくる作業である、脂肪吸引の手術は不要です。また、当院の幹細胞・WPRPF併用脂肪注入でない、従来の脂肪注入の場合には、脂肪が残る量が30%くらいと、非常に少ないため、膨らませたい量の3倍の脂肪を注入することが必要で、そのため、長期にわたる腫れが問題でした(当院の幹細胞・WPRPF併用脂肪注入では、約80から90%の生着率がありますので、このようなことはありません)。しかし、脂肪増殖注射の場合には、脂肪組織が徐々に、約2か月かけて少しづつ増加していきますので、大量の薬液を注射して腫らしておく必要がありません。注射した翌日には、既に腫れがほとんど退いてしまっている状態で、術前とは大きな変化はなくなっています。そして、そこから少しづつ脂肪組織が増殖して、次第に目的の状態に近づいてくるのです。

どうして、脂肪増殖注射で脂肪組織を増殖させ、分厚くできるのでしょうか?それは、脂肪組織が、脂肪細胞だけでできているわけではないことが、その理由です。 

もちろん、脂肪組織は、その大半が脂肪細胞からできています。しかし、脂肪細胞以外にも、脂肪由来幹細胞や、その幹細胞が脂肪細胞に分化増殖する前の段階の、いろいろな段階の前脂肪細胞と言われる細胞も、脂肪組織には含まれています。脂肪由来幹細胞は、脂肪増殖注射に含まれる成長因子によって、分裂してその数を増やし、一部はさらに前脂肪細胞へと分化します。その前脂肪細胞は、やはり脂肪増殖注射の中に入っている成長因子によって、分裂して数が増え、一部が脂肪細胞へと分化していきます。このようにして、脂肪組織内の脂肪細胞が増加し、脂肪細胞だけでなく、脂肪由来幹細胞や線脂肪細胞も、その数が増加して、脂肪組織の増量につながるのです。

このように、注射をするだけで、その他の手術的な処置が不要なのにもかかわらず、脂肪組織を増やすことができる脂肪増殖注射なのですが、一つだけ、欠点があります。 

それは、脂肪増殖注射に限らず、どの手術や処置にも言えることなのですが、効果にどうしても個人差があることです。この個人差ですが、原因としては、脂肪組織内の脂肪由来幹細胞の量に起因すると考えられています。十分な量の幹細胞が脂肪組織内の存在する場合には、先述の記載からもわかるとおり、多くの脂肪細胞を作り出すことができ、十分な脂肪組織の増量が可能になります。しかし、幹細胞の量そのものが少ない場合には、自ずとその効果は低くなります。まったく効果が出ないということはあり得ませんが、少し効果が鈍いといった意味です。また、幹細胞が少ない場合には、効果が出るのが遅くなることもあります。それは、成長因子によって幹細胞が十分にその数を増やし、それが脂肪細胞に分化するまでに時間がかかるからです。
このような、脂肪組織の中に含まれる幹細胞が少ない症例の場合には、2回目の脂肪増殖注射によって、しっかりと効果を出すことができます。つまり、1回目の注射で、成長因子が幹細胞の数を十分に増やしているため、2回目の注射では、その幹細胞に成長因子が十分に働いて、脂肪細胞の数をしっかりと増やしてくれるためです。また、1回目の脂肪増殖注射を行って、十分な効果が出たのだが、もっと脂肪を増やしたい場合にも、2回目の注射は有効です。それは、前述のとおり、幹細胞や前脂肪細胞は、脂肪細胞に分化していくだけでなく、成長因子によって、自分自身のコピーである幹細胞や前脂肪細胞も作る働きがあるからです。






症例その2

頬の前方に脂肪増殖注射を行い、目の下のクマとゴルゴ線を同時に治療できた、モニターさんです。年齢は40歳代後半で、本来はミッド・フェイスリフト(中顔面フェイスリフト)や、脂肪注入の適応なのですが、やはり切開を伴う手術には抵抗があるとのことで、効果はミッドフェイスリフトに劣るのですが、脂肪増殖注射を選択しました。 

目のくまは、大きく分けると2つの要素でできています。一つは「色」。もう一つが「形」です。「色」は、細かいシワによる光の乱反射によって黒く見えるもの、皮膚が薄いために鬱血が黒く見えるもの、化粧やけなどで色素が沈着してしまったもの、の3つがあります。「形」については、皮膚のたるみ、目の下の脂肪(眼窩脂肪)の突出、頬の前方の脂肪の減少、の3つです。これらのうち、脂肪増殖注射で改善を目指すものは、最後の、頬の前方の脂肪の減少です。しかし、脂肪増殖注射を行うと、脂肪増殖注射の中に入っている様々な成長因子の働きで、脂肪の減少だけでなく、その他の要素も同時に改善されることが多くみられます。
ゴルゴ線に関しては、その主な原因は、皮膚のたるみと、頬の前方の脂肪の減少です。したがって、脂肪増殖注射による治療は、非常に的を得たものであるということができます。

脂肪増殖注射は、従来の脂肪注入とは異なり、脂肪を入れてその体積で盛り上げると言ったモノではありません。
従来の脂肪注入は、脂肪を体の他のところから採ってきて、それを膨らませたいところに注射すると言うものです。したがって、処置が終わった瞬間に、そこの部分に脂肪が増加しています。しかしそれは、あくまでも他の場所から持ってきた脂肪です。脂肪増殖注射の場合には、脂肪を持ってくるというコンセプトではなく、成長因子の働きによって、減少した脂肪を増加させると言うものです。簡単に例えると、山の木が枯れてきて、本数が減ってしまったところに、他の山から木を持ってきて植えるのが脂肪注入。木の本数が減ってきた山に、肥料を撒いて、新しい木が生えてくるようにするのが脂肪増殖注射であるということです。

脂肪増殖注射の実際の手順は、以下のようになります。
患者さんが来院され、初診が終了し、処置に向けての手続きが終了したら、まず、採血を行います。この採血は、血液の中から成長因子を取り出すために行います。処置を行うエリアとして、1か所に付き40㏄の採血です。この、血液から取り出した成長因子に、脂肪を増殖させるのに不足している成長因子を、薬剤として補い、注射液を作成します。注射液の作成には、約30分ほどの時間が必要ですので、その間は、麻酔クリームを処置箇所に塗布して、その浸み込みを待つための時間として有効に利用します。そして、注射液が出来上がったら、麻酔クリームを拭き取り、印をつけて、注射を行い、一連の処置の流れは終了となります。

限定解除要件
副作用・合併症:成分に対するアレルギー(非常に稀)
費用:15万円