切開法の二重瞼と目頭切開の手術を受けた、30歳代前半のモニターさんです。
生来の一重瞼で、目が小さく、常に上目遣いで前を見る癖があり、目つきが悪いことを、よく指摘されていたらしいです。術前は、目が細く、小さく見えます。一見すると、眼瞼下垂を修正する、挙筋腱膜短縮法が必要なように見えます。しかし実は、診察して初めて分かることなのですが、被った瞼の奥の目の開き自体は、そんなに小さい方でもなく、目の開き自体は正常か、或いは、大きな目の見開きが可能な状態でした。しかし、瞼の皮膚の余り方によって、眼瞼下垂の状態に見えてしまっていたのです。
向かって左下は術後1か月目。右下が術後3か月。このように、傷の硬さが取れていくにしたがって、目の開きも大きくなり、より、ぱっちりとした目になっていきます。
彼女の場合、アイプチの使用歴が非常に長く、10年を軽く超えている状態でした。そのため、瞼の皮膚が伸ばされてしまっていて、アイプチを外した素顔の状態だと、上睫の生え際を大きく超えて、目の上に被さってしまっている状態です。この場合、瞼を開く筋肉にも、また、それに連なる腱膜にも異常は認められず、本当の眼瞼下垂というのには相当しません。したがって、二重瞼の切開法を行うと同時に、余った皮膚を切り取る操作を行い、目の上に被さってしまった皮膚を取り除いてやることだけで、十分に大きな目を作ることができます。
しかし、ここには、もうひとつ、大きな目ができない問題点がありました。それは、目頭にしっかりと掛っている、蒙古襞という、眼輪筋という筋肉を含んだ、上下の瞼から連なる皮膚の襞です。向かって左上が術前。右上は術後1週間目の抜糸直後。この時点で、うまくお化粧をすれば、傷や腫れも、分からない状態になっています。
向かって左上が術前。こちら側は、もともと二重瞼のように見えますが、実はこれは、アイプチでできてしまった「しわ」です。右上は術後1週間目の抜糸直後。目頭から二重瞼の線に向かって、斜めに線が入ってますが、うまくお化粧をすれば、この線や、傷と腫れも、分からない状態です。向かって左は術後1か月目。目頭から二重瞼の線に向かって入っていた斜めの線は、既になくなっています。右が術後3か月。この時点になると、より自然な状態になっています。目の開きも大きくなり、より、ぱっちりとした目になりました。
蒙古襞を取り去る手術は、皆さんもよく知っている、「目頭切開」という手術です。この目頭切開は、いくつも方法が存在します。しかし、大きく分けると、蒙古襞を切り取ってしまう方法と、蒙古襞の方向を変えることで目頭を開く手術とに分けることができます。
蒙古ひだを切り取ってしまう方法は、切開線が単純で、初心者でもそれなりの効果を出すことのできる方法です。また、目頭を大きく寄せたい場合に、目頭の靭帯の操作が非常に容易になるという利点があります。しかし、大きな欠点として、術後の傷跡が目立ち易いことと、術後の戻りが比較的大きいことが挙げられます。理由としては、傷と言うものは、術後の経過とともに、約1か月間は縮むという性質があるからです。蒙古ひだを切り取ってしまう目頭切開の場合、切開線が単純な分、その曲りが少なく、したがって、傷の総延長としては短いものとなります。傷の長さが短いから、その分、傷が目立たないというわけではありません。傷が入る範囲は、むしろ、蒙古ひだの方向を変えて、目頭を開く手術よりも広い傾向にあります。その短い切開創が縮んでくると、周囲の皮膚を引っ張り寄せてきて、目頭に再び襞を作ってしまうのです。また周囲の皮膚を引っ張るということは、傷そのものも引っ張られると言うことです。傷が引っ張られると、その幅が大きくなります。これが、この方法で傷が目立ちやすい理由です。
向かって左上が術前。うっすらと二重瞼の線がみられるが、かなり浅くて、皮膚が目にかかってしまっている状態。右上は術後1週間目の抜糸直後。
向かって左下は術後1か月目。右下が術後3か月。この時期には、傷の硬さが取れていく時期で、より自然になっていくのですが、傷の色も、それに伴って次第に赤からピンク色を経て、肌色へと近づいていきます。
蒙古ひだの方向を変える手術法の場合には、切開線が複雑で、手術そのものの難易度が高いことが欠点です。しかし、これは術者の手術に対する習熟によって、デメリットとはなり得ません。利点としては、傷が比較的目立たないことです。これは、傷の総延長が長いにもかかわらず、その範囲は比較的狭いということからきています。また、術後の傷の縮みを、複雑な曲がった切開線で吸収できるため、術後の戻りがほとんどありません。さらに、元に戻したい場合、蒙古ひだを切り取ってしまう手術の場合には、付近から皮膚を持ってくる(フラップを回す)必要があるのに対して、蒙古ひだの方向を変える手術の場合には、もう一度同じ切開線を切開することで、ほぼ元通りに戻すことができます。したがって、術者のクオリティーが高ければ、特別な場合を除いて、蒙古ひだを切り取ってしまう手術法よりも、この、蒙古ひだの方向を変化させて目頭を開く手術のほうが、全ての面において優れているということができます。