上瞼のタルミ

はるばる海外から当院を訪れた、50歳代の患者さんです。1週間後の抜糸まで滞在できるということと、術後のフォローアップに来日が可能なこと、国内の連帯保証人が2名付けられるとのことで、モニター契約をしました。本人さんの当初の希望としては、ここ10年以上たるみが出ないようにとのことでしたので、術後の二重瞼の幅は、かなり広く設定してあります。

ただし、この写真の時点での手術の傷は、まだ硬さがありますので、もう少しだけ、二重瞼の幅は狭くなってくる予定です。手術は、タルミの原因になっている皮膚を、二重瞼の折れ曲がりの線に沿って切開し、その上の皮膚を切除しています。元々上瞼に凹みがありますから、眼窩脂肪の摘出は、行っていません。切除した皮膚の幅は、約15㎜です。15㎜の切除幅は、眼瞼下垂の手術なら、そんなに多い方ではないのですが、たるみ取りの切開法手術としては、かなりたくさんの切除になります。この場合、切開線もこめかみ付近まで延長されるのが、従来の手術です。

従来の手術だと、幅15㎜も切除すると、このように、こめかみ付近まで傷が伸びる

しかし、デザインを工夫することで、この、切開線を短くできます。デザインというよりも、ひと手間かけるといったほうが良いかもしれません。皮膚を切除すると、その切除した部分は、縫い合わせておく必要があります。しかし、縫い合わせる幅が広いと、傷を長くしなければ、その端には盛り上がりができてしまいます。幅が狭い場合には、皮膚の弾力性がそれを吸収するのですが、広い幅を切除した場合には、盛り上がりが高くなり、皮膚の弾力性を超えてしまいます。円錐を造るときには、頂点に向かって紙を切り取ります。切り取る幅によって、頂点の部分に相当するところの角度が決まり、これが円錐の高さを決めます。これがゴムの場合には、弾力性があるため、切り取る幅が狭くて低い円錐なら、シワを造らずに潰せますが、高くなると、シワを造らないと潰せません。これと同じことが、手術に関しても言えるのです。したがって、傷の端の盛り上がりを造らないようにするには、傷の長さを長くして、皮膚の弾力性が大きく働くように、底面に対して高さの割合を低く抑える必要があります。しかし、長い傷を造ってはいけないということだと、これは無理なことになります。そこで、この円錐を上下方向逆にしてやるという発想で、手術を行うのです。つまり、円錐の頂点が、盛り上がるのではなく、陥没するようにするわけです。そのために、傷の端の周辺は、皮下組織を十分に切除し、傷の端を凹ませるようにします。

 

切除幅が狭いとき

切除する幅が狭い場合、傷の長さも短くてよい。

目を開くと隠れてしまうくらいの長さの傷でも、平坦で自然。

 

切除幅が広いとき

切除する幅が広いと、皮膚の弾力性の限界を超えないように、目尻のほうに傷を伸ばす必要がある。

目を開いた時でも、目尻のほうに傷が露出したままとなる。色白の人は、化粧をすれば目立たないが、肌の色が濃いと、目立つ結果に。

 

切除幅が広いが、傷を短くした時

切除する幅が広い場合に、傷の長さを短く設定した場合。目尻側の切開線同士がつくる角度が大きくなる。

切除する幅が大きいのに、傷を十分に長くしない場合には、皮膚の弾力性の限界を超えるので、傷の端が円錐状に盛り上がる。

傷の端が盛り上がらないように、切除する部分だけでなく、周辺の皮下組織も、十分に切除する。すると、盛り上がりが陥没になり、目を開いたときには、傷がキッチリと二重瞼の線の中に隠れる。

目尻側の傷の端は、目を閉じた時にはやや陥凹している。しかし、目を開いたときには、二重瞼の折れ曲がりと連続し、傷が隠れて目立たない。

 

先日、シンガポールに手術を教えに行った時、この手術の術前デザインを、現地のDr.にしてもらいました。すると、やはりこめかみまで切開するようにデザインしていました。このデザインは、患者さんが白人であれば、特に問題ありません。白人は、傷が本当に目立たなくなります。しかし、その患者さんはマレー系。そのデザインだと、こめかみに、白い傷跡が目立つようになります。そこで、私は、切開線を短くするデザインを伝授しました。結果、当初の腫れは、やはり切開手術ですので隠しようがないのですが、傷が本当に目立たないことに、喜んでいたという報告を受けました。

医療広告限定解除要件
副作用・合併症:角膜を押さえていた皮膚が取り除かれるので、視力が遠視方向に矯正されることがあります。
費用:30万円