エラの角から前方まで6

エラの部分の大きさに、骨とともに大きな影響のある咬筋は、物を噛むときに使用する筋肉です。この、咬筋が発達していると、やはり、エラが突出して見えます。

物を噛むときに使用する筋肉は、この他に、こめかみの筋肉である側頭筋と、エラの内側についている内側翼突筋があります。これら3つの筋肉が共同して、下顎を上顎に持ち上げるようにして、物を噛むという動作が成り立っています。この咬筋が発達する原因ですが、強く物を噛む癖、睡眠中の歯ぎしり、ストレスなどによる噛みしめなどがあります。また、硬いものを習慣的に噛むことによって、咬筋が発達します。

このような咬筋ですが、エラの骨の手術の術後には、一般的に、萎縮する傾向があります。アングル・スプリッティング法の場合には、この萎縮という現象は見られないということですが、エラの骨の全層切除の場合には、術後、咬筋が徐々に萎縮していきます。理由としては、付着する骨の一部がなくなることにより、そこに付着していた筋肉の繊維が使われなくなって、廃用性萎縮を起こすためだと考えられます。この廃用性萎縮によるエラの縮小効果を利用した治療は、ボトックスの注射があります。ボトックスの注射は、約2か月でその効果を発揮します。しかし、手術の場合には、術後半年から1年間かけて、咬筋が徐々に萎縮してきます。私の経験上の感覚では、術後3か月で萎縮量のほぼ60%、術後半年で80%以上が完了すると考えています。手術での咬筋の萎縮は、ボトックスによる場合よりも遅いということです。この理由については、ボトックスの場合には、注射した部分の筋肉を完全に麻痺させてしまうのに対して、手術の場合には、骨を引っ張ることはなくても、麻痺はしていないためだと思われます。
また、この咬筋ですが、手術中に一部を切除すべきかどうかというのが、学会でも話題になったことがあります。私の意見は、「切除すべきでない」というものです。咬筋は、切除しなくても委縮してくるからというのはもちろんですが、手術中の咬筋の切除は、腫れが大きくなり、なかなか引かないということがあります。さらに、手術中には既に咬筋には腫れが発生していて、その腫れのために、切除量の調節が難しく、左右差や咬筋の変形を来してしまうということからです。実際、えら削り手術を他院で受けて、術中に咬筋の切除を行われて、えらの部分が咬筋の変形によって凸凹になった患者さんの修正手術を、何度も行いました。したがって、私の方針として、咬筋については手術中に切除をせず、自然な萎縮が得られるエラ削り手術の術式を採用するということにしています。どうしても、早く咬筋を萎縮させたいという希望がある場合には、ボトックスの注射を併用しています。