リップリフト 2

30歳代女性の、リップリフトのモニターさんです。リップリフトとは、鼻と口の間を短くする手術のことです。「リップ=唇、リフト=持ち上げる」つまり、唇を持ち上げる手術です。この手術の効果は、鼻と口の間が短くなることはもちろん、上唇が厚くなるといった効果が見られます。

この手術がなぜ、美容的に有効な手術なのかという面は、唇の厚さを厚くして、セクシーさを出すといった側面ばかりでなく、実は顔面の縦のバランスにあります。どうしても個人の好みはあるのですが、一般論として、顔面の下3分の一の部分のバランスは、鼻の下から上唇と下唇の合わせと、その下から顎先までの距離の比率が、1:2とされています。しかし、大多数の日本人の場合、これらの比率が1:1.5だったり、1:1.2だったりすることが多いようです。つまり、バランス的な基準からすると、「鼻の下が長く顎が短い」ということです。このような状態の場合、顔のパーツが輪郭近くまで分散される結果となり、顔全体に何となく締りのない印象を与えがちで、しかも、顔がさらに大きく見えるといった状態になります。
写真は順に、術前・術後約1週間・術後約1カ月・術後約3カ月

リップリフトの手術そのものは、比較的古くから存在し、20年以上前の英文の手術書には、すでにその方法の記載があります。リップリフトの手術方法は、麻酔をした後、鼻の下の皮膚を切り取り、縫合する方法が一般的です。しかしながら、この、一般的な手術法では、大きな欠点が3つあります。

一つ目は、皮膚のみの切除の場合、戻りが出てしまうことです。 

人間に皮膚は、引っ張る力が慢性的に加わると、伸びてしまう性質があります。この性質を、再建外科の領域で利用したものに、ティッシュー・エキスパンダーという器具があります。皮膚を伸ばす風船のような器具です。皮膚の腫瘍や痣などを切除する際、皮膚が足りない時に、近くの皮下にこのティッシュー・エキスパンダーをあらかじめ、埋入しておきます。そして、約3カ月かけて少しずつ、この中に生理食塩水を注入していき、膨らませることによって、皮膚を伸ばしていきます。十分に皮膚が伸びたときに、本体の腫瘍や痣を切り取り、同時に伸びた皮膚を利用して縫合を完成させます。このように、皮膚は、慢性的な張力によって、伸びる性質があるのです。こういった理由から、フェイスリフトを行う際には、皮膚や脂肪層よりも奥の層にある、筋膜や靭帯をしっかりと引き上げて固定する操作を行い、なるべく皮膚に張力をかけないようにします。また、傷を引き離す向きに力が加わると、傷の幅も広くなり、これも術後の戻りの原因となります。したがって、リップリフトを行う際には、フェイスリフト同様、筋膜や筋肉の引き上げをしっかりと行い、戻りを防止することが大切です。決して、皮膚の切除のみで終わってはいけない手術なのです。

皮膚の切除のみの手術における、二つ目の欠点は、一つ目の欠点にも関連するのですが、傷の幅が広くなることです。  

傷の部分は、周囲の皮膚と比較して、張力に対して弱い性質があります。術後の時間の経過とともに、傷の部分も張力に対して強くなっていくのですが、基本的には、術後1カ月で、元の皮膚の張力に対する強さの約30%、術後3カ月で約60%と言われています。したがって、皮膚が伸びる以上に、傷のほうが、慢性的な張力に対しては、よく伸びてしまうということです。傷が伸びるということは、幅が広くなるということです。幅が広くなると、傷は目立ちます。さらに、前述の術後の戻りにも、戻りを増加させる要因として働きます。
3つ目は、傷が移動してくることです。特に、鼻の穴のすぐ下の傷は、唇のほうに移動する傾向があります。粘膜が近く、また粘膜は傷同様、慢性的な力が加わると、皮膚以上によく伸びてしまいます。どの程度移動するのかというと、最初の1ヶ月くらいは鼻の穴のすぐ下にあって目立たないのですが、術後約3カ月経過した時点では、鼻の穴から平均約3mm下に移動します。そうすると、横向きの傷が、鼻の下に一本、しっかりと目立つ状態で残ってしまうわけです。この傷は、最終的には白くなってしまうのですが、鼻の下は、動きが激しく、しわが入る方向が一定しない場所ですから、お化粧などで隠そうとしても、非常に困難な状態になってしまいます。

当院で行うリップリフトは、このような皮膚の切除だけで行うものではありません。  

したがって、1番目や2番目の欠点は克服した方法です。また、3番目の欠点(これがある意味最大の欠点ですが)は、独自の手術デザインによって、克服ができています。1番目と2番目の欠点については、当院では、口輪筋という唇につながる筋肉を一部切除して、鼻の下の骨膜にしっかりと固定します。こうすることで、皮膚や傷にかかる張力をほとんどなくしてやり、皮膚の伸びや傷が幅広くなることによる、術後の戻りや傷が目立つのを防止しています。また、3番目の欠点である傷の移動についても、張力がかからないことによって、完全に克服ができました。しかし、3番目の欠点についての、鼻の穴のすぐ下の傷は、たとえ移動しなくても、正面から見えることが多い傷でもあります。よく他院の症例写真では、この傷が写真に写らないように、術後の写真は、術前の写真よりも少し顎を引いて撮っているか、しっかりと修正をかけているのは、このためです。そこで、当院では、鼻の下の部分の切開デザインを改良して、鼻の穴のすぐ下の傷が、正面から見えないように改良しました。また、この改良によって、切開線は鼻翼(小鼻)のワキまでで、ホウレイ線に沿った切開をほとんど必要としない術式となりました。

限定解除要件
副作用・合併症:肥厚性瘢痕。切り取りすぎると、口を閉じにくくなる。
費用:30万円