膝周り+ふくらはぎ

ふくらはぎと膝周辺の脂肪吸引を受けた、20歳代後半のモニターさんです。写真は、順に、術前・術後1カ月・術後3ヶ月となります。足首やふくらはぎなど、身体の下のほうにある部分は、脂肪吸引の腫れの退きが遅い関係上、効果が出てくるのが遅い傾向にあります。

ひざ丈までのスカートと言うのは、基本的な長さとしてリクルートスーツなどにも適応される長さです。その長さのスカートを穿いた時には、太ももはそのほとんどが隠れてしまいますが、ふくらはぎと膝は露出されたままです。それらの、ほぼオールシーズンで露出されているふくらはぎと膝は、逆に言うと隠しようのない場所でもあります。これらの見えているところが太いと、見えていない太ももまでが太いと、どうしても想像してしまうのが人間の心理です。したがって、この部分を細くするのは、非常に大切なことでもあります。しかしふくらはぎは、太ももやお腹に比べて脂肪層が薄く、しかも腫れや内出血の消失が遅いという傾向があります。このような部分こそ、できるだけ口径のカニューレを使用して手術を行い、表面の凸凹をつくらないことはもちろん、血管へのダメージを少なくして、術中の出血や内出血をできるだけ抑えることが大切になります。

また、血管へのダメージを少なくすることの意義は、出血量を少なくすることだけではありません。合併症である静脈血栓症の予防のためでもあります。静脈血栓症とは、一時話題になった「エコノミークラス症候群」の原因です。読んで字のごとく静脈の中に血栓が形成され、それが肺に流れて行って肺の血管を閉塞し、呼吸不全に陥ります。特に太ももやふくらはぎの脂肪吸引は、お腹の脂肪吸引と比較して、発症率が高いとされています。それは、血管の走行の解剖学的特徴(末梢でできた血栓が下大静脈に流れて行き易いこと)や、術後に脚の筋肉の運動制限がどうしても生じるため、筋肉の動きによる脚の循環のポンプ機能が低下することが主な原因と考えられています。発症後早期の対処が必要な病態です。初発症状としては、胸痛や血中酸素濃度の急激な低下によるチアノーゼ症状などがあります。確定診断は肺シンチグラムや血管造影などです。発症した場合の具体的な処置としては、酸素の吸入・ヘパリンやウロキナーゼなどの線溶系薬剤の投与・ミラクリッドなどの抗酵素剤の投与などです。しかし、肺シンチグラムや血管造影などは、準備や撮影・読影に時間が必要ですので、胸痛や血中酸素濃度の低下などの症状が出たら、酸素吸入だけは開始した方がいいでしょう。この静脈血栓症は、アメリカでの脂肪吸引での手術死亡の原因のNo1でもあります。しかし、血栓症の高リスク群である、高度の肥満、コントロール不良の高脂血症・高血圧・糖尿病や、抗血栓薬の服用患者以外は、口径の太いカニューレで手術しない限りは、その発症率は非常に稀です。

そこで、血管へのダメージによって、どのようにして血栓ができるかということを考察してみます。そもそも、血栓とは、血液が固まることによってできます。血管の中で血液が固まるときと言うのは、血管に何らかの異常が発生した時や、脱水などで血液がドロドロになった時です。脂肪吸引の場合には、まずカニューレによる血管壁へのダメージが加わることが、血栓発生の最初の引き金になります。カニューレによって血管壁にダメージが加わり、穴が開いてそこから血液が漏れると、穴の周辺の血液が固まって、その漏れをなくそうとします。漏れた血液だけが固まって、穴を塞ぐのであればいいのですが、その際には血管の内側の血液も固まります。このようにして血管内に血栓が発生します。細い血管の場合には、この血栓も小さく、血管の中を流れて太い静脈に入ったとしても、流れていく間や、心臓でかき混ぜられたりすると溶けてしまいます。平常時においては、血液が血管の中で固まってしまわないように、血液を固めて血栓を作るシステム(凝固系)と血栓を溶かすシステム(線溶系)が血管内でバランスをとって共存しているからです。しかし、太い血管にダメージが加わって、大きな血栓ができてしまい、それが静脈内に入った時には、血栓を溶かすシステム(線溶系)の作用が間に合わず、心臓を通って肺動脈へと到達し、肺の血管に詰まってそれを塞いでしまうのです。これが、太いカニューレで大量の脂肪吸引を行った際に発生してしまう、静脈血栓症の正体です。したがって、このような静脈血栓症の発生を予防するためにも、太い血管を傷つけないようにしなければならず、そのためには、脂肪吸引の際にはできるだけ細いカニューレを使用してした方がよいという結論です。

血栓が発生しやすいことと、線溶系がうまく働かないことの素地としては、血管へのダメージとともに、静脈の循環不全があります。この静脈の循環不全とは、静脈内の血液が手足などの末梢から心臓に向かってうまく流れず、淀み(よどみ)を作ってしまうことです。これは、全身麻酔下で筋肉の緊張が全くない状態が長時間にわたって持続したり、手術によって血管を傷つけるなどの、手術による要因はもちろん存在します。また、それらとともに、血管が動脈硬化で硬くなっていたり、下肢静脈瘤で静脈の弁が破壊されていたりすることなど、肉体そのものの要因も関与します。さらに、手術中の輸液不足での脱水も、血栓の発生要因です。したがって、脚の脂肪吸引の際に静脈血栓症の発生を予防するには、1)全身麻酔はできるだけ避けること(全身麻酔の場合には麻酔時間をできるだけ短くすること)、2)術後は早期に脚の運動をさせること(具体的には歩かせること)、3)動脈硬化性の疾患(高血圧、高脂血症など)や静脈瘤の発症している患者は注意すること、4)術中の輸液は十分に行うこと、が大切であるとされています。

ところで、手術中の痛みは麻酔で完全に取り去ることができます。しかし脂肪吸引は手術ですから、術後の痛みが全くないということはあり得ません。もし、まったく痛くないようにしようと思えば、硬膜外麻酔のときの硬膜外チューブを入れっぱなしにして、そこに持続的に麻酔薬を流し続けることです。これは、末期がんの患者さんの除痛の方法と同じです。しかし、過量投与や細菌の混入による感染を防ぐために、その間の入院が必要です。入院ということになると、どうしても脚の運動が控えられる結果となり、前述の静脈血栓症の予防的措置とは相反することになります。そこで、術後の痛みが最初から非常に軽度の場合には、このような処置をする必要もなく、したがって入院も不要で、静脈血栓症の予防としての「術後早期の歩行」ということも達成することができます。したがって、術後の痛みをできるだけ軽くするというのが、実際の臨床上では現実的な選択となります。では、術後の痛みを最小化するには、どうすればいいかということになるのです。

そもそも痛みを感じるというのは、神経の自由終末であると言われています。この自由終末というのは、神経の先っぽに何もついていない状態です。神経の根本を脊髄や脳だとすると、神経の終末、つまり終わりは、体中の様々な感覚を司るために、いろんな形のものがついています。たとえば、圧変化と振動を感知するのはパチニ小体が付いている神経終末、触覚はマイスナー小体が付いている神経終末、圧覚や触覚・冷覚はクラウゼ小体が付いている神経終末、といった具合です。それらの神経終末の中で、何も付いていなくて神経がむき出しになっている状態のものを自由終末と言って、痛み(痛覚)はこの神経自由終末で感覚として感知されるのです。つまり、この神経自由終末が多いと、量的に痛みを多く感じ、それだけ痛いということです。神経を切断すると、その断端はこの自由終末の状態になってしまいます。そして、その切断された神経が太ければ太いほど、自由終末が大きく、痛みも強いとされています。このようなことから、術後の痛みをできるだけ少なくしようとするならば、太い神経へのダメージを最小限にしなければなりません。そのためには太いカニューレで脂肪吸引を行うべきではなく、できるだけ細いカニューレで脂肪吸引をすることが必要です。

細いカニューレのメリットとして理解しやすいことの一つに、カニューレの挿入口を最小化できるという点があります。直径2mm位のカニューレであれば、挿入口は太めの注射針で皮膚に穴を開けるだけで十分です。しかし3mm以上になると、メスを使用して皮膚を少しだけ切開する必要があります。この二つの違いは、皮膚に残る傷の形と大きさの違いとして歴然たるものがあります。針であけた穴は、時間の経過とともに小さくなり、縫合しなくても塞がってしまいます。その跡は残ったとしても本当に小さく、虫刺されの跡のようにほぼ円形で、人工的な形とはなりません。しかしメスを使用して皮膚を切開すると、その傷の幅を狭く保って治癒させるためには、縫合が必要になります。そして切開創は線状の傷として残ります。線状に残った傷は、たとえそれがどんなに小さくても人工的な形であることには変わりありません。これらのことから、カニューレの太さは、メスが不要なくらいの大きさの穴から挿入できる太さに抑えるに越したことはありません。と、いうことは、直径2mm位までと言うことになります。

医療広告限定解除要件
副作用・合併症:皮膚の感覚脱失,静脈血栓症
費用:50万円