えら

顔の下半分の幅を小さくするする方法としては、頬の脂肪吸引や、エラの骨を切り取る・削るという方法がありますが、この、ボトックスを使用するのも、一つの方法です。
ボトックスを使用する方法は、えらの部分の筋肉を萎縮させるのが、その作用の本体です。したがって、骨によってエラが張っている方や、脂肪が付いていて顔が大きい方の場合には、効果がありません。

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しかし、エラにボトックスを注射する方法の、最大の利点は、術後経過にあります。この方法は、術後には腫れもなく、直後からお化粧も可能で、しかも、急激な変化がありませんから、本当に誰にも気づかれることなく、処置を受けることが可能です。また、歯ぎしりがひどく、歯の咬合面(上の歯と下の歯がすり合わさる面)が削れてしまっている方や、歯ぎしりそのものを治療したい場合にも、このボトックスの注射が有効です。えらの筋肉は、咀嚼(食べ物を噛むこと)するときに使用する筋肉ですが、咀嚼する動作を行う筋肉は、えらの筋肉のほかに、2つの筋肉が備わっていますので、えらの筋肉にボトックスを注射しても、物が噛めなくなるということはありません。

外板を切り取るのです。その方法を、外板切除と言い、歯根や下顎神経管を避けて、斜め内側に向かって、切除します。この外板切除というテクニックは、エラの部分だけではなく、顎先の両サイドについても応用でき、Vの字にカットする手術とへいようすれば、より大きな効果が期待できます。また、外板を切除して、内板を残すことによって、顎の骨の強度をできるだけ残sことができます。そのことで、手術の副作用の一つである、歯科処置やその他の外力に対しての、骨折の率を少なくすることができます。

エラのボトックス注射は、術後のダウンタイムが全くないのが最大の利点ですが、その他には、即効性がなく、術後約2カ月かけて、徐々に効果が出てくることも、大きな利点です。これは、逆に言うと、即効性がないという欠点にもなるのですが、「誰にも処置を受けたことを気づかれたくない」ということであれば、即効性がある処置のほうが、他人から変化に気づかれることが多いということは、自明です。しかし、約2カ月かけて徐々に効果が出て、エラが少しずつ小さくなるのであれば、毎日顔を合わせる人なら特にその変化に気づくことはないでしょう。たとえば、エラのボトックス注射を受けて、効果として片側約1cmだけ、顔の幅が小さくなったとしましょう。その場合、両側で2cm顔の幅が小さくなります。すると、そこまでの効果に到達するのに、術後約2カ月かかりますから、1か月につき1cmづつ、顔の幅が小さくなります。単純計算ですが、これを1日当たりに直すと、1cmを30日で割ることになりますから、1日に付き約0.03cmとなります。0.03cm=0.3mmを考えてみると、その幅は、ボールペンで書いた文字の線の幅よりも小さいということになります。このような小さな変化は、肉眼での確認はほぼ不可能です。

注射するボトックスの量ですが、両方のエラで50から60単位、片方につき25から30単位を標準としています。つまり、注射1か所につき8から10単位です。しわ取りの場合には、ボトックスは注射する1か所につき4単位ですから、えらの場合には、これの2倍以上の量を1か所に注射する形になります。これは、えらの筋肉は、しわを作る表情筋と比較して、非常に分厚く、その力も強いためです。ちなみに、人間が通常、食物を食べるときの咀嚼力は、女性で約45kg・男性で約60kgと言われています。また、最大咀嚼力(しっかりと噛みしめたときの力)は、平均約100kgあります。えらの筋肉は、咀嚼力の30%から50%を賄っているとすると、かなりの力を普段から出していることになります。また、エラが張っている人の場合には、噛みしめる癖がある場合が多く、常に咀嚼力を鍛えている状態でもあるのです。したがって、1か所についての注射量も、ただ単に皮膚を動かしてシワを作っているだけの表情筋に比べて、たくさんの量が必要なのです。 

エラのボトックス注射の手順ですが、いたってシンプルな処置です。まず、患者さんには、奥歯をしっかりと噛みしめてもらいます。そうすると、えらの筋肉に力こぶができます。えらの筋肉は、腕などの筋肉と違って、そのサイズが小さいものですから、力こぶも小さく、よく観察しないと、エラの角の近くに一つだけしかできていないように見えます。しかし、実際は3つに分かれて存在しています。一つ目は、えらの骨の角から約1cm斜め上のところです。しっかりと観察しないと、この力瘤だけしか見つかりません。2つ目は、一つ目の力こぶから約1.5~2cm前方のところにあります。ここの部分の筋肉を、しっかりと痩せさせることが、顔の幅を狭くするキーポイントです。3つ目は、1番目の力こぶから上方に約1.5cmから2cmのところです。この部分は、顔の中央近くの幅に、主に影響します。これら3つの力こぶを確認したら、それぞれに印をつけ、それからボトックスを注射します。したがって、片方につき3か所、両側で6か所の注射を行います。このように、力こぶができるところをきちんと処置することで、限られた量のボトックスで、十分な効果を発揮させることができるのです。

えらのボトックス注射を受ける場合に、注意が必要な人もいます。どんな人かと言うと、ひとつは、顎関節症の方です。歯科で顎関節症の診断を受けていて、その原因が強く噛みしめることにある場合には、エラに対するボトックス注射は、治療の助けになります。その場合には、こめかみの筋肉にも、ボトックスを注射する場合もあるくらいです。しかし、「時々、耳の前に痛みが出る」「片方のあごの関節がだるくなる」「口を開閉するときに音がする」などの症状がある場合には、上下の歯の咬み合せが原因で、そのような症状が発生している場合があります。そして、これらの症状は、上下の歯の咬み合せが原因で発生する種類の、顎関節症の前駆症状(始まりの症状)の場合があります。強く噛みしめることが原因ではない、噛み合わせが原因の顎関節症の場合には、不用意にエラのボトックス注射を行うと、顎関節症が進行する場合があるのです。そこで、当院では、それらの症状がある型の場合は、歯科での噛み合せの治療を視野に入れて、この処置を受けることを推奨しています。また、エラのボトックス処置を受けたあとに、これらのような症状が発生したら、歯科での噛み合せの治療を並行して行うか、ボトックスの注射を継続することを、一度見直すように、患者さんに指導しています。
顎関節症以外で、ボトックスをエラに注射するのに注意が必要な人は、力仕事をしている人や、スポーツ選手です。人間は、精一杯に力を入れる時には、反射的に全身の筋肉に力が入ります。咀嚼する筋肉にも力が入り、噛みしめることによって、最大の筋力を発揮できます。当然、えらの筋肉にも力が入ります。その時に、ボトックスでエラの筋肉を小さくしてしまっていると、食事のような通常の咀嚼には不自由なくても、噛みしめる力は低下していますので、全身の最大筋力が低下した状態になります。このことは、重い荷物を一気に持ち上げたり、力一杯のスイングを行う際には、不利な条件として働きます。そうすると、例えば、ゴルファーの場合にはティーショットの飛距離が落ちたり、野球選手の場合には長打が打てないことや、ピッチャーなら球速が落ちたりします。反対に、アマチュア・ゴルファーなら、「力み」が解消され、スイングフォームが改善されるかもしれませんが、やはり、運動能力としては低下していることには変わりありません。全般的に考えると、プロスポーツ選手は、引退してTVの解説者になったときに、TV映りがいいようにするために、この処置を受ける場合が多いようです。