目の下のクマ(くぼみ)1

目の下のクマに対して、高生着率脂肪注入を行いました。こちらのモニターさんは、40歳代後半の女性です。クマの原因が、主として「くぼみ」によるものですので、脂肪注入の良い適応です。目の下のクマは、いろいろな要素からできていますが、大きく分けて、皮膚の要素と皮下脂肪の要素です。

皮膚の要素として、皮膚そのものの要素である余りと、色によるものです。余りはタルミや小じわになり、色は、色素沈着と、皮膚が薄いことによって、皮下組織(この場合は眼輪筋)が透過して、青黒く見えることなどがあります。
皮下組織の要素は、眼窩脂肪の突出・頬脂肪体やSOOF(眼輪筋下脂肪)の萎縮・頬脂肪体の下垂などがあります。下瞼の切開手術は、皮膚の余りによる要素と、眼窩脂肪の突出の、2つの要素を同時に改善できます。しかし、術後の回復期間が長く、なかなか手軽に受けることのできるものではありません。ヒアルロン酸の注射は、皮下脂肪の要素を改善できますが、皮下組織が透過して青黒く見えるのが、強く出てしまうことがあります。レーザーによる処置は、皮膚の要素は改善できますが、皮下脂肪の要素は改善できません。したがって、一つの要素の改善だけで、クマを完全になくすことは不可能です。しかし、「メインになる要素が何か」ということを、しっかりと診断できれば、約半分以上の改善も可能になります。
そのメインの要素が、このモニターさんの場合には、頬脂肪体及びSOOFの委縮だったわけです。写真は、順に、術前・術後1週間・術後6週間(顔面においては完成時期)になります。一回の処置で完成を目指す場合、過矯正と言って、吸収される分を見込んで、多くを注入することがあります。しかし、高生着率脂肪注入では、従来の生着率の低い方法とは違って、過矯正が必要ありませんので、術後一週間すれば、腫れによる盛り上がりが軽度です。むしろ、過矯正は、盛り上がりすぎを誘発しますので、禁忌とも言えます。
また、脂肪注入の場合には、ヒアルロン酸や、その他の注入物質とは違って、自分の組織であるため、効果は長持ちしますが、老化に伴って発生する症状も、注入した脂肪に対して同じように発生するので、永久的にそのままの状態というわけにはいきません。

顔面への脂肪注入の場合、通常の脂肪注入の場合、生着率(吸収されずに残る率)は、およそ30%から50%と言われています。しかし、当院の高生着率脂肪注入の場合には、平均90%の生着率がありますので、過矯正(吸収される分を見込んで、多くを注入すること)が、不要です。

むしろ、過矯正は禁物とも言えます。それは、注入した脂肪を減量させるのは、かなり大変なことだからです。手術によって注入され、そこに定着した脂肪は、通常の脂肪組織とは異なり、線維質が豊富な構造をしています。この繊維ですが、基本的に、傷の組織と似た構造をとり、注入された脂肪組織の中に、細かく網の目のように分布しています。このような線維が豊富な脂肪組織は、皮膚の上から触れる場合には、その物理的な性質がわかりません。しかし、脂肪吸引で取り去ろうとすると、カニューレの先端に硬さを感じ、しかも吸引しにくい粘り気があります。そのため、術後の状態としては、不十分な効果になりやすく、しかも凹凸を造るリスクも増加します。また、脂肪溶解注射を使用する場合には、十分な効果を獲得するためには、やはり繰り返して行う必要があり、そのたびに腫れを伴うダウンタイムを経験することになります。
以上のように、過矯正が必要ないというよりも、むしろ、過矯正は禁物なのが、高生着率脂肪注入ですので、担当医に希望を伝えるときにも、そのことを十分に理解して、決して効果を欲張らないということが、大切です。

限定解除要件
副作用・合併症:成長因子製剤に対するアレルギー
費用:30万円